見出し画像

MP連載第二十二回:認知的エコなリストの作り方

前々回では、タスクリストは単に作ればよいわけではなく、作り方やメンテナンスが重要だ、と書きました。

一見すると、リストは要素を一列に並べただけのシンプルなツールです。難しいものは何もないように思えます。

しかし、シンプルであるがゆえに、ちょっとしたことで機能不全に陥ります。カルボナーラと同じですね。わずかな火加減で、全体が台無しになってしまう。シンプルであるがゆえに、ごまかしが利かない。そういう性質があります。

というわけで、今回はタスクリスト作りにおけるポイントを確認しておきましょう。MP環境に配慮した、言い換えれば、認知的エコなリストの作り方です。

ポイント1:リストを混ぜない

あなたがものすごくBoseのスピーカーを欲しがっているとしても、その日の夕食の買い出しに使うリストに「Boseのスピーカー」と書くことはありませんよね。場違いならぬ、リスト違いです。

上記の例だと、リスト違いには簡単に気がつけますが、なぜかタスクリストだとそれが見えなくなってしまいます。「その日やること」「今週中にやっておいた方がいいこと」「できればやっておいた方がいいこと」「これが俺の夢」みたいなものが、ごちゃ混ぜになります。

そのようなコンテキストがごちゃごちゃになっているリストを、私たちが認識する際には、認知くんが頑張って選り分けなければいけません。MPが消費されるわけです。

タスクを整理している段階ならともかく、「さて、タスクを実行するぞ」という段になって、このようなMPの消費はできれば避けたいところです。だからこそ、GTDの手法では「処理」と「実行」が分けられているのです。

どんな風にリストを作るのも自由ですが、そのリストが持つコンテキストは(自分が認識するコンテキストは)混ぜない方が良いでしょう。

ポイント2:リストを整える

上記の話に関係することですが、表記・形式がバラバラの情報は、認識するのにパワーを使います。

ウィキペディアを5ページ読むのと、まったく異なる5つのブログの記事を読む場合を比べてみましょう。前者はどこに何が、どんな風に書いてあるのかが共通しています。後者はてんでばらばらです。

前者のであれば、認知くんは最初の1ページを把握すれば、以降のページでは落ち着いていられます。後者ではページ移動のたびに頑張らなければいけません。MPの消費です。

ですので、表記や形式はリストの中で統一しておくのが吉です。また、タスクにメタ情報を与えるための絵文字などは、認知くんの働きを補助してくれますが、絵文字の種類が30種類や50種類もあると、今度はその把握に認知くんが疲れることになります。なにごともほどほどが大切です。

また、この点を逆手に取れば、システム2を発動させたい部分に関しては、あえて表記を変える(認知をズラす)手法も使えるかもしれません。もちろんそれが効果を発揮するのは、その他が揃っている場合だけであることは言うまでもありません。

ポイント3:行動は具体的に書く

「やるべきこと」をタスクリストに書き込むのはよいとして、それがあまりにも漠然としていると、認知くんは「えっと、実際にやることってなんだっけ?」と思いを巡らせることになります。当然、そこでもMPが消費されます。

たとえば、「2018年確定申告」などという「タスク」は最悪の(あるいは厄災の)部類に入ります。

・具体的に何をすればいいのかわからない
・しかもなんだかととてつもなく面倒な気がする

これで実行に移せたとしたら、それはもう鉄人でしょう。タスクの鉄人。Allez Tâche! やわな私たちでは(少なくとも私では)到底無理です。

よって、一般的なタスク管理では、こうしたものを「プロジェクト」と呼んで、タスクと区別します。そして、タスクの実行とは別のタイミングで認知くんに働いてもらい、「ほら〜、この行動は怖くないんだよ〜」と子どもを騙すような形で、表現を変えるのです。

また、こうした「プロジェクト」はたいてい数日以上かかるので、以前何をしたのか、何をしようとしていたのかを思い出すことも合わせて必要となります。これがいわゆる「プロジェクトノート」を作る必要性に関係してくるのですが、ここではその話は割愛しておきましょう。

実行は大切だが

MP戦略の前提は、MPには上限があり、しかも私たちはそれをうまく使うことができない、というものです。うまく使えないなりに、なんとかやっていくしかない。そういう消極的積極性がスタート地点です。

よって、上記のようなポイントを押さえても、うまくいかないことはやっぱりあります。タスクリストに書いたタスクが、どうしても着手できないことはあるのです。

だからといって、上記のようなポイントがまったく役立たずというわけではありません。実行時の認知くんには、できるだけ不要な負荷をかけないようにし、実のあるタスクに集中してもらう。そうして、わずかでも実行を生み出していく。でもって、どうしてもできないものは、しゃーないといったん撤退する。

なにせ私たちはMPがうまく使えないのです。リストを使ったところで、それが劇的に改善することはありえません。リストを使えば、あたかもMPをうまく扱えるようになると感じているとしたら、それは幻想です。人間を洗脳するような力はリストにはありません。改善するにしても、ごくわずかなものでしょう。

別にそれで構わないのです。私たちはタスクを実行するために生まれてきたわけでも、生きているわけでもないのですから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?