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成功と幸せを祝うBasとJ.Coleを読む。(Bas - "Tribe" with J.Cole)

Writer:@raq_reezy

今回は、先日アルバム『Milkyway』をリリースしたBas(バス)の曲「Tribe」を解読していきたいと思います。

さて、Basというラッパーは、J.Coleが創設したレーベル「Dreamville(ドリームビル)」のメンバーです。

J.Coleについては、こちらの記事をお読みください
J.Coleを過小評価してないか? 最も賢く、偉大で、伝説的なラッパーの半生

Basはスーダン人の両親のもと、フランスで生まれました。8歳のときに、家族でニューヨークのクイーンズ地区に引っ越します。

インタビューによると、J.Coleとは2008年頃に知り合ったそうで、バスケットボールなどをして遊んでいたそうです。まだ、J.Coleを有名にしたミックステープ『The Come Up』や『Warm Up』もリリースされていない頃です。

Basの兄弟が、J.Coleと一緒にDreamvilleを立ち上げていたことから仲良くなり、一緒にJ.Coleが成功するのを手伝ったといいます。

そこから、J.Coleは仲間たちの助けを借りて、スターダムへと駆け上がっていきます。

あわせて読みたい
友人たちと恋人へ—スターダムにのし上がる前のJ. Coleが宛てた言葉。(J.Cole - "Hold It Down")【前編】
友人たちと恋人へ—スターダムにのし上がる前のJ. Coleが宛てた言葉。(J.Cole - "Hold It Down")【後編】

やがて、Basもラップを始めます。J.Coleのツアーを手伝い、一緒に回ったことで、観客がどのような音楽にどのように反応するかといったことを勉強できたBasは、そうした経験を音楽づくりに込めていきます。

既にジェイZの率いるRoc Nationと契約して売れていたJ.Coleは、自分の2枚目のアルバム『Born Sinner』をNo I.D.などの一流プロデューサーに聴かせる際に、ついでにBasの曲も聴かせていました。彼らの反応も良かったそうです。

Basの音楽性にも好感触を持っていたJ.Coleは、DreamvilleでミュージシャンとしてBasと契約して、売り出していきます。

今回解読する「Tribe」は、そんな二人の友人であり、レーベルメイトでもあるBasとJ.Coleの共作です。

イントロ

This one's for you
This one's for you
I think I made it

【意訳】
これは君のため
これは君のためだよ
俺は成功したと思う

イントロでは、自分が成功したと思うと歌われています。

どのように成功したのでしょうか。さっそく見ていきましょう。

サビ(Bas)

I think I made it, I think I made it
'Cause I'm always smiling, and you are the reason now
Girl, I can't explain it
It's all in the timing, I had to get low
I had to get low

【意訳】
俺は思うんだ、成功したってね、俺は成功したんだと思う
だって、俺はいつも笑ってる、君がその笑顔の理由だよ
説明なんて出来っこないんだ
これは全部タイミング、俺は塞ぎ込んでた
俺は塞ぎ込むしかなかったんだ

彼女と楽しく笑顔で生きていることが、 Basの成功だと歌われています。

I had to get back, I had to report
I had to get facts 'cause you are just that, you that
Girl, you share your truths with me
And I find them true, a muse, you in the booth with me

【意訳】
俺は取り戻さなければいけなかった、俺は伝えないといけなかった
俺は事実を伝えないといけなかったんだ
だって、君こそが僕の望む存在だったから
君はいつも本心を話してくれる
俺はそれを本当だと信じる、ミューズ、君は俺と一緒にブースにいるよ

ミューズとは、音楽や芸術の神様です。

ここでは、Basは彼女の存在をミューズに例えているのかもしれません。もしくは、音楽自体もまたBasを笑顔にする要素の一つなのでしょう。

1バース目(Bas)

Can't spoil time on nickeling and diming
I got me a girl, she don't want no diamonds
A daily reminder to holler at God
Like "Where did you find her? Good looking, my nigga"

【意訳】
小銭稼ぎのために時間を無駄には出来ないよ
俺には彼女がいて、彼女はダイヤなんて欲しがらないんだ
毎日、思い出しては、神に向かって叫ぶ
「どこで彼女を見つけたんだ?めっちゃ美人じゃないか」って感じさ

Basの幸せな日常が描かれます。

小銭を稼ぐためにあくせく働くよりも、好きな人と一緒に時間を過ごしたいのでしょう。

彼女もまた高価なダイヤを欲しがったりせず、Basが一緒にいることを楽しんでいるようです。

Everything around me I took it
Did it with only the niggas I knew
And a few niggas I thought I knew better
There go my bitches, I always do better

【意訳】
俺の身の周りのものは、全て手に入れた
全部、昔から知ってる仲間とやり遂げた
それから俺の方がよく知ってると思った数人のやつらとな
俺のビッチたちが行くぜ、俺はもっと上手くやれる

Basは、既に手の届く範囲で欲しいと思っていたものは全て手に入れたのだと歌います。

多くのラッパーが売れてもハングリーで、注目を集めるために尖った行動を演じるラッパーが多い中で、このような価値観が新鮮に感じられます。

But, you're more top echelon
My next probably be a step backwards
Niggas front when they get struck with love
Like in drama, they used to be the best actors

【意訳】
だけど、お前はもっと幹部なんだ
俺は次に、たぶん後ずさりするだろう
俺たちは恋愛に溺れるとカッコつける
まるでドラマみたいに、あいつらは最上級の俳優だったんだ

恋愛をすると、みんながタフな男を演じてカッコつけるようです。

その様子を「最上級の俳優」と例えています。

I'm done with all that tough acting
John Madden when I saw it happen, and so it happens
My niggas want life's good things, they still dreaming
And you deserve them too, I'ma do it just so it happens

【意訳】
俺はタフな人間を演じるのは止めたんだ
もしも俺がジョン・マッデンだから、何でも夢見たことを実現する
俺の仲間たちは、人生の楽しみを手に入れたくて、夢を見ている
君もそれに値するよ、だから俺はそれを実現してみせる

しかし、そうした本来の自分とは違う自分を演じることをBasは止めたといいます。

ジョン・マッデンはアメリカンフットボールの元コーチです。オークランド・レイダーズを指導して、チームの勝率は7割を超えるほどになりました。

2バース目(J.Cole)

続いて、J.Coleのバースを見ていきます。

I'm hella faded, I'm hella faded
These niggas been hating, I don't know the reason now
Sometimes I feel jaded
They don't see the real me
They only know Cole, they only know Co-ole

【意訳】
俺は本当に色褪せた、俺はマジで色褪せたんだ
こいつらはみんな俺を嫌ってた、今となっては理由も分からない
ときどき、俺は疲れ切ったようになる
あいつらは本物の俺を見ようとしない
あいつらはColeしか知らない、あいつらは昔の俺しか知らない

J.Coleは、自分を嫌う人たちや、アーティストとしての自分しか見ようとしない人たちとの関係に疲れを感じているようです。

「co-ole」については、oleというのがoldを意味する話し言葉でもあるようで、昔の俺しか知らないというふうにも解読することができそうです。

I had to get back, I had to resort to turning my back
I'm doing just that, true that
I thought He was through with me, but that wasn't true
The proof? You in the coupe with me

【意訳】
俺は取り戻さなければいけなかった
俺はそうしたものに背を向けるのに、君に頼らなければいけなかった
俺はそれだけをしている、それだけをね
彼はもう俺を見捨てたものと思っていた、だけどそうじゃなかった
その証拠を見せろって?お前は俺と一緒にクーペに乗ってるだろ

J.Coleは、売れた後、ハリウッドで生活したりと、いかにもラッパーっぽく、ラップ業界を生きていました。

しかし、三枚目のアルバムを出す頃から、作風も変わっていきます。物欲的なものにドライブされた内容から、真の幸福や家族愛といったものを歌うようになったのです。

そんな風に子ども向けのラップよりも、成熟した大人向けの音楽をつくるようになったJ.Coleですが、みんなはJ.Coleを見捨てなかったといいます。

その証拠に「一緒にクーペに乗っているだろ」とJ.Coleは歌っています。これは、みんなが車でJ.Coleの音楽を掛けているだろうということかもしれません。

God shuffled the cards, dealt me a hand with impossible odds
Put an obstacle course up
Look, and I conquered them all (conquered them all)
With minimal effort I'm fresher than sock in your drawer (fuck)
They spinning my records so heavy, I'm topping the Forbes
Stuck in a rock and a hard place though
Is it true what they say? The higher you go, the longer the fall?
Well I dropped to the floor then knocking the door was on queue
I thought that I saw it all 'til I saw you

【意訳】
神はカードをシャッフルして、ありえない確率の手札をよこした
行き先には障害物が配置された
見ろよ、俺はそれを全て征服したぜ
最低限の努力でも、俺はお前の引き出しに入ってる靴下よりも新鮮
あいつらは俺のレコードを掛けまくってる
俺はフォーブズの長者番付でトップを取る
前門の虎、後門の狼って感じさ
あいつらが言うことは真実だろうか?
高みに登るほど、下り坂は長くなるってね
まぁ俺はフロアに降りて、キューを受けてドアをノックする
俺は全てを見たと思った、君に出会うまでは

ここからは、J.Coleの高速なラップが火を吹きます。

J.Coleは母子家庭に育っており、決して恵まれて育ったわけではありません。成功の確率は決して高くなかった中を勝ち上がってきたということをボースとしています。

自分のフレッシュさをアピールするのはラッパーの常ですが、「お前の引き出しに入っている靴下よりも新鮮」というアピールも面白く感じてしまいます(笑)。

「stuck in a rock and a hard place」というのは、どちらを選んでも大変な状況を表しているようで、日本語だと「前門の虎、後門の狼」に近いことわざです。

Now I call you when the sun shines and the rain dries up
I'm a pit bull, but for you I be on chain tied up (one more time)
In the backyard with a muzzle on tail wagging like Oregon Trail
Waiting on you to come through just like you do, well...

【意訳】
今では、雨があがって、太陽が輝けば、君に電話をする
俺はピットブルさ、だけど君のためならチェーンに繫れよう
裏庭で振り回す尻尾には銃口、オレゴン・トレイルみたいに
君が来るのを待ってるんだ

高みに上り詰めて、全てを見たと思ったJ.Coleですが、最後にJ.Coleを幸せにしたのは愛する人だったようです。また、「君に出会うまでは」と歌われていますが、J.Coleは実際は高校生の頃から付き合っていた彼女と結婚しているそうです。

今でこそ大人向けの内容を歌っているJ.Coleですが、意外と張り合うのが好きな側面があります。最近でも、Lil Pumpという若いラッパーに揶揄われた際に、最新のアルバムで丸ごと一曲使って、マジレスの説教をしています(笑)。

あわせて読みたい
J.ColeがLil Pumpや若いラッパーに送った「成功し続けるためのアドバイス」を読み解く。(J.Cole - "1985 (Intro to "The Fall Off")")

このように荒々しい面も持ち合わせているJ.Coleですが、妻のためなら大人しくなるそうです。

ということで

今回は、DreamvilleのBasとJ.Coleの共作「Tribe」を解読してみました。

いかがだったでしょうか。

自分なりに補いながら書いてみましたが、ラップ・ジーニアスでもあまり注釈が入れられておらず、深いところまで読むのには苦戦しました。見逃している言葉遊びなどもあるかと思います。。

もし、ここはこんな意味では?という部分などがあれば、ぜひコメントしていただけると嬉しいです!

それでは、来月も解読をお楽しみに!

あわせて読みたい

オバマ大統領との会見を経た、J.Coleの人種差別問題に対する考えを読む。(J.Cole - "High for Hours")

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