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予言のようなマック・ミラーの切ない心の叫びを読む。(Mac Miller - "God Speed")

Writer:@raq_reezy

Mac Miller(マック・ミラー)がオーバードーズで亡くなってから、彼の曲を聞き返していました。ご冥福をお祈りいたします。

そんな中で、本当に切なすぎる曲にぶつかったので、今回はその曲を訳して紹介したいと思います。

マック・ミラーの作品で僕が一番好きな『GO:OD AM』というアルバムに収録されている「Perfect Circle / God Speed」という途中で展開の入る8分弱ほどの曲ですが、その後半「God Speed」の部分になります。

マック・ミラーの曲については、以下の記事を無料にしておりますので、もしよければお読みください。

【無料】 アリアナ・グランデとの破局を経た、マック・ミラーの心境を読む。(Mac Miller - "Self Care")

それでは、内容を読んでいただきたいので、さっそく中身に入ります。

転換

Your call has been forwarded to an automatic voice message system
412-9…. [buttons dialed] is not available

【意訳】
あなたの電話は、留守電に転送されました。
412-9-...(ダイヤルが押される)は繋がりませんでした。

留守電(マコーミック・ミラー)

“Hey man, I wish you were here, happy holidays
Uhm, I love ya. And I hope you have a good night / weekend
/ I hope I talk to you soon, alright, godspeed”

【意訳】
やぁ、お前がここにいたらって思うよ、ハッピー・ホリデイ。
えっと、愛してるよ。
良い夜を、それから、良い週末を、それから、近々話せるといいね。
オッケー、幸運がありますように。

*マコーミック・ミラーというのは、マック・ミラーの兄弟です。

ここでは、マック・ミラーが祝日に実家に帰宅することができず、電話も取れなかったために、兄弟が残した留守電が再生されているのでしょう。

タイトルの「God Speed」というのは、「幸運がありますように」という意味の英語です。

バース

ここから、マック・ミラーの心の叫びがダダ漏れになっているかのように、滑らかなフロウが続きます。

Oh yeah, I thought I’d have it figured out by now
Shit would be simple, problems would be in the past by now
Me and the homies would be sitting on millions
Reminiscing on times when we were so broke
And living in Oakland just chillin'

【意訳】
そうさ、今頃はもう解決してると思ってたよ
物事は簡単になって、問題は過去の話になってると思ってたよ
俺と友だちは数億円の上に腰掛けて
俺たちが貧乏だった昔を思い返したりして
オークランドに住んで、くつろいでると思ってたんだ

*マック・ミラーが思い描いていた理想の未来が描かれています。

I thought I’d have it in the bag by now
I thought that we’d be kicking back by now
I know that life is a bitch, I know that life is a bitch
I thought we’d put her in a cab by now

【意訳】
今頃は、もう鞄の中に手に入れていると思ってたよ
今頃は、もうリラックスしてると思ってたよ
俺は人生はビッチだって知ってる、俺は人生がビッチだって知ってる
今頃はもう彼女(人生)をタクシーにでも乗せて帰らせてると思ってたよ

*「Life is a bitch(人生はビッチだ)」というのは、ナズという伝説的なラッパーの楽曲です。

マック・ミラーは「人生はビッチだ」という名フレーズを受けて、それを「送り返してしまうためにタクシーに乗せる」という表現に昇華しています。

But I’m stressing, I can’t relax
I swallow my pride and I’m hiding what’s making me mad
Everybody saying I need rehab
'Cause I’m speedin' with a blindfold on and won’t be long
Until they watching me crash

【意訳】
だけど、俺はストレスを感じてる、リラックスなんて出来ないんだ
俺は自分のプライドを飲み込んで、俺を狂わせるものを隠してる
みんなが俺にリハビリするべきだという
俺は目隠しをしてすっ飛ばしてるから、長く生きられないぞという
俺が激突するのを目撃する、その日までな

*多くの人がマック・ミラーのドラッグ摂取を心配してリハビリを勧めていたことが伝わってきます。

激突するという部分が、後にマック・ミラーが電柱に車で激突したことと重なり、複雑な気持ちになります。

And they don’t wanna see that
They don’t want me to OD and have to talk to my mother
Tell her they could have done more to help me
And she’d be crying saying that she’d do anything to have me back

【意訳】
あいつらはそれを見たくないんだ
あいつらは俺がオーバードーズして亡くなったときに
「もっとマックの支えになれたかもしれない」って俺の母親と話したくないんだ
彼女は俺を取り戻すためなら何だってするって言って泣くだろうよ

*ここも、まるで予言のような内容になっています。マック・ミラーもこのような亡くなり方を想像していたのかもしれないと思うと、ただ切ない歌詞が続きます。

All the nights I’m losing sleep, it was all a dream
There was a time that I believed that
But white lines be numbing them dark times
Them pills that I’m popping, I need to man up
Admit it’s a problem

【意訳】
毎晩、俺は眠りにつくことができない、全てが夢だった
少なくとも、俺がそう信じていた時期があった
(コカインで引いた)白い線は、暗い時期をごまかしてくれる
俺が摂取してる錠剤、俺はもっと独り立ちしなきゃ
今の自分の生き方が問題だって認めなきゃ

*ここではドラッグを摂取していた時期のことが書かれています。辛いことが多い中で、ドラッグで現実世界を忘れてしまいたかったのでしょう。

この後、マック・ミラーはドラッグと距離をおいて、アリアナ・グランデと交際するなど幸せと思われる時期を過ごしていました。

I need a wake up
Before one morning I don’t wake up
You make your mistakes, your mistakes never make ya
I’m too obsessed with going down as a great one
But if you wait too long, they go find someone to replace ya

【意訳】
俺は目を覚まさなきゃ
俺が目を覚ますことのない朝を迎えてしまう前に
人は過ちを生み出すけれど、過ちが人を生み出すわけじゃない
俺は偉大なアーティストとして死ぬことに取り憑かれすぎているんだ
だけど、長い間待ちすぎると、あいつらは誰か代わりの人を見つけてしまう

*マック・ミラーが、偉大なアーティストとして名前を残すということに取り憑かれて、それがプレッシャーになっていたことが伝わってきます。

「人は過ちを生み出すけれど、過ちが人を生み出すわけじゃない」というラインからは、どこからでもやり直せるという勇気をもらえます。

So I guess this is a letter, to all my brothers, Most Dope, that’s forever
I love you more than words could express
And this the part that Q start crying, if he ain’t already yet

【意訳】
だから、これはきっと手紙なのさ、俺の全ての兄弟へ
Most Dopeのみんなへ、俺たちの絆は永遠さ
俺は、言葉では言い表せないほどに、お前たちのことが大好きだぜ
Schoolboy Qがこの曲でまだ泣いてないなら、ここが泣くところだぜ

*Most Dopeは、マック・ミラーと距離の近い仲間たちのことを指します。

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スクールボーイQは、ケンドリック・ラマーなどが所属するレーベルTDEのラッパーです。ケンドリック・ラマーやアブ・ソウルらとブラック・ヒッピーというクルーも組んでいます。

そんなスクールボーイQは、マック・ミラーの友だちでした。彼は、マック・ミラーが亡くなったことで、今回、心や気持ちを整えるために自身のアルバム発売を延期しています。

I did my best to be a leader you respect
At times I became weaker, got defeated by regret
So tell my baby I love her
And if she give me the chance I’ll put a seed inside her, make her a mother

【意訳】
俺は、お前たちが尊敬できるようなリーダーであろうとベストを尽くした
ときどき俺は弱くなって、後悔に負けてしまうときがあった
俺のベイビーに愛してるよって伝えてくれ
もしも許されるのなら、彼女の中に種を植えて、彼女を母親にしてやるんだ

*ここでは、過去を悔やみつつも、生への執着や前向きさを感じ取ることができます。

Just know that there’s a place
Where all my people worry free and everybody straight
Every devil don’t got horns, and every hero ain’t got capes
Opened up my eyes, shit, I’m finally awake, Good morning
Yeah, good morning

【意訳】
ただ、知っておいてほしい、場所があるってことを
みんなが難無く暮らして、悩みがないような場所さ
すべての悪魔に角があるわけじゃないし
全てのヒーローがマントを羽織ってるわけでもない
俺は目を開いたぜ、俺はついに目覚めたんだ
おはよう、そうさ、おはよう

*悪魔は、いろんな形を取って近づいてくるということを歌っているのではないかと推測されています。たとえばドラッグという形です。

しかし、マック・ミラーは一度はその誘惑を断ち切り、朝を迎えたことが、ここにしっかりと記されています。

オーバードーズで亡くなってしまったマック・ミラーですが、この曲に表れている、前向きに生きようともがく姿には美しさを感じます。それだけに、本当に彼の死が悔やまれるし、ただ切なさを感じてしまいます。

ドラッグによって命を落とす人が少しでも減ってくれればいいなと思います。

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