読書データによる執筆のフィードバック #burningthepage
『本は死なない』の第18章「電子書籍リーダーの未来」より。
アップルやアマゾンはこうした情報を収集し、多くのユーザーが途中で読むのを止めている電子書籍はないか、あるいは特定の本の中で読まずに飛ばされることが多い章はないかなど、さまざまなユーザーの読書傾向を割り出している
もちろん、このようなデータはこれまでどこの出版社も持っていませんでした。
出版社が把握できていたのは、書店のPOSデータから「何日に何冊売れたか」ぐらいだったでしょう。
流通を考えるなら、そのデータだけでもさほど問題ありません。でも、どんなコンテンツを作っていくのかを考える際には、やや力不足です。
コンビニでも、昔はPOSデータが基本でしたが、最近ではポイントカードによる販売データに比重が移っています。どのような属性のお客さんが、どんなものを買うのか。そういうことをチェックしたいわけです。それによって、セールの打ち方や商品開発をより精度の高いものにしていく。そんな狙いがあります。
同じように、電子書籍上の読書データは、コンテンツ・クリエーターにとって新しいフィードバックの材料です。
私も、自分の本の「ポピュラーハイライト」をチェックしたりしていますが、こんなことができるのは電子書籍ならではでしょう。
オフ会などに行くと、「サインしてください」と拙著を手渡されることがあります。そこに大量の付箋が貼っていたりすると、これはもう嬉しいわけです。
でも、「すいません、どこに付箋を貼っているかを確認させていただけますか?」なんて聞くわけにはいきません。嬉しいとは思うものの、データとしては活用できないわけです。
特に「買ったけど、読まれていない本」がわかるのは、相当に面白いものです。
一つの方向としては、「買ったけど、読まれていない本」をなるべく減らすように活用する、があるでしょう。
でも、まるっきり悪人顔をして、「買ったけど、読まれていない本」を増やす方向にデータを使うこともできます。なにせ、そういう本は、読書時間を気にすることなく増えていきます。
まあ、そんなことをしていたら、トータルでの読者数が減っていくので、だれもやらないとは思いますが。
何にせよ、データはさまざまな方向に活用可能です。
読者が止まりがちな章であれば、説明不足を疑ったり、逆に短く切り落としたり変更することもできるでしょう。飛ばされてしまう章ならば、章の配置を換えたり、まるっと書き方を変えることもできます。
そういうやり方は、近くにレビュアーを抱えている著者しかできませんでした。一般的には著者と、歴戦の編集者がやりとり本を作り、後は投げっぱなしジャーマンだったのです。
だから、わりと運任せな部分がありました。あるいは、本の書き方はよくないのに、マーケティングで売れてしまい、著者が間違ったフィードバックを受け取ってしまったようなこともあったでしょう。
データを活用した執筆が、良い方向に向かうのかどうかはわかりません。もしかしたら、ポピュリズム的な何かに流れてしまう可能性もあります。でも、フィードバックの素材が増えるのは、基本的には良いことだと思います。
とりあえず、新しい本の書き方に無視できない要素になってくるかと感じます。
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