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あなたの旅に、神のご加護を

JFK空港へと向かう地下鉄のプラットフォームで、まだ背中に馴染まないバックパックをよいしょと背負い直す。

『はあ…』

一生懸命話すのだがちっとも伝わらず、苦笑いしている相手の顔が蘇る。
その居心地の悪さに、わたしの心はすっかりと閉じてしまった。

『これからやっていけるんかな…』

現地の人と少しでも心が触れ合うようなコミュニケーションがしたい、そう思っていたのに。
そんな後悔もギュウギュウに詰めたバックパックが、肩に喰い込む。


車両に乗り込むと、ヘッドフォンをした黒人男性、サリーを着た褐色の女性、ぴしっとビジネスライクな服装の白人女性。

人種のるつぼと言われるこの街を、わたしは勝手に懐が深いと思い込んでいたのだろうか…。


「はっ…ハクション!!!」

「Bless you」


躊躇いもなくかけられた言葉に、また心が開いていくのを感じる。


日本を出てから1週間。
彼女のその一言で、ようやく長い旅が幕をあけた気がした。



ここまで読んでくれたあなたは神なのかな。