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子供の性格って、変えられるの?(その3)

前回までのお話で、

1.人には、生まれ持った変えられない性格(気質・傾向・特性)がある。
  それは、新しいものにどんどんチャレンジをしていく新奇性探究
      損害を回避しようとする心配性的な傾向の損害回避
      ほめられればなんでもやる人情に厚い報酬依存
      1つのことを粘り強く続ける固執
  の4つの因子があり、人によって生まれながらにそれらが強い、弱いことが、遺伝的に決まっている。
そして、それらの特性はあくまで特性であり、そこに「いい」「悪い」はない。
それらの特性は、長所になることもあれば、短所になることもある。

2.それらをいい方向にもっていくための重要な要素が、
  後天的性格の3つの因子、自己志向性協調性自己超越性で、
  特に、自己志向性すなわち自尊心(自己肯定感、自己愛)が重要だ。

というお話をしました。

「子供の性格って、変えられる?(その1)」「子供の性格って、変えられる?(その2)」

今回は、これらを踏まえて、子供の性格をいい方向に導く(変えるのではない。)にはどうしたらいいのかを、私が塾での指導でかかわった子供たちの具体例を交えながらお話をしていきます。

ある小学生の男の子がいて、その子は「固執」要素が少なく、「損害回避」要素が高い、つまり悪く見れば粘り強さがなく、失敗を恐れて何事にも消極的ないわば勉強にもっとも向いていないタイプの子供でした。
しかしながら、その子のお母さんが非常にできた母親で、その子の特性をしっかりと見極めたうえで、失敗をしても決してその子を否定したり、もっとやる気を出しなさいと上から押し付けたりは、決してしませんでした。
たとえば、テストの点数が悪かった時に、笑いながら「こんなミスをしちゃって、もったいないね。これ、できたのに。」「ここできるようになったのすごいじゃない。」と常にその子いいところ探して、「先生、これができたのは、すごい進歩ですよね。」などと、普段私が、自信がない子に対して行っていることを日ごろ家庭でもやっていました。
それだけではなく、常に明るくポジティブにものごとをとらえ、子供のできないところも含めて、すべてを受け入れていました。
私が出る幕がない、私は教務的な指導に専念できました。
ちなみに、本当にそれぞれの子を(学力だけではなく)伸ばそうと思ったら、メンタルの領域まで踏み込まないと伸ばせません。

結果、その子はどうなったかというと、勉強が苦手で全くできなかった子が、普通以上、時には科目によっては高得点が取れるようになっただけではなく、生き生きと勉強に取り組めるようになりました。

もう1つ例を。小6受験生で、その子は発達障害(自閉症スペクトラム)の子で、国語や字を書くことが大の苦手でした。
あるとき、お母さんが
「(習っていない)算数の質問をしてもいいですか。」と聞いてきたので、「もちろんいいですよ、単元はなんですか。」とお聞きすると、
高校数学の問題でした。
聞くところによると、小さいころから算数に興味を持ち始め、それを伸ばしてあげたいと父親が教えていったところ、高校数学まで進んでしまったそうです。
ここでも、子供の苦手なところのみに焦点をあてるのではなく、いいところに焦点をあてて、それを伸ばしてあげようとした結果だと思います。
ちなみに数学を教えたところ、呑み込みが早く素晴らしい出来でしたが、字と同じように数式も読解が困難なくらいのものでしたが、読めないぞと笑いながら、またほめてあげながら教えてあげたら、国語の勉強時とは打って変わって、楽しんで解いていました。

発達障害については、また別の機会にお話をしたいと思いますが、彼らは普通に勉強が苦手な子供よりはるかに、様々な不得手をもっているため、対応を誤ると身体的、精神的な2次障害を引き起こす恐れがあり、彼ら(彼女ら)の性格や特性をしっかりと見極める必要があります。

いずれにしても、もって生まれた特性・性格を無理やり変えようとするのではなく、その子の性格をいかにマイナス方向にださないように、むしろそれらをプラスの方向に出せるようにサポートし、さらにそれらを統合、昇華できるように後天的性格を形成できるよう導いていくことが、周りの大人たちの役割だと思います。

私は、それらがうまくできていない子供たちや、どうしたらよき方向に成長させられるか悩んでいるお母様、お父様のお手伝いができるように今後もお付き合いをさせていただきたいと思います。


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