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秘密 27(終)

私は始めから知っていた、
彼が3億目当てだと。

彼が千葉の老人ホームで建設の仕事をしていたと聞いた時から、
何か違和感を感じていた。
私の借りていたトランクルームの近くで働いていたなんて偶然?
と思ったけど偶然の訳がない、
私がお風呂に入っていると、
部屋で何かを探していたこと、
私の家で一緒に住みたいと言ったこと、
それで気が付いた。

トランクルームの鍵を探しているのだと。

だから私は鍵を会社の自分の机の奥に隠した。

私は彼と出会う前に、
このまま結婚も出来なくて、
あの会社で一生働くのかと考えて、
落胆していた。

だからすべてを知っていたけど私は彼と暮らし始めた。

嘘でもいいから誰かの優しさに浸りたかった。

石川あみさんがトランクルームから
お金を出して、トランクルームの鍵を返しに来た時に、
トランクルームのお金のことは聞いていた、
私はすぐに確認しに行くと大きなカバンに5千万入っていた。

私はその中の3千万を抜いて、
残りの2千万を小さな袋に詰めて、
自分で書いた手紙を置いて、
トランクルームを閉めた。

そして後日、
彼を誘ってトランクルームの解約に行った。

もちろん手紙は筆跡を変えて書いたものだ。

彼はまったく気が付いていなかった。

私のような大人しい人間が人を騙す訳が無いと
彼は思い込んでいる。

彼が真実を話して来るかと思ったけど、
彼は何も話してくれなかった。

それだけ今の生活に満足していて、
この暮らしを壊したくないから、
話さないのだ気が付いていた。

もし彼が本当のことを話しても、
私は彼を責めるつもりは無かった。

3億というお金は人を惑わせてしまう力があるから仕方がない。

彼は優しい、
それは私を騙したという罪悪感から来る優しさかもしれない。

私はこのまま真実を知らない振りをして、
彼の優しさに甘えて暮らして行く。

人は私のことを悪女と言うかもしれない、
でも誰にでも秘密の1つや2つはあるでしょ?

誰も知らない秘密なんてあるのかな?
秘密にしているつもりでもみんなが知っていて、
知らないのは自分だけなんてことがあるかもしれません。


おわり



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