スクリーンショット_2019-08-07_22

オリジナルな成功を追求するリッチ・ブライアンの決意を読む。(Rich Brian - "Kids")

Writer:@imamole_

今回は、リッチ・ブライアンの2作目となるアルバム『The Sailor』から、「Kids」を解読していきます。

その前に、少し彼の経歴を振り帰ってみましょう。

リッチ・ブライアンといえば、3年前にリッチ・チガ名義で発表した「Dat $tick」で一躍有名になったラッパーです。

インドネシアで生まれ育ち、youtubeを通してヒップホップに出会い、さらに英語もマスターしたという人物。現在ではアジア人/アジア系アメリカ人を主にプロモートしているレーベル、88 risingに所属しています。

そんな88 risingですが、昨今の活躍ぶりが注目されています。リッチ・ブライアンも所属していますが、中国からハイヤーブラザーズや、インドネシア人のシンガーNIKI、そして日系アメリカ人のJojiなど。彼らの活躍は1つのムーブメントにまで成長しました。

国際化が進み、海を渡って移民が流れ移っていく時代の中で、今ではヒップホップも特定の人種だけのものではなく、大きな転換期を迎え、多様化が著しく進んでいます。とくに88 risingは、USラップシーンの多様化を進めた大きな貢献者ではないでしょうか。

そんなピークを迎える中で、リッチ・ブライアンはアジア人としてのルーツをセルフボースティングしながらも、USヒップホップシーンでの苦悩を語りつつ、次世代に影響を与えようとする姿勢が強く感じられます。

ではさっそく読んでみましょう!

Rich Brian - "Kids"
Produced by Rappy, Craig Balmoris, Frank Dukes & 2 more
Album 『The Sailor』

1バース目

Ayy, uhI'm puttin' numbers on the board and blowin' more digits
I haven't started, man, these are just the before pictures
Shout out my parents, my mother gave birth to four winners

【意訳】
エイー、アー 
俺は金を稼いで数字を更新してる
まだ始まってもない、理想の現実の1歩手前
俺の両親に感謝を、4人の成功者を生んだ母に

*”put numbers on the board”は、バスケなどの試合で使われる得点のボードで、点数を稼ぐことを意味します。

*リッチブライアンには彼の他にも3人の兄弟がいます。
中でもSonia ErykaとRoy Leonardは歌手として活動をしています。

All of the players in the game, it's always cold benches
Been in the studio, I forgot how to sleep
Not tryna make an album they forget 'bout in a week


【意訳】
プレイヤーはゲームを盛り上げてばかりで、ベンチはいつも冷たい
スタジオにこもりっきり、どうやって寝るかも忘れた
1週間以内に忘れられるようなアルバムなんかを作ろうとはしてないんだ

*ラップのゲームが盛り上がっていても、ベンチにいる人たち=周囲の人はそれについて、一緒に盛り上がりきれていないと言っていると思われます。

*最近は作品のリリースペースが早く、音楽ストリーミングサービスも一般的になってから、音楽の消費が早いと言われています。そんな中、リッチブライアンは人の記憶に残るような作品を作ろうとしているようです。 

They said the fruit never gon' fall far from the tree
I used to be the kid, now the kids wanna be me
Trippin' 'bout my future like way before there was cameras

【意訳】
子は親に似ると言う
俺も昔は子供だったが、今じゃキッズが俺を目指してる
大昔から未来についてあれこれ考えてた

*インドネシアでの思春期で、youtubeを通してヒップホップにのめり込み、さらに英語もビデオを通して習得した彼。今では自分が子供たちのロールモデルだと歌っています。

Hella plans on my calendar 'fore I went all professional
Less souls to trust, man, these people makin' me cynical
More copycats and less people soundin' original

【意訳】
プロになるまで、カレンダーに山ほどのプランがあった
人をなるべく信用しない、メーン、ああいう奴らが俺を小馬鹿にする
人の真似をする奴が増えて、自分らしさがある奴が減ってくばかり

*誰かの真似をする人が増え、オリジナリティに欠ける人が多くなっているとラップしています。

Same destination, we just took different routes
Fuck bein' one the greatest, I'm tryna be the greatest one

ここから先は

6,743字

¥ 300

「洋楽ラップを10倍楽しむマガジン」を読んでいただき、ありがとうございます! フォローやSNSでのシェアなどしていただけると、励みになります!