マガジンのカバー画像

『本は死なない』を読む

19
ジェイソン・マーコスキーの『本は死なない』の感想を綴っていくマガジン。
運営しているクリエイター

記事一覧

読書データによる執筆のフィードバック #burningthepage

読書データによる執筆のフィードバック #burningthepage

『本は死なない』の第18章「電子書籍リーダーの未来」より。

アップルやアマゾンはこうした情報を収集し、多くのユーザーが途中で読むのを止めている電子書籍はないか、あるいは特定の本の中で読まずに飛ばされることが多い章はないかなど、さまざまなユーザーの読書傾向を割り出している

もちろん、このようなデータはこれまでどこの出版社も持っていませんでした。

出版社が把握できていたのは、書店のPOSデータか

もっとみる
対話的な本の可能性

対話的な本の可能性

『本は死なない』の第16章「本と教育」より。

たしかになにかを学ぶというのは、事実を記憶することだけではない。本を読む場合でも、口承にみられる対話的な思考は非常に重要だ。本の内容を記憶するだけでなく、作者の意図を汲み取り、そこから考えを深めなければならない。

この章では、ソクラテスとプラトンが対比的に用いられています。

ソクラテスは「話し言葉」を重視しました。「書き言葉」による学びは、単に知

もっとみる

電子書籍のインパクト #burningthepage

『本は死なない』の第14章「グローバル化」より。

そう考えると電子書籍の登場は、本の歴史の中で、印刷技術の発明に次いで現れた2回目の波と言える。この2回目の波は、グーテンベルクが巻き起こした1回目の波よりも規模が大きい。

これまでいろいろなところで、私も同じことを書いてきました。「電子書籍革命」は間違いなくグーテンベルク以降最大の変化の波になります。グーテンベルク以上の功績と言えるかどうかはわ

もっとみる
出版社というメタ情報と巨大な「一冊の本」 #burningthepage

出版社というメタ情報と巨大な「一冊の本」 #burningthepage

『本は死なない』の第十三章「グーグルが「読書用フェイスブック」になる日」より

書店に行って「今日はあの出版社の作品を読みたい」と思って本を探す読者などいない。

本書を読んでいて、違和感を覚えたのが上の表現です。

もしかしたら、日本とアメリカの状況は違うのかもしれません。少なくとも私は「出版社の作品」で本を探すことがあります。

たとえば「岩波新書」。

やっぱり「岩波新書」を読みたいときの気

もっとみる
書庫のクラウド移行について #burningthepage

書庫のクラウド移行について #burningthepage

『本は死なない』第12章「わが蔵書はクラウドへ」より。

クラウドの普及により、いずれ各家庭にある大きな本棚が空になり、個人の書庫がウェブ上に移動することになるだろう。

Kindleで本を買いそろえている人は増えつつあるので、こうした「書棚移行」はすでに行われていると考えてよいでしょう。そして、その利便性を体感されていることと思います。

また、紙の本を「自炊」して、それをクラウドサービスにアッ

もっとみる
面白い本との出会い #burningthepage

面白い本との出会い #burningthepage

『本は死なない』第11章ブックマーク「書店」より。

真に面白い本は、往々にして誰の目にも止まらないような場所に隠れているものだからだ。

著者は、町から個人経営の書店が姿を消しつつあることを懸念して上の文章を書いています。

個人経営の書店で、店主からすすめられた本。あるいはそのお店の常連客との会話で名前があがった本。決してベストセラーランキングには名前が載らないような、そんな本が「真に面白い本

もっとみる
出版の分散と集約 #burningthepage

出版の分散と集約 #burningthepage

『本は死なない』の第11章「出版業界の革命的変化」より。

印刷技術が開発されてから間のない頃は、グーテンベルクのような人物が3つの役割をすべてこなしていた。

この3つの役割とは「出版社・書店・作家」のことです。

印刷や装丁を手がけるだけでなく、事前予約を行ったり印刷後にお得意客に配本したりといった販売業務を行っていたわけです。さらに、他の作品を再翻訳したりするなど著述業に近いことも行われてい

もっとみる
読者の利益を考える #burningthepage

読者の利益を考える #burningthepage

『本は死なない』の第11章「出版業界の革命的変化」より

電子書籍革命で最も重要な役割を果たすのは、書店でもなければ作家でもない。ましてや出版社でもない。読者である。

まるでドラッカーが書いたような文章です。でも、これはおそらくその通りでしょう。

すでに本を読んでいる人、そしてこれから本を読む人が鍵を握ることになってくるはずです。

本書では、米国人の多くが一ヶ月に一冊も本を買っていない、なん

もっとみる
電子書籍の普及と、それから #burningthepage

電子書籍の普及と、それから #burningthepage

『本は死なない』の第十章「電子書籍の普及学」より。

電子書籍は、あとどれくらいで初期多数派の消費者層全体に普及するのだろうか。インターネットが普及に要した期間が10年だったことを考慮すると、電子書籍も2016年頃には全体の半数に普及するという見方が無難だろう。

この手の予測は、だいたい外れます。でも、遅かれ早かれ普及することは間違いないでしょう。

最近の出版業界の動向を見ていると、2014年

もっとみる
つながりを生む本 それが変えるもの #burningthepage

つながりを生む本 それが変えるもの #burningthepage

『本は死なない』第八章「つながりを深める本」より。

作者と読者が直接対話できる時代がやってきている。読書はこれまで個人が一人で楽しむ文化であり、読書クラブのような活動も大きな流れを生むには至っていなかった。しかし現代では、読者や作者が国境を越えて本に関する議論を交わすことができる。

このことがもたらす変化は、非常に大きいと言えるでしょう。その変化は、本の書き方・読み方の両方に影響を及ぼします。

もっとみる
贈り物としての本 #burningthepage

贈り物としての本 #burningthepage

『本は死なない』の第七章『読書文化の存在意義』より。

作者はプレゼントを丁寧に包装して読者のもとに届ける。読者はその包装を解いて中に入っていたプレゼントに驚く。

情報論・記号論では、送信者がメッセージの記号化し、受信者がそれを解読する、という一連の流れが提示されます。上の文章は、その図式でもあります。

でも、本当に大切なのは、それが「プレゼント」である、ということです。

私は『ハイブリッド

もっとみる
私たちはなぜ本を読むのだろうか? #burningthepage

私たちはなぜ本を読むのだろうか? #burningthepage

『本は死なない』の第七章『読書文化の存在意義』より。

私たちはなぜ本を読むのだろうか?

なぜ私たちは「本」を作り、そしてそれらを読むのでしょうか。

まず情報伝達手段としてのバランスの良さが、本書では主張されています。製造コストと耐久性のバランスが抜群、というわけです。

物的メディアとしてみればその通りですね。製造コストが低いのは、もちろん大量生産するからであり、逆にそれができないと書店に並

もっとみる
情報摂取と読書 #burningthepage

情報摂取と読書 #burningthepage

『本は死なない』の第六章「神経生物学からみた読書」より。

食事が人を作るように、読書も人を作る。それは明白なのだから、電子書籍の登場によって読書の形態が変われば、私たちの脳の配線や仕組みも変わっていく。

この辺りの話は『プルーストとイカ』や『ネット・バカ』に詳しいので、興味ある方はご一読ください。

私は『ハイブリッド読書術』の中で、「情報摂取」という言葉を使い「栄養摂取」と対比づけました。ふ

もっとみる
本の地図で旅する #burningthepage

本の地図で旅する #burningthepage

『本は死なない』第五章のブックマーク<「SNS」で本を探す>より。

この4sqを書店に応用するというのはどうだろう。

4sqとは、Foursquareのこと。GPS機能を使ったチェックインサービスですが、今はアプリが二つに分離してしまってややこしいことになっています。

が、それはそれとして、この提案は面白いですね。

たとえば行きつけの本屋さんの特定のコーナーでチェックインし、その一角の書店

もっとみる