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赤裸々なパーソナルライフや感情を歌って共感を呼ぶ、SZAを解読する。(SZA - "Supermodel")

今回は、TDEから女性R&BシンガーのSZAを解読していきたいと思います。

紆余曲折を経て、レーベルがハードドライブを持っていくという形で、2017年6月に発売にたどり着いた『Ctrl』。

So who decided it was finished? “They just took my hard drive from me. That was all. I just kept fucking everything up. I just kept moving shit around. I was choosing from 150, 200 songs, so I’m just like, who knows what’s good any more?”
誰が完成だって判断したの?
「彼らは、私のハードドライブを持っていったの。それが全てよ。私は、ずっと何もかもをダメにしてた。ずっと迷走してたの。150から200くらいの曲から選んでた。だから、もうどれがいいか分からないって感じだったの。」

そんなパターンもあるのかという感じですが、アルバムの内容は素晴らしく、「すごく良い」という意見をよく聴きました。とにかく歌声が本当にいいです!

さて、インタビューなどを読むに、SZAは、どうも物事が固まってくると、気分が移ってしまう気質なのでしょうか。FNMNLが紹介しているインタビューでは、音楽活動を始めた頃について、以下のように振り返っています。

「『あなたの奴隷になるくらいなら死んだほうがマシ』とか『手首を切って注意を引く』とか、そんなことを歌ってた。自分自身になりたいと思って。学校を中退したり、お金を浪費したり、彼氏にお金と時間の無駄だと思われたりして、両親をがっかりさせてた。誰かに属してるような気がしてた。」

落ち着くべき場所に落ち着きそうになると、「誰かに属してるような気がして」、そわそわとしてしまうのかもしれません。アルバムタイトルの『Ctrl』(コントロール)も、本当は自分の人生をコントロールしたいけれど出来ないというのが由来だということです。

そんな自由奔放なSZAですが、アルバムでも自由にあけすけに歌っています。

今回は、アルバムの1曲目「Supermodel」を解読したいと思います。

イントロ

That is my greatest fear
That if, if I lost control
Or did not have control, things would just, you know
I would be… fatal

【意訳】
それは、私が一番恐れていること。
私がもし、コントロールを失ったら。
もしくは、コントロールできていなかったら。
それって致命的でしょ。

イントロでは、さっそく「コントロール」について語られています。

自分のコントロールを失うことに対する恐れ。

この曲では、自立した女性とは反対の、相対的な関係に依存しがちなSZAの生き方が、そのままに歌われています。

ヒップホップ周辺といえば「インディペンデントな女性」を褒め称えるイメージが強いですが、どうやらこの曲は一風変わっているようです。

1バース目

I'm writing this letter to let you know
I'm really leaving
And no, I'm not keeping your shit

【意訳】
この手紙を書いてるのは、今回は本当に出ていくって伝えるためよ。
あなたのものなんて、持っていかないわ。

元彼に対して、もう吹っ切れたという様子を歌っています。しかし、このあとにすぐ分かりますが、本当には吹っ切れていません。

Heard you got some new homies
Got some new hobbies
Even a new hoe too
Maybe she can come help you
Maybe she can come lick you after we're done

【意訳】
新しい友だちができたって聞いたわ。
新しい趣味もできたんでしょ。それから、新しい女も。
彼女があなたの手伝いをしにきたらいいかもね。
あなたと私が終わったあとに、彼女があなたを舐めにくればいいわ。

元彼の近況がめちゃくちゃ気になっている様子のSZAです。

What's done is done
I don't want nothing else to do with it
Let me tell you a secret
I been secretly banging your homeboy

【意訳】
終わったことは、終わったのよ。
関係のない他のことの話までしたくないの。
せっかくだから、秘密を一つ教えてあげる。
あなたの地元の友だちとも、こっそりヤってたの。

この曲は、メッセージがサビに詰まっているので、サビまでいくと凄く分かりやすいのですが、SZAは(少なくともこの曲を聞く限り)、相手の存在によって、自分を見出すタイプの人のようです。

「全然違う」という批判をたくさんいただくかもしれませんが、SZAは敢えて日本の歌手でいえば、どこか西野カナに近いのかもしれないと思います。

メンヘラ的といってしまえばそこまでですが、このラインのように、ありのままの感情、幅広い共感を呼ぶ感情を言葉に落とし込めるからこそ、支持されるのでしょう。

Why you in Vegas all up on Valentine's Day?
Why am I so easy to forget like that?
It can't be that easy for you to get like that

【意訳】
どうしてバレンタインの日に、ずっとラスベガスにいたの?
私って、そんな簡単に忘れられる存在だったんだ?
そんなに簡単なことじゃないでしょう、私に無関心になるなんて。

浮気をした理由が明かされています。

インタビューで答えていた内容によると、彼氏と一緒にラスベガスに行った男友達から、ラスベガスで乱行パーティーをしたという話を聴いたそうです。。。

Oh no she didn't
Ooh yes I did
Oh no she didn't
I'll do it again

【意訳】
彼女はそんなことしてない。
やったわよ。
彼女はそんなことしてない。
何度でもやるわ。

SZAは悪くない、同じ状況があったなら、やはり浮気に走っただろうという気持ちを歌っています。

サビ

Leave me lonely for prettier women
You know I need too much attention for shit like that
You know you wrong for shit like that

【意訳】
もっと綺麗な女と遊んで、私を孤独に放っておく。
そんなことしたら、私はもっと気を引きたくなるって分かるでしょ。
あなたは、間違った行為だって、分かるでしょ。

1バース目では具体的な内容が歌われていましたが、サビでは、SZAの考え方や内面にぐっと入っています。

I could be your supermodel if you believe
If you see it in me, see it in me, see it in me
I don't see myself

【意訳】
私は、あなたが信じてくれれば、あなたのスーパーモデルになれるのよ。
もし、あなたが私の中に見つけてくれれば。見つけてくれれば。
1人じゃ自分の中に見つけることができないの。

ここでは、自尊心を保つのが難しく、苦しんでいる様子が伝わってきます。

「自尊心を保つのが難しい」というのは、個人的には男女問わず、(もしかすると過去現在問わず)、人類の抱える悩みだと思うのですが、いかがでしょう。

Why I can't stay alone just by myself?
Wish I was comfortable just with myself
But I need you, but I need you, but I need you

【意訳】
どうして、私は1人でいられないんだろう。
1人でいても、気分が良ければって思うわ。
でも、あなたが必要なの。あなたが必要なのよ。

しょたぞブログの奥田翔さんが「SZAはパンチラインが多いけれど、抽象的ではないので、何を言いたいかがすごく分かるタイプのリリシストだ」と以前おっしゃっていたのですが、たしかに和訳してしまうと、あまり補足することがないほど、分かりやすい歌詞です(笑)。

だけど、直球ゆえのメッセージの強さ、弱い自分を見せる強さというのがあると感じます。

2バース目

Ooh, just get a load of them, they got chemistry
All they could say, we like brother and sister
Look so good together
Bet they fuckin' for real

【意訳】
ああ、もっとたくさん持ってきて。そうすれば化学反応を起こすから。
「兄妹みたい」、「めっちゃお似合い」、「あいつらデキてるだろ」。
周りは、そんなことばかり言ってたわ。

ラップジーニアスによると、これはTDEのレーベルメイトである、Isaiah Rashadとのことを歌っているのではないかとのこと。頻繁にコラボレーションしており、関係性が頻繁に噂されていたようです。

And they was right
That's why I stayed with ya
The, the dick was too good
It made me feel good
For temporary love
You was a temporary lover

【意訳】
実際に、みんなの言ってる通りだった。
だから、私はあなたと一緒にいたのよ。
あなたのは、一時的な愛にしては、良すぎたの。すごく気持ちよかったのよ。
あなたは、一時的な恋人だったのに。

SZAは関係を認めています。

なんだか、匿名で自分の人生を赤裸々に書いているようなブログやツイッターをたまに見つけて読んでしまうことがあるんですが、そういうのを覗き込んでしまったような感覚を覚える内容の曲だなと思いました。

ということで、SZAの「Supermodel」を解読しました。

いかがでしょう。

あまり補足する部分が多くなくて、ささっと終わってしまったかもしれませんが、個人的には、歌詞だけでなく、ぜひ歌声も聴いてほしいと思います。ビートのまわりに張り付くような粘りのある歌声で、本当に綺麗です。

それでは、次回の更新もお楽しみに!

リクエストもガンガンください。ぜひお待ちしております。


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