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鳥かごの鍵 27

私は驚いて声が出ない。

月はどこに行ったの?
彼はどうやって入って来たの?

「やっぱり俺を裏切ってたんだな!」

「ち、ちがうのよ!」

彼の手を見ると包丁が握られている、
私は怖くなり外に逃げだした。

私は裸足でアパートの階段を駆け下りた。

外は真っ暗でいつも見る景色と違っていた、
私は全力で走った、でも全然前に進めない。

体が重く思うように動かない。

私はがんばって前に進もうとしていた。
辺りを見ると住宅が無くなり草原になっていた、
ここがどこかわからない、でも逃げないと殺される。

私は重い手足を動かし前に前に進んだ。
前を見ると電柱のような柱がある、
見上げると、それはカラフルで大きな風車だった、
どこかで見たことがある、
あれは隣の大きな家の庭にあったものと一緒!

「あかり、どこに行った?あかり!」と彼の声が聞こえる。

「あかり?あかり?・・・三上あかり」

そうだ私の名前は三上あかり!
なんで今まで忘れていたのか?
頭が混乱している。

ふっと前を見ると何か光るものがある、
私は光る物の方に歩いた。

「あかり、逃げても無駄だよ。」
彼が近づいて来た、もう逃げられない。

私はすぐ横の、
草が高く生い茂った草むらに隠れて、
口を押えて息を殺した。

彼が私の横を通り過ぎた。

私は草むらからそっと出て、
彼と反対の方向に逃げようとした、
しかし彼は私の前に立っていた。

私は悲鳴を上げて逃げようとした、
しかし彼に腕をつかまれ、
捕まってしまった。

「なんで逃げるんだよ!」

「あなたが包丁を持って追いかけて来るからでしょ?」

「何言ってるんだ!」

彼の手を見ると包丁は持っていない。

「包丁を持っているのはおまえだろ。」

私は自分の手を見ると包丁を握っていた、

「あかり、家に帰ろう俺たちの家に、
あかりと俺はずっと一緒だろ。あかり、あかり…」

彼は私の名前を何度も読んで、私に近づいて来た。

私は怖くなった、
彼がいなくなればいいと思った。
そして私は彼のことを刺した。

何度も何度も刺した。

でも彼は倒れない、

さらに何度も何度も何度も彼を刺した。

でも刺してる感覚がない。

すると、遠くで、「ママ、ママ起きて」と聞こえて来る。

私は声のする方を見ると、何かが光っている、
私は眩しくて目を閉じる。

そして気が付くと私はベッドの上だった。

窓から日差しが差し込んでいる。

隣を見ると男の子が立っている。

私は長い長い夢を見ていた。

つづく


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