「奴隷制度は選択だった」とカニエが発言したTMZインタビューのほぼ全文翻訳。

はじめに

インタビュー本文の前に、これまでの状況を整理したいと思います。

カニエは、そもそも心の療養を経て、最近ツイッターに復帰しました。

6月にはアルバム発売が予定されています。

カニエは、ツイッターでトランプ大統領の標語である「Make America Great Again(もう一度アメリカを偉大に!)」と書かれた帽子にトランプ大統領のサインが入ったものを被った写真をアップしたことで、多くのラッパーから非難されました。

この事態を受けて、カニエは「ye vs the people」という楽曲を自身のウェブサイトで緊急公開しました。その内容は、T.I.を反トランプの立場として招き、議論の形式でお互いに順番にラップをしていくというものになっています。

その後、Daz Dellingerというラッパーがクリップス(アメリカのカラーギャング)はカニエを襲うべきだとけしかけたことがニュースとなりました。

そんな中で、TMZのインタビューにカニエが登場したのですが、その中で「奴隷制度が400年も続いたとしたら、それは選択だった」と発言したため、さらにアメリカ中で議論が噴火しています。

ただ、これは30分のインタビューのうちの一部の発言であったため、ほぼ全文(一部中略)を和訳してみました。

インタビュー

ハービー:皆さん、ノース・ウェストのお父さんの登場です!

チャールズ:(笑)

カニエ:よろしくね。

ハービー:まず、今日は来てくれて、本当にありがとう。今日は、みんなが気になっている話題から始めたいと思う。先週のMake America Great Againのキャップのことで、いったい何が起こったのかについて、誰もきちんと理解できていないと思うから。君の意見を聞いたうえで、それについて議論したいと思うんだ。どうしてあの行動を取ろうと思ったの?何を伝えようとしていたの?あのメッセージを通じて、何をしようとしていたの?

カニエ:俺の潜在意識から取った行動なんだよ。そういう気分だったってこと。みんなどのような思考を持つべきか、どのような感覚を持つべきかについて、教えられてしまって、自分のために自由に考えたり感じることが出来なくなってると思って。みんな「自由に感じろ」というけれど、実際に本当に自由な感覚で生きることは許可されていないと思う。だから、まずは「やっちゃいけない」とみんなが言うことをやってみたんだ。いろいろとダメな理由を並べて「やっちゃいけない」と言うけれど、それに俺は自分を正当化しようと思って来たわけでもないんだけれど、俺がどういう行動を取っていいかについて、みんなが制限することは出来ないんだよ。前に曲でも言ったんだけどね。俺がどう行動するべきかは、みんなが決めることではないんだ。

それから、もうひとつ。俺はアイコンや象徴といった考え方には与してないんだ。たとえばナチスのシンボルは、インドに行けばあちこちで見かける。だけど、それはナチスやその思想を表してるわけではないんだ。それはインドでは違うものを意味している。だから俺があのキャップを被るというのは、単に「俺も、自分なりの方法で、アメリカを偉大にしたい」ということでしかない。

チャールズ:ということは、キャップを被っていたのは、トランプ大統領への支持を表明したわけではないということ?

カニエ:うーん、俺はアーティストでしょ。アーティストの行動の理由ってのは、そんなのは無限にあるんだよ。アーティストは、どう行動すべきかについての他人からの提言は要らないんだ。アーティストに必要なのは、筆とキャンバスだよ。そして、俺の行動が世間の議論への道を開いただろ。あの行動の理由を最も端的に語るとしたら、俺は宇宙と接続してるんだ、以上。またこの発言を取り上げて俺を馬鹿者扱いするなよ。メディアはそういうことをしたがるから。メディアは俺を煙幕で攻撃するんだ。そして俺はそれに負けないよ。Daz Dellingerが見てるだろ。こんな見出しの記事があった。「クリップスがカニエ・ウェストを襲う」ってね。俺は「何てことだ!マルコムXの映画みたいじゃないか。あいつらは本当に俺を殺すために殺し屋を送ってくるってのかよ」ってね。だけど、本文を見たら、もしも出くわしたらボコるだろうって書いてあって、「それなら愛じゃないか。兄弟みたいに。兄弟ってのは、俺が道を踏み外したら、ボコって正しい道に戻してくれるだろ。それは愛だよ。」

ハービー:それは本気で言ってるの?Dazのビデオを見たときに、そういう風に受け取ったってこと?

カニエ:そうだよ。ケツを叩かれても死なないだろ。俺の中に「常識」を植え付けるって意味だと思うよ。だけどね、えっと、たとえば400年も奴隷時代が続いたって聞くとだよ、400年もっていうのだけ聞くと、それは選択だったんじゃないかって思えてしまう。400年もみんなでその状態を続けたの?って。俺たちは精神的に収監されてるんだ。俺は収監って言葉が好きだね。奴隷制度っていうと、黒人や人種差別の話に主題が行きすぎるから。監獄って言葉だと、みんなが一つの人種だって気がする。黒人であろうと、白人であろうと、人類っていう一つの人種なんだ。それで、えっと、、。

ハービー:ちょっとだけ話を巻き戻してもいい?ちょっと聞き流したくないところがあったから。奴隷制度が400年も続いたら、それが選択されていたってことになるの?

カニエ:そうさ、俺たちはいま精神的に奴隷でいることを選んでるんだ。EbroとFacetimeで話していて、俺の隣にCandaceがいるだろ。そうしたら、Ebroは自分なりの事実を話し始めるんだ。そして、Candaceにも事実がある。彼女は調査だってしている。それで、Candaceはジェダイのライトセイバーを取り出して、彼女の調査した事実でEbroの頭を切り落とすんだ。それで、Ebroは翌日になって俺にFacetimeをしてきて、スクープの話ばかりする。俺はこう言ったよ。「Candaceを自分の番組に呼んだら?」って。そしたら、彼は「それはないな、あいつは嫌なやつだから」って言うんだ。「Ebro、彼女の声を圧し殺すんだ。お前は真実を自由にする代わりに、人々の心に奴隷のメンタリティを押し付けるんだ。」

ハービー:先週の話題を、俺の解釈で話してみてもいい?それで、その解釈が正しいかを教えてほしい。

カニエ:オッケー。

ハービー:俺の視点からだと、みんなが思ってるほど、ドナルド・トランプの見方を支持しているというわけではなさそうに思えたんだ。それよりも、自分の正直な気持ちを見せることを恐るべきではないし、自分自身をもっと自由に表現すべきだという方に重きが置かれているように思えた。それで、俺たちの社会から失われつつある「自由な思考」を示すために
、あのキャップを被ったんじゃないかなって。今は「自由な思考」で話すと、いじめられたり、大声で批難されたりするからね。だから俺たちは黙らなければいけないって感じるほどに怯えている。そんな感じ?

カニエ:群衆なんだよ。群衆が、自分がどのように思考すべきかを強制しようとしてくるんだ。群衆が、全ての黒人は食糧配給のために民主党支持者でなければいけないかのように押し付けてくる。天安門で戦車の前に立つ子どもに尋ねたら、その子どもは理由を説明できないかもしれないよね。だけど、直接的な説明ができなかったからと言って、その瞬間を無かったことには出来ないはずだよ。

ハービー:その子どもには、その子なりの視点というのがあって、自分の信じるもののために、そこに立っていたということだよね。

カニエ:そう、俺の視点というのは「自由な思考」なんだよ。俺には、あまり強い政治的な主張というのはないんだ。政治的な主張がほしければ、John Legendに話した方がいいかもしれない。俺は政治に立ち入ったことはない。俺はトランプが好きってだけの話なんだ。多くのラッパーが、たとえばスヌープ・ドッグだって、昔はトランプが好きだっただろ。トランプはラッパーに好かれる人間の一人だったんだ。

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チャールズ:彼が大統領になる前はそうだったよね。ヒップホップの人たちは、よくライムの中にドナルド・トランプを入れようとしていた。

カニエ:そう。それから、ちょっと話はズレるけど、俺はヒップホップの中にいるけれど、俺はヒップホップだけの中にいるわけではないんだ。俺は黒人だし、黒人コミュニティの中にいるけれど、それだけでもないんだ。俺が強く感じるのは、みんなが俺を「アーティスト」や「ヒップホップ」、「黒人社会」といった枠の中に極少化しようとしてくるってことなんだ。俺はそういったものを常に代表していくつもりだけれど、俺はそれだけではなくて、もっと広い世界ってものも代表していきたい。未来以前に、現在ってものを代表したい。俺たちは2018年に生きていて、俺は現在を代表するんだ。それで、新しい平和な地球というのがどのような形で実現しうるかということを代表するんだ。その始まりにいるんだよ。北朝鮮を見ただろ。だけど、みんなはそれを批難した。みんな好き勝手に言うけれど、それは真実じゃないんだ。一部の話を極端に大きくして、その人間の全てであるかのように語っているんだ。だから、ドナルド・トランプの話をすれば、俺が知らないことで、彼がやったことがたくさんある。俺の友だちは、そういったことを俺にメールしてくる。あいつはこんなこともした、あれもした、ってね。だけど、その一部はオバマだってやったことだよ。彼はそれをひっそりとやっただけで。それにしても、この部屋もひっそりとしてるね。

一同:爆笑

カニエ:それで、ポジティブなことだってあるんだ。だけど、そういったことは表に出てこない。ポジティブな話はフェイクニュースだとされてしまう。メディアやリベラルばかりで、自分と同じような意見ばかりが聞こえてくるエコチャンバー現象が起こっていて、そこで大きな損失が発生していると思う。まるで拷問ポルノみたいだ。ネガティブなことばかりを見せ続けて、トランプだって人間だよ。ジョージ・ブッシュのときだって、みんなは「謝罪するな」って言ってきた。だけど、俺はジョージ・ブッシュがお父さんの車椅子を押しているのを見て、それから彼が奥さんを亡くしたのを見て、俺はすぐにでもジョージ・ブッシュのところに駆けつけて、あなたの気持ちを傷つけてごめんなさいと言いたくなるのが分かる?俺も傷ついていたし、テレビでその場の衝動で発言したけれど、あなたや父親や家族を見て、謝罪したいと思ったんだ。オバマは俺たちの痛みへのオピオイドだった。彼は俺たちを宥めたけれど、一部の人たちをもっと傷つけたかもしれない。

チャールズ:えっと

カニエ:ちょっと待って!今は波に乗ってるところだから。チャールズは毎日喋ってるでしょ。悪気はないよ。だけど、ちょっと今は喋らせてくれ。天才を自由にしてくれ(笑)。

一同:笑

カニエ:俺はたとえばシャーロットビルに行って、両方の陣営の人と話してみたいって思うんだ。もしオバマだったら、何て言って俺を非難するだろうか。だけど、俺は白人至上主義者なんかじゃない。俺は白人至上主義を支持しない。ちなみに、白人至上主義ってのは余分な考え方だよ。だって、そもそも白人はアメリカで最も優遇されてるのが現実でしょ。俺はそう教えられたよ。

俺が家に帰って、俺のワイフが子どもに「今日学校で習ったことをお父さんに話しなさい」って言ったら、彼女は「お母さんは白人で、お父さんは黒人だってことを習ったのよ」って言うんだ。俺はびっくりしたよ。キング牧師の誕生日だから、そのことについて俺たちは話すべきだったかもしれないけれど、白人の教師が人種について教えるっていうのはどういうことを招くだろう。白人の教師が「あなたは黒人よ」って教えたとしたら、アメリカで黒人でいることがどういうことかってのが正しく伝わるだろうか。「カニエの娘かもしれないけれど、あんたは黒人よ」っていう嫌味として捉えてしまうかもしれない。俺の娘は精神的に自由だったはずなんだ。それなのに「人種」みたいな思考の枠組みを大人が植え付けてしまう。だから、今のような問題に社会が直面してるんだよ。

もしも2歳や3歳の子どもだったとして、コーヒーテーブルの上に飛び乗ったとしよう。それで、あまり好きじゃないおばさんが「それの上に乗っちゃダメ!それはコーヒーテーブルでしょ!」って教えたとしよう。そしたら、お前は3歳児でコーヒーもテーブルもどうでも良かったはずなのに、高いところに登るための台に過ぎなかったものが、楽しみを阻害する「コーヒーテーブル」になってしまうんだ。そんな調子で30歳や40歳にもなってみろ。人生は「コーヒーテーブル」だらけだ!みんなをハッピーにしたいだけなのに。

みんな今の自分を良くする方法を考えはじめないとダメだよ。俺がスタジオで冷蔵庫から水を取り出して飲んだとしよう。俺は誰にも「君も水を飲む?」なんて尋ねないよ。そんな推察はしないんだ。俺が水を手に取るのを見ただろう。欲しかったら自分で好きに取ってくれ!自分について考えはじめないと。他の人たちがどう思うかってことばかりを考えるんじゃなくてね。俺たちは自由に考える権利があるんだ。これはマルコムXの映画じゃないぜ。誰も俺を殺しに来ないでくれよ。俺たちには愛がある。以上!

ハービー:いったんここで中断したいんだけれど、その前にひとこと。君がいま話してくれたことを元にすると、君はあのキャップを被ることで、まさに欲しかったとおりのリアクションをみんなから引き出したように思えるね。

カニエ:俺はリアクションなんて欲しくなかったよ!

ハービー:リアクションが欲しかったでしょ。いや、リアクションがあると予期していたと言った方がいいかな。

カニエ:してないよ!いや、予期してたかもしれないけれど、俺は毎日自分がやろうと感じたことをやって生きているだけなんだ。俺の魂が、俺に訴えてくることをやるんだ。

ハービー:だけど、みんなはあのような発言をすると、炎上で憔悴して、謝罪に追い込まれることになるけど、君はまったくそういうつもりはないんだよね?

カニエ:それで言えば、俺が大統領選挙のあとにトランプを初めて訪問したとき、俺は薬づけだったんだ。俺はオピオイドを服用してた。2日間オピオイド漬けになっていて、そのあと俺は病院にいた。それで、おい!ここにいるみんな!これは聞いてくれ!病院に入る前の2日間、俺はオピオイド漬けだった。

元はと言えば、形成外科で手術をしたんだ。メディアがみんな俺のことを悪く書くからだよ。俺は脂肪吸引をした。俺が太ったってみんなが書くからだ。太ったという話しでいえば、お前らはロブのことも悪く書いて、俺たちの結婚式前に、彼は飛行機で家に帰っちゃったじゃないか!俺はみんなにデブって言われたくなかったから脂肪吸引をしたんだ。それで、医者は俺にオピオイドも処方した。俺は1日に2つ摂取するようになった。それでツアー中に、カニエは薬を服用してるって、みんなが言い始めた。それで、俺にツアー中に追加のオピオイドを運んできたやつが「これは天才を殺す薬だよ」って俺に言った。それでオピオイドを摂取するのを控えたんだ。そしたら2日後に病院送りだよ!それで、病院を出るとき、俺はオピオイドを1日7つ分も処方された。2つから7つだよ!

だから、トランプが就任して、俺が会いにいったとき、俺は薬漬けで判断もおかしくなってたんだ!

俺は自分のビジョンを怖いと思い始めた。みんなが俺が狂ってるかのように言うからね。それで、俺は自分を抑えるために薬を飲んでたんだ。

俺たちはドラッグ漬けで、人の主張に従ってる。メディアに支配されて、だけど今日から変わるんだ。そこに2Pacとジョン・レノンのイラストが飾ってあるだろ。今日から変わるんだ。俺たちは自由に思考することを知らなければいけない。自由に思考して、自由に感じなければいけない。みんな自由に感じろっていうけど、みんなその方法すら分からなくなってしまった。ポジティブなことも、ネガティブなことも、思い通りに話してみろ。

さっきJコールと電話したばかりだ。彼は「クリップスがお前を殺そうとしていると聞いてどう思った?」と俺に尋ねた。俺は「それは見出しだよ」って言ったんだ。「あいつらは俺をボコるって言ってた。それは愛だよ。俺に常識を植え付けるっていうのさ。俺はダズが好きだし、俺はクリップスが好きさ。俺はみんなのことが大好きなんだ。

ハービー:だけど、君と俺は話したよね。君はみんなのことを愛さなければいけないと言うけれど、俺はそれが信じられないんだよ。だって、世の中には悪い人もいるでしょ。悪意を持って、君を傷つけようとしてる人だっているはずだよ。君はそれを見分けないといけないと思う。

(中略)

ベン:自分の好きなように考えるのは自由だけれど、現実の世界には、いまの全ての発言の現実の結果が現れるんだ。君が天から与えられた才能で音楽をつくってアーティストとして生きている間に、社会の残りの俺たちは現実世界の脅威と戦わないといけないんだよ。君がさっき言った400年の奴隷制度によって黒人が阻害された社会と向き合わないといけないんだ。それを俺たちの選択だったって言ったよね。毎日、その発言の結果に苦しむのは俺たちで、君は自分の気持ちに正直になる方法を選んだり、ナンセンスな妄想を身勝手にできるかもしれないけれど、君が自由に思考するっていうなら、俺も自由に思考するよ。俺のは、俺に与えられた現実に根ざしているんだ。俺はそれを変えるつもりだけれど、自分の敵と自分は同じチームだっていうフリをすることで変えるつもりはないよ。正直に言うと、俺はがっかりしたし、呆れているよ。君が俺にとってリアルじゃない存在になってしまったという事実に俺はめちゃくちゃ傷ついているよ。それが俺の感じることさ。全てのコーヒーテーブルの上に立てばいいし、好きなことを何でも言えばいい。だけど、石を投げつけた後に、手を隠すような真似はしないでくれ。そんなの受け入れないよ。自分でいればいいよ。俺はもう永遠に気にしない。だけど俺が生きているのは現実だってことを忘れないでくれ。

カニエ:だけど、いま彼が言ったように「現実に根ざしている」っていうけれど、これは押し付けられた現実なんだよ。それを選択するかどうかは、俺たち次第なんだ。さっき奴隷制度について言ったときと一緒で、俺たちの選択なんだよ。俺たちは自分たちの現実をつくることができる。俺たちは歴史について話してもいいだろう。だけど、そこに終始しちゃいけない。俺たちは、俺たちの現在について議論しなければいけないんだ。だって、俺たちは全てを治して、愛し合うことを始められるはずだ。俺は敵なんていないと断言する。俺たちに敵はいない。黒人は、白人が黒人を殺害したり、誰かがMAGA帽子を被ると騒ぎ立ててデモをするけれど、シカゴで700人も子どもが殺されているのに、それが黒人同士の殺し合いならオッケーだっていうんだ!

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ハービー:オッケーとは言ってないよ。

ベン:それは嘘だ!嘘だ!

カニエ:まず君は遠すぎるよ、もっと近くに来て話してくれないと、お互いに声を張り上げて、口論になってしまう。叫ばないでくれ!声を張り上げてると、また狂ってるように思われてしまう。

ハービー:カニエ、こっちに戻って来て。

カニエ:ちょっと待って。彼とハグしたい。

チャールズ:まずは話を終わらせよう。

カニエ:ベン、俺は君が好きだし、ハグしたいと思うけれど、近寄ったら殴られるんじゃないかという気がするから、これだけは伝えたい。君のことも愛しているよ。

ベン:殴らないよ!

カニエ:近寄っても殴らない?

ベン:TMZのテレビでカニエ・ウェストを殴るわけがないよ。だけど君の声には影響力があるんだから、責任感を持ってくれないといけないよ。

カニエ:ごめんね。俺の発言が君を傷つけたことについては謝るよ。だけど、俺は君のことも好きだ。俺はみんなを傷つけるつもりはないし、みんなにショックを与えるためにあの帽子を被ったわけじゃないんだ。TMZは世界を治すための病院になれる。

ベン:まずは聞いてくれ。黒人同士の殺し合いの方が多いという統計は正しい。だけど、みんなに伝わってないのは、人生を捧げて、その問題を解決しようとしている人たちがいるんだ。毎日あちこちで黒人の殺し合いを止めようとして働いている。毎日みんながこの問題に取り組んでいるんだ。黒人は、黒人同士の殺し合いは気にしないという発言は間違っているよ。それは正しくない。問題は、こうした仕事をしている人たちは、与えられるべき注目を与えられていないし、光があたっていないってことなんだ。ニュースになる話題についてこうして話すのはいいけど、ニュースにならない話題については、誰が話せばいいんだろう?長年俺にもっともインスピレーションを与えてくれたのは君なんだ。みんなに訊いてくれ。カニエ・ウェストが話題になったときに、俺がここで何回、君を擁護してきたことか。それなのに、俺たちを傷つける人たちとつるんで、事実も気にせずに、こういう仕打ちをするのはひどいよ。

カニエ:俺たちはみんなとつるまなけりゃいけないと思う。トランプが嫌いだとしても、トランプと話さなければいけないよ。俺たちは会話しないといけない。トランプだって人間だよ。そして、今はとても力がある立場だ。彼は経営者がややこしい規制に苦しむのを助ける施策をたくさんしている。アインシュタインは、一番の狂気は同じことを続けながら、違う結果を臨ことだと言っている。だから、俺たちが「お前を嫌いだ」「お前を嫌いだ」「糞食らえ」「糞食らえ」「糞食らえ」と言い続けたとしたら、どうやって嫌悪から、これまでと違う結果を得られるっていうんだ?一回だけ愛を試してみないか?どうして黒人コミュニティで影響力のあるラッパーが大統領を訪問して、どうすればこの国に変化をもたらせるかを話したらいけないっていうんだ?少しづつだけれど、世界を平和な場所に変えていくためのリソースがあるはずだ。

金正恩は、オバマは北朝鮮を攻撃するほどの狂人じゃないと見抜いていたと思う。変化するためには、ときには狂気が必要なんだよ。スティーブ・ジョブズは狂人だった。俺たちは今みんなジョブズの携帯電話を知ってる。みんなトランプは狂人だと言う。みんな俺も狂人だと言う。だけど、俺は愛を示すために来たんだ。やり遂げられるはずだ。君を今日がっかりさせたことは分かっているよ。あの帽子を被ったときに、黒人コミュニティをがっかりさせたことも分かっている。がっかりさせたことは謝るよ。だけど、さっきJコールに電話で伝えたように、もっと大きな計画なんだ。俺は宇宙に言われたことに取り組んでいるんだ。

ハービー:カニエ、一回中断するよ。

(CM)

ハービー:今日、カニエを呼んで話をしようと思ったのは、自由な思考について考えさせられたからなんだ。その点については、正直に言うと、俺は100%カニエに同意だね。この国で自由な思考というのは、死にかけていると思う。ひとつの考え方しか許されないようにいじめられるからだ。他人と同じ考え方をしないと、いじめられるし、無視されるし、殺される。個別の主張ではなくて、その自由な思考という点に共感を覚えたんだ。

だから、それについて今一度話してほしい。今日の話の根っこは何か。自由な思考?自由な愛?それは何?

カニエ:自由な愛だよ。それは魂さ。オフィスの壁に2Pacとジョン・レノンが飾ってあっただろ。俺は3人目にはなりたくないよ。だけど、自由な愛のためなら、あの壁の3人目になってもいいと思っている。

俺が、俺の母親の最期の手術を担当したJan Adams医師を愛していると言ったら、みんなはそういった許しや愛を受け入れない。たとえば、ハービー、君ですら、アダムス医師の話をしたときに、みんなを愛することは出来ないと言ったよね。

ハービー:そうだね、それが俺の考え方だ。

カニエ:神は、人間がみんなを愛することを望んでいると思う?そもそも神を信じる?

ハービー:そうだね、神は信じてるよ。みんながそういうレトリックを使うのも知っている。だけど、それがどこから来る考え方なのかは分からない。

カニエ:愛について考えて、愛を感じ始めたら、そして許しについて考え始めたら、いろんなことを乗り越えられるようになる。

ハービー:俺は先週カニエと話すことができた。これが俺にインスピレーションを与えてくれたことなんだ。君が正しいと思うのは、いまこの国は不寛容だと思う。俺たちが自分たちと考えの異なる人を殺すほどに不寛容なままだと、この国は崩壊してしまうと思う。それから、俺はこのことを考え始めて、そのことに取り憑かれたんだ。プールでも、ジムでも、歩いているときも、仕事中も、気づけば、そのことばかり考えていた。

そこまで言った上でなんだけど、外の世界には君のことを傷つけたい人がいるのは事実だよ。そこで、その壁をどうやって崩すのかということを質問したい。どうすれば壁を崩して、融和することができるんだろう。それは「あなたを愛しているよ」という方法しかないとは思えない。

カニエ:そうだね。まず俺たちには自由な思考がある。そして、俺はその意見には反対だね。俺は愛が全てを支配すると思っている。俺はそうだと本能で知っているんだ。魂や潜在意識のレベルで、愛が宇宙で一番強い力だと知っている。そして今、俺たちには愛が必要だ。北朝鮮と韓国が繋がったような瞬間が必要なんだよ。シャーロットビルやその家に行って、人種の話をすべきだ。それに人種の話に偏りすぎていると思う。階級の話も大切だ。ちょっとだけ階級の話もしたいと思う。階級闘争も今のアメリカで起こっていることだと思う。階級闘争は、トランプが勝利したひとつの理由かもしれない。オバマは上流階級っぽい振る舞いが目だったからだ。それが、中流階級や下流階級への訴求力を弱めてしまったんだ。階級による分断を防ぐためには、自分を愛することから始めないといけない。他人に対しての発言は、自分についてどう思っているかの表裏なんだよ。俺は自分のことが大好きだ。今ここでみんなが見ている姿は、俺の母親が亡くなって以来、もっともしっくりくる自分の姿なんだよ。

チャールズ:俺がすごく興味があることについても話していい?黒人が完璧であることが求められているという話なんだけど。

カニエ:それはハリウッドやメディアが黒人をどう描こうとしているかという話だね。オバマやマイケル・ジョーダンのようなスーパーヒーローが求められているという話だよ。俺はもっとダメな人間でもいいんだってことを伝えたい。それでもいろんなことを乗り越えられるってね。

ハービー:もう時間がないけれど、これだけは言っておきたいと思う。この対談をしたかった理由は、みんなこの世界に溢れるたくさんのことに反対することは出来るし、俺も君の全てに賛成するわけではないけれど、だけど俺が愛しているのは、この国で本当に失われているものについて話すということなんだ。

カニエ:愛が失われてるんだ。

ハービー:君のいう「自由な愛」もその通りだし、それ以前の「自由な思考」が大切だよ。

カニエ:君は愛を信じる?

ハービー:愛は信じているよ。

カニエ:愛が全てを支配できると信じる?

ハービー:正直に話すと、愛が助けにはなると思うけれど、全てを支配するとは思わないな。俺は、ハートと同じくらい、脳も大切だと思う。そして、脳を自由な思考に対してオープンにして、キャパシティを目一杯に使わない限りは、ハートだけで全世界を支配することはないと思う。俺の視点では、君は本当に重要な人物だと思うし、君の声はみんなに聴かれる必要があると思う。今日は時間を取ってくれてありがとう。

カニエ:こちらこそありがとう。

(以上)

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ドナルド・トランプ氏が大統領選挙に立候補して当選して以降、アメリカでは国民の分断が問題になっています。
トランプ氏は、汚い言葉を使って対立候補やその支持者を罵り、国民間の対立感情や憎しみを上手に煽ることで票数を伸ばしました。その結果として、アメリカでは、国民の間にたまっていた鬱憤が噴出しているのです。
昨年2017年には、白人至上主義団体と反対者がバージニア州のシャーロッツビルで衝突し、死人を出す騒ぎまで発生しました。
そうした環境の中で、昨年バイラルした"I'm Not Racist"(俺は人種差別主義者じゃない)という楽曲があります。
この曲をつくったのはJoyner Lucasというラッパーです。

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Joyner Lucasは、お互いの間にある亀裂や過去の傷を、リベラルな思想だけでバンドエイドのように安易に覆っても、根本的な問題の解決には繋がらないと考えているのではないでしょうか。
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