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ヨーグルトと、共に歩む日々のこと

あれはちょうど1年前くらいやったやろうか。
まころ(息子・3歳)がうんちをした後、おしりをモーしてもらい拭いてやっていると、見覚えのないぷっくりしたものが穴の横から顔をのぞかせている。

え…?あ…?コレは…?
えっと…?こんなヤツおったっけ…?

動揺したわたしは、彼に即座にくまちゃんパンツを履かせ、軽く見なかったことにした。
その夜、お風呂場で身体を洗うときに恐る恐る確認すると、ヤツはすでに姿をくらませていた。
…これはわたしの胸の中にだけしまっておこう。そう思っていた。

しかし、見間違いであって欲しいというわたしの願いは、あっさりと打ち破られる。
夫からも、近くに住む実家の母からも
「まころ(ちゃん)のおしり、なんかぷっくりしたのがあるね。」
という旨の報告を、立て続けに受けたのだ。

やっぱり、ソコにおるんやな…?
いやでも、まさか…、まさかな。
2歳児にアレは無縁やろう……?
なにせ痛がってもないし、なんてことなさそうやし、平常運転のときは顔を見せへんのやし……。
彼の中にあるその存在を目の当たりにしながらも、頭の中に自然と流れる薬のCMのフレーズをそっと打ち消したあの日。

 * * * * * * *

ヤツとの関係性はなあなあのまま、まころは3歳になった。
トイレに行くのも、すいぶんと板についてきていた。

「うんち!」
と勢いよくトイレに向かい、しばらく座ってみるものの
「でないのー!!」
と泣き叫ぶまころ。
どうやら出そうで出ないらしい。

よしよしうんちが出たぞ、とおしりを拭いてやると
「いたいぃー!!」
と怒られる。

そして逆戻りするかのように、パンツにうんちが付いていることも出てきはじめた。

そんなことが続いていたある日。

ふと気がつくと、くまちゃんパンツに赤いシミがあるではないか。
これは…ち…血では……。

これだけ状況証拠が揃ってしまっては、ヤツを被疑者とするしかなくなる。
万が一、クロだった場合のまころの将来を思うと心が痛むが、仕方あるまい…。
そして当時まころのおしり担当だった夫が、満を持して肛門科へと連行してくれた。

診察結果のLINEが届くのを、今か今かと待った。
しかし一向に結果が来ない。
そうこうしてるうちに、ふたりが帰宅した。

「ど…どうやった?」
「うん、痔じゃないって(ないって)(ないって)(ないって) (※わたしのこころの中のリフレイン)」
心の中に“勝訴!!”の紙がババンと出され、息子の経歴に烙印を押さずに済んだことに、ホッと胸を撫でおろす。

…あ、でも待って。勝訴したはいいけど、うんちが出にくくて痛いのにはかわりないもんな…。
いったいどうしたら……?

夫曰く、医師に勧められたのはオリゴ糖だったそうだ。
オリゴ糖は腸内環境を整えてくれ、便がやわらかくなる効果もあるそう。

オリゴ糖だけをぺろりと舐めさせてもいい、とのことだったが、味覚形成の時期やし甘いもの単体の味を覚えてしまって、ほかのものを食べなくなったらどうしよう…

そんな不安がよぎり頭を悩ませていた時、ふと夫の実家での光景を思い出す。
そうや、ヨーグルト!!!それや!!!
前に訪問したとき、義父と義母が「お腹にいいから」とオリゴ糖入りヨーグルトを食していたのを思い出したのだ。
オリゴ糖(お腹にいい)×ヨーグルト(お腹にいい)=最強(おしりまわりのトラブルを撲滅)!!!
それ以来、オリゴ糖ヨーグルトは我が家の定番となり、ときどき食卓に登場する。

おかげで今も息子はそのいぼ痔…ちがったデキモノと仲良くやっていて、新たに導入されたトーマスパンツには赤いシミは残らない。

 * * * * * * *

思えば子どもができてから、ヨーグルトには何度となくお世話になっている。

妊娠中、どこからか「母親の腸内環境がよいと、生まれた子がアレルギー体質になりにくい」という情報を仕入れてきた夫が、せっせとヨーグルトを食卓に出してくれていた。
そのおかげか、妊娠中のマイナートラブルである便秘にはさほど悩まずに済んだ。
(残念ながら、息子はアレルギーっぽい体質だけど)

息子の1歳の誕生日ケーキは、食パンにヨーグルト塗ったものにした。これがなかなかに見栄えがよくて、母は大満足の一品となった。

お腹が空いて仕方ない授乳中、ヨーグルトは健康的やから!と大手を振って食べられる数少ないおやつのひとつだった。

一時期息子がヨーグルトにはまっていて「ご飯全部ピカピカに食べたら、デザートにヨーグルト食べよう!」というと、残しがちな白ご飯も、ちょっと苦手な青菜もぺろりと完食してくれた

食べ物の食感に敏感で、パサパサしたお肉を受け付けない娘の食がすすまない日には、タンパク質補給にきなこヨーグルトがたびたび登場する

 * * * * * * *

知人からブルーベリーをもらったので、今日はそれをヨーグルトに入れ、例のごとくオリゴ糖をかけて息子と娘に出した。
そしてふたりが食べる姿をぼんやりと眺めていたのだけれど。

娘はだいぶん器用にスプーンを使うようにはなってきたものの、まだまだブルーベリーが落っこちたり、ヨーグルトがボタリと落ちたりする。
そしてその落ちたヨーグルトをぐしゃぐしゃとテーブルに塗り付けた後、そのお手手でくるくるの髪の毛にヨーグルトを絡ませ、口のまわりにもばっちりヨーグルト髭をつくっている。

ああ…息子にもこんな時期があったっけ。

そう思いながら息子を見ると、箸と同じ向きでスプーンを握れるようになり、ブルーベリーを落とすことも、ヨーグルトをこぼすこともなく、スムーズに口に運んでいく。

…成長してるんやなあ。

最近なにかと「まころ、もうおとなやから」と言っているのを、へへへ…いっちょ前になあ、って微笑ましく聞いてたけど、本当に1歩、また1歩と大人への階段を昇っているんやということを実感する。

テーブルにヨーグルトを塗り付ける彼は、もうどこにもいない。
あんなに大変やったのに、それをやっぱり寂しく思ってしまう自分がいる。


今日も息子と娘は、やんちゃくれで意志が強くてギャン泣きで、困るし大変やし疲れた。
それでも今日も愛おしい。
ヨーグルトを食べる姿を見ながら、そう思えたんや。

ここまで読んでくれたあなたは神なのかな。