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「奴隷制度は選択だった」とカニエが発言したTMZインタビューのほぼ全文翻訳。

はじめに

インタビュー本文の前に、これまでの状況を整理したいと思います。

カニエは、そもそも心の療養を経て、最近ツイッターに復帰しました。

6月にはアルバム発売が予定されています。

カニエは、ツイッターでトランプ大統領の標語である「Make America Great Again(もう一度アメリカを偉大に!)」と書かれた帽子にトランプ大統領のサインが入ったものを被った写真をアップしたことで、多くのラッパーから非難されました。

この事態を受けて、カニエは「ye vs the people」という楽曲を自身のウェブサイトで緊急公開しました。その内容は、T.I.を反トランプの立場として招き、議論の形式でお互いに順番にラップをしていくというものになっています。

その後、Daz Dellingerというラッパーがクリップス(アメリカのカラーギャング)はカニエを襲うべきだとけしかけたことがニュースとなりました。

そんな中で、TMZのインタビューにカニエが登場したのですが、その中で「奴隷制度が400年も続いたとしたら、それは選択だった」と発言したため、さらにアメリカ中で議論が噴火しています。

ただ、これは30分のインタビューのうちの一部の発言であったため、ほぼ全文(一部中略)を和訳してみました。

インタビュー

ハービー:皆さん、ノース・ウェストのお父さんの登場です!

チャールズ:(笑)

カニエ:よろしくね。

ハービー:まず、今日は来てくれて、本当にありがとう。今日は、みんなが気になっている話題から始めたいと思う。先週のMake America Great Againのキャップのことで、いったい何が起こったのかについて、誰もきちんと理解できていないと思うから。君の意見を聞いたうえで、それについて議論したいと思うんだ。どうしてあの行動を取ろうと思ったの?何を伝えようとしていたの?あのメッセージを通じて、何をしようとしていたの?

カニエ:俺の潜在意識から取った行動なんだよ。そういう気分だったってこと。みんなどのような思考を持つべきか、どのような感覚を持つべきかについて、教えられてしまって、自分のために自由に考えたり感じることが出来なくなってると思って。みんな「自由に感じろ」というけれど、実際に本当に自由な感覚で生きることは許可されていないと思う。だから、まずは「やっちゃいけない」とみんなが言うことをやってみたんだ。いろいろとダメな理由を並べて「やっちゃいけない」と言うけれど、それに俺は自分を正当化しようと思って来たわけでもないんだけれど、俺がどういう行動を取っていいかについて、みんなが制限することは出来ないんだよ。前に曲でも言ったんだけどね。俺がどう行動するべきかは、みんなが決めることではないんだ。

それから、もうひとつ。俺はアイコンや象徴といった考え方には与してないんだ。たとえばナチスのシンボルは、インドに行けばあちこちで見かける。だけど、それはナチスやその思想を表してるわけではないんだ。それはインドでは違うものを意味している。だから俺があのキャップを被るというのは、単に「俺も、自分なりの方法で、アメリカを偉大にしたい」ということでしかない。

チャールズ:ということは、キャップを被っていたのは、トランプ大統領への支持を表明したわけではないということ?

カニエ:うーん、俺はアーティストでしょ。アーティストの行動の理由ってのは、そんなのは無限にあるんだよ。アーティストは、どう行動すべきかについての他人からの提言は要らないんだ。アーティストに必要なのは、筆とキャンバスだよ。そして、俺の行動が世間の議論への道を開いただろ。あの行動の理由を最も端的に語るとしたら、俺は宇宙と接続してるんだ、以上。またこの発言を取り上げて俺を馬鹿者扱いするなよ。メディアはそういうことをしたがるから。メディアは俺を煙幕で攻撃するんだ。そして俺はそれに負けないよ。Daz Dellingerが見てるだろ。こんな見出しの記事があった。「クリップスがカニエ・ウェストを襲う」ってね。俺は「何てことだ!マルコムXの映画みたいじゃないか。あいつらは本当に俺を殺すために殺し屋を送ってくるってのかよ」ってね。だけど、本文を見たら、もしも出くわしたらボコるだろうって書いてあって、「それなら愛じゃないか。兄弟みたいに。兄弟ってのは、俺が道を踏み外したら、ボコって正しい道に戻してくれるだろ。それは愛だよ。」

ハービー:それは本気で言ってるの?Dazのビデオを見たときに、そういう風に受け取ったってこと?

カニエ:そうだよ。ケツを叩かれても死なないだろ。俺の中に「常識」を植え付けるって意味だと思うよ。だけどね、えっと、たとえば400年も奴隷時代が続いたって聞くとだよ、400年もっていうのだけ聞くと、それは選択だったんじゃないかって思えてしまう。400年もみんなでその状態を続けたの?って。俺たちは精神的に収監されてるんだ。俺は収監って言葉が好きだね。奴隷制度っていうと、黒人や人種差別の話に主題が行きすぎるから。監獄って言葉だと、みんなが一つの人種だって気がする。黒人であろうと、白人であろうと、人類っていう一つの人種なんだ。それで、えっと、、。

ハービー:ちょっとだけ話を巻き戻してもいい?ちょっと聞き流したくないところがあったから。奴隷制度が400年も続いたら、それが選択されていたってことになるの?

カニエ:そうさ、俺たちはいま精神的に奴隷でいることを選んでるんだ。EbroとFacetimeで話していて、俺の隣にCandaceがいるだろ。そうしたら、Ebroは自分なりの事実を話し始めるんだ。そして、Candaceにも事実がある。彼女は調査だってしている。それで、Candaceはジェダイのライトセイバーを取り出して、彼女の調査した事実でEbroの頭を切り落とすんだ。それで、Ebroは翌日になって俺にFacetimeをしてきて、スクープの話ばかりする。俺はこう言ったよ。「Candaceを自分の番組に呼んだら?」って。そしたら、彼は「それはないな、あいつは嫌なやつだから」って言うんだ。「Ebro、彼女の声を圧し殺すんだ。お前は真実を自由にする代わりに、人々の心に奴隷のメンタリティを押し付けるんだ。」

ハービー:先週の話題を、俺の解釈で話してみてもいい?それで、その解釈が正しいかを教えてほしい。

カニエ:オッケー。

ハービー:俺の視点からだと、みんなが思ってるほど、ドナルド・トランプの見方を支持しているというわけではなさそうに思えたんだ。それよりも、自分の正直な気持ちを見せることを恐るべきではないし、自分自身をもっと自由に表現すべきだという方に重きが置かれているように思えた。それで、俺たちの社会から失われつつある「自由な思考」を示すために
、あのキャップを被ったんじゃないかなって。今は「自由な思考」で話すと、いじめられたり、大声で批難されたりするからね。だから俺たちは黙らなければいけないって感じるほどに怯えている。そんな感じ?

カニエ:群衆なんだよ。群衆が、自分がどのように思考すべきかを強制しようとしてくるんだ。群衆が、全ての黒人は食糧配給のために民主党支持者でなければいけないかのように押し付けてくる。天安門で戦車の前に立つ子どもに尋ねたら、その子どもは理由を説明できないかもしれないよね。だけど、直接的な説明ができなかったからと言って、その瞬間を無かったことには出来ないはずだよ。

ハービー:その子どもには、その子なりの視点というのがあって、自分の信じるもののために、そこに立っていたということだよね。

カニエ:そう、俺の視点というのは「自由な思考」なんだよ。俺には、あまり強い政治的な主張というのはないんだ。政治的な主張がほしければ、John Legendに話した方がいいかもしれない。俺は政治に立ち入ったことはない。俺はトランプが好きってだけの話なんだ。多くのラッパーが、たとえばスヌープ・ドッグだって、昔はトランプが好きだっただろ。トランプはラッパーに好かれる人間の一人だったんだ。

【あわせて読みたい】
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チャールズ:彼が大統領になる前はそうだったよね。ヒップホップの人たちは、よくライムの中にドナルド・トランプを入れようとしていた。

カニエ:そう。それから、ちょっと話はズレるけど、俺はヒップホップの中にいるけれど、俺はヒップホップだけの中にいるわけではないんだ。俺は黒人だし、黒人コミュニティの中にいるけれど、それだけでもないんだ。俺が強く感じるのは、みんなが俺を「アーティスト」や「ヒップホップ」、「黒人社会」といった枠の中に極少化しようとしてくるってことなんだ。俺はそういったものを常に代表していくつもりだけれど、俺はそれだけではなくて、もっと広い世界ってものも代表していきたい。未来以前に、現在ってものを代表したい。俺たちは2018年に生きていて、俺は現在を代表するんだ。それで、新しい平和な地球というのがどのような形で実現しうるかということを代表するんだ。その始まりにいるんだよ。北朝鮮を見ただろ。だけど、みんなはそれを批難した。みんな好き勝手に言うけれど、それは真実じゃないんだ。一部の話を極端に大きくして、その人間の全てであるかのように語っているんだ。だから、ドナルド・トランプの話をすれば、俺が知らないことで、彼がやったことがたくさんある。俺の友だちは、そういったことを俺にメールしてくる。あいつはこんなこともした、あれもした、ってね。だけど、その一部はオバマだってやったことだよ。彼はそれをひっそりとやっただけで。それにしても、この部屋もひっそりとしてるね。

一同:爆笑

カニエ:それで、ポジティブなことだってあるんだ。だけど、そういったことは表に出てこない。ポジティブな話はフェイクニュースだとされてしまう。メディアやリベラルばかりで、自分と同じような意見ばかりが聞こえてくるエコチャンバー現象が起こっていて、そこで大きな損失が発生していると思う。まるで拷問ポルノみたいだ。ネガティブなことばかりを見せ続けて、トランプだって人間だよ。ジョージ・ブッシュのときだって、みんなは「謝罪するな」って言ってきた。だけど、俺はジョージ・ブッシュがお父さんの車椅子を押しているのを見て、それから彼が奥さんを亡くしたのを見て、俺はすぐにでもジョージ・ブッシュのところに駆けつけて、あなたの気持ちを傷つけてごめんなさいと言いたくなるのが分かる?俺も傷ついていたし、テレビでその場の衝動で発言したけれど、あなたや父親や家族を見て、謝罪したいと思ったんだ。オバマは俺たちの痛みへのオピオイドだった。彼は俺たちを宥めたけれど、一部の人たちをもっと傷つけたかもしれない。

チャールズ:えっと

カニエ:ちょっと待って!今は波に乗ってるところだから。チャールズは毎日喋ってるでしょ。悪気はないよ。だけど、ちょっと今は喋らせてくれ。天才を自由にしてくれ(笑)。

一同:笑

カニエ:俺はたとえばシャーロットビルに行って、両方の陣営の人と話してみたいって思うんだ。もしオバマだったら、何て言って俺を非難するだろうか。だけど、俺は白人至上主義者なんかじゃない。俺は白人至上主義を支持しない。ちなみに、白人至上主義ってのは余分な考え方だよ。だって、そもそも白人はアメリカで最も優遇されてるのが現実でしょ。俺はそう教えられたよ。

俺が家に帰って、俺のワイフが子どもに「今日学校で習ったことをお父さんに話しなさい」って言ったら、彼女は「お母さんは白人で、お父さんは黒人だってことを習ったのよ」って言うんだ。俺はびっくりしたよ。キング牧師の誕生日だから、そのことについて俺たちは話すべきだったかもしれないけれど、白人の教師が人種について教えるっていうのはどういうことを招くだろう。白人の教師が「あなたは黒人よ」って教えたとしたら、アメリカで黒人でいることがどういうことかってのが正しく伝わるだろうか。「カニエの娘かもしれないけれど、あんたは黒人よ」っていう嫌味として捉えてしまうかもしれない。俺の娘は精神的に自由だったはずなんだ。それなのに「人種」みたいな思考の枠組みを大人が植え付けてしまう。だから、今のような問題に社会が直面してるんだよ。

もしも2歳や3歳の子どもだったとして、コーヒーテーブルの上に飛び乗ったとしよう。それで、あまり好きじゃないおばさんが「それの上に乗っちゃダメ!それはコーヒーテーブルでしょ!」って教えたとしよう。そしたら、お前は3歳児でコーヒーもテーブルもどうでも良かったはずなのに、高いところに登るための台に過ぎなかったものが、楽しみを阻害する「コーヒーテーブル」になってしまうんだ。そんな調子で30歳や40歳にもなってみろ。人生は「コーヒーテーブル」だらけだ!みんなをハッピーにしたいだけなのに。

みんな今の自分を良くする方法を考えはじめないとダメだよ。俺がスタジオで冷蔵庫から水を取り出して飲んだとしよう。俺は誰にも「君も水を飲む?」なんて尋ねないよ。そんな推察はしないんだ。俺が水を手に取るのを見ただろう。欲しかったら自分で好きに取ってくれ!自分について考えはじめないと。他の人たちがどう思うかってことばかりを考えるんじゃなくてね。俺たちは自由に考える権利があるんだ。これはマルコムXの映画じゃないぜ。誰も俺を殺しに来ないでくれよ。俺たちには愛がある。以上!

ハービー:いったんここで中断したいんだけれど、その前にひとこと。君がいま話してくれたことを元にすると、君はあのキャップを被ることで、まさに欲しかったとおりのリアクションをみんなから引き出したように思えるね。

カニエ:俺はリアクションなんて欲しくなかったよ!

ハービー:リアクションが欲しかったでしょ。いや、リアクションがあると予期していたと言った方がいいかな。

カニエ:してないよ!いや、予期してたかもしれないけれど、俺は毎日自分がやろうと感じたことをやって生きているだけなんだ。俺の魂が、俺に訴えてくることをやるんだ。

ハービー:だけど、みんなはあのような発言をすると、炎上で憔悴して、謝罪に追い込まれることになるけど、君はまったくそういうつもりはないんだよね?

カニエ:それで言えば、俺が大統領選挙のあとにトランプを初めて訪問したとき、俺は薬づけだったんだ。俺はオピオイドを服用してた。2日間オピオイド漬けになっていて、そのあと俺は病院にいた。それで、おい!ここにいるみんな!これは聞いてくれ!病院に入る前の2日間、俺はオピオイド漬けだった。

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