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Scrapboxでのタスク・プロジェクト管理/ノートで方針を整理する/静的サイト作り

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2019/05/13 第488号 


はじめに

はじめましての方、はじめまして。 毎度おなじみの方、ありがとうございます。

どういうことでしょうか。ようやく花粉症の煩わしさから解放されたと思ったら、もう夏です。夏の気温です。無頓着にヒートテックを着て出かけたら、ひどい目にあいました(自業自得)。

ともあれ、気温があまりに低いと体調が悪くなりがちなので、それに比べれば夏場の方がはるかにマシです。ここらで一気に仕事のギアをあげて……みたいなことを考えるとだいたい転けるので、平常運転で続けていきましょう。

〜〜〜書き手のレベルアップタイミング〜〜〜

以下の記事を読みました。

 >>
 「もうちょっとコンパクトにまとめてください」と言うのは容易いのです。それがわかっていたら、やっています。

 それを見抜いて具体例を率先して示してくださったこと……感謝に堪えません。お力を借りていなければ、情報の取捨選択ができぬままよくわからない超長文記事になっていました。

 構成案でこんなに苦戦したのは初めてのことですが、これほど勉強になったのも初めてのことでした(私は編集者にはなれないという確信を抱いたひとときでもありました)。
 <<

この感覚、非常によくわかります。書き手のレベルって、編集が入ることでめちゃくちゃ経験値が貯まるのです。

基本的には、人に読んでもらうことが経験値の獲得につながるのですが、なんといっても編集者はプロの原稿読みです。得られる経験値の量がハンパではありません。

村上春樹さんもどこかで書いておられましたが、書き手というのは原稿を書きながら(原稿料をもらいながら)、技量を磨いていく部分が多分にあります。単純に数をこなすということだけでなく、原稿を完成させ、編集・校正が入り、読者からの感想をもらう、というサイクルを経て、文章をみつめる視線が磨かれる、ということです。

だからまあ、最初のうちは技量が低くて当然ですね。もちろん最低限の技量は必要であっても、おそらくもっと必要な別の何かがあるのでしょう。

〜〜〜対話の拒絶〜〜〜

「正論」と書いて、「エクスカリバー」とルビを振りたくなるような状況って結構あります。「正論を振りかざし、相手を一刀のもとに断罪する」みたいなシチュエーションです。

そこには対話可能性みたいなものがまったくありません。「私が正しい。ゆえに私の考えとは違うものは、すべて間違っている。Q.E.D」という拒絶的な態度だけが屹立しています。

そんな状態になった人は、だいたい相手が何を言っても、聞いていません。相手の声が鼓膜を揺らし、言葉の意味を理解していても、「間違っている」という前提で聞いているので、はなから戯言だと考えているのです。これでは歩み寄ることも不可能です。

でもって、そういう状態って、別段正義意識が高い人や、他人の心に不注意な人ばかりが陥るわけでなく、ごく日常的に私たちがはまりこむ穴なのだと思います。

自分が正しく、相手が絶対に間違っている、と感じたときは、自分がそういう状態に陥っていないかを少し冷静になって考えた方が、全体としては気分良く過ごせることでしょう。

〜〜〜「正解」の心理モデル〜〜〜

1. 問い(問題)には正しい答えがあり
2. それは他者(主に権威サイド)によってジャッジメントされ
3. 正しい答えを出せていれば自分の得点となる

以上が私が考える「正解」の心理モデルで、これは学校のテストを解くときには有効ですが、自分なりの研究とか、社会における仕事とか、人生の生き方などに適用してしまうと、やっかいなことになります。

特に問題なのが「2」で、このメンタルモデルがキープされていると、自分がやっていることが正しいのかどうかが、常に他者のジャッジメントに委ねられてしまいます。そうなると、いわゆる「主体性」を獲得することができません。言い換えれば、誰かが(特に著名な人が)「このやり方は正しい」と言ってくれないと、自分でそれに納得できないのです。

でもって、世の中には「あなたが正しいんですよ」と言ってくれる人が結構いますので、そういう人は繁盛しちゃうわけです。

でも、本当に必要なのはそうした肯定ではなく、上記のような心理モデルとは別の形のモデルを持つことだと思います。

〜〜〜できないことは、できない〜〜〜

できることは、できますし、できないことは、できません。

ひじょ〜〜〜に単純なトートロジーなのですが、なかなか納得するのが難しいことでもあります。

たとえば何かにチャレンジしてそれがうまくいかなかったときに、強い挫折を感じたとしましょう。この挫折は、いったいどこから発生するのでしょうか。もちろん「自分はそれができる」という前提からです。

私がオリンピック選手と100mを競争して、まったく勝てなくても、挫折は感じないでしょう。あるいは、100mを2秒で走れなくても、もちろん挫折はありません。そんなことははじめから無理だと思っているからです。

ということは、何かに挫折感を感じるのは、「うまくやれば、自分にはそれを達成できる能力がある」と感じている、ということです。で、たいていの場合それは過信と呼ばれます。

とは言え、さまざまな分野から「人間は自分の能力を過大評価する」という傾向が報告されているので、日常的に挫折感は発生してしまうのでしょう。

人生経験を積み、自分の能力の過信に気がつければ、「そうか、そういう思い込みがあったのだな」と少しは楽な方向に修正(≒思い直し)ができるようになる……という見込みも過信なのかもしれませんね。

〜〜〜学びで差異を拾う〜〜〜

中学生時代、はじめて英語を学んだとき、「ああ、日本語ってすごい言語なんだな」と感じたことをおぼろげに覚えています。具体的にどんな要素についてそう感じたのかはまったく覚えていませんが、日本語という言語の特性に、そのとき触れられたような感覚がたしかにありました。

簡単に言えば、相対化です。比べる対象が生まれたからこそ、その特性が浮かび上がります。

さらに後年、フランス語を勉強したときには、今度は「ああ、英語ってこういう言語なんだな」と痛感しました。その瞬間までは、英語は「日本語ではない、言語」という非常に大雑把な位置づけだったのが、フランス語と対比することで、英語の英語らしさがわかってきたわけです。

これもまた、相対化です。

この話は、以前書いた「ライティングとコーディングの違いが、Scrapboxでのメモ書きによってよりはっきり見えようになった」という話にも通じているでしょう。新しい何かが増えることで、わかることがさらに増えるのです。

知ることは、単にそれについての知識を増やすだけでなく、それとは違う形の知識も引き寄せる。

お得感たっぷりですね。

〜〜〜声が聞こえる〜〜〜

以下のツイートを見て、思わず頷きました。

私も、堀正岳さんの本を読んでいると、著者の声で文章が脳内再生されることが多々あります(YouTubの動画をよく見ているからでしょう)。

しかしながら、不思議とツイートやブログではそれは起きません。起きるのは決まって、本を読んでいるときです。たぶん、何かの理由があるのでしょう。

それにしても、脳はこういうトリッキーなことを簡単にやってのけます。なにせ実際に私は堀さんがその本の文章を読み上げるところを聞いたことがないのです。つまり、自分の声の記憶のパターンから、読み上げる声を自分で合成している、ということです。言い換えれば、非実在的な現実を心象の中に作り上げているのです。

こういう機能が暴走してしまったら、現実に帰ってこれなくなってしまうのでしょう。そもそも、現実とは何か、という別口の問題もあるわけですが。

〜〜〜見つけた本〜〜〜

今週見つけた本を三冊紹介します。

 >>
 なぜ私たちは権力により監視には抵抗しつつも、
 自ら個人情報を進んでアップし続けるのか?
 SNSやビックデータによる「透明化」が私たちにもたらすものとは何か。
 監視論の権威による、オンライン時代の監視文化論。
 <<
 >>
 人文系学部の危機、大学の危機が声高に喧伝される時代において、人文・社会科学の存在意義とは何か。51名の人文学者による宣言
 <<
 >>
 大学で物理学科に籍を置いたこともある著者は、これまでも折に触れ、自らの作品に科学的題材を織り込んできた。いわば「科学する心」とでも呼ぶべきものを持ち続けた作家が、最先端の人工知能から、進化論、永遠と無限、失われつつある日常の科学などを、「文学的まなざし」を保ちつつ考察する科学エッセイ。
 <<

〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のウォーミングアップ代わりにでも考えてみてください。

Q. 新年の決意や抱負を思い出せますか?

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

今週も「考える」コンテンツをお楽しみくださいませ。

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2019/05/13 第488号の目次
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○「Scrapboxでのタスク・プロジェクト管理」 #BizArts3rd

○「ノートで方針を整理する」 #ノーティングの技法

○「静的サイト作り」 #やがて悲しきインターネット

※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。

○「Scrapboxでのタスク・プロジェクト管理」 #BizArts3rd

先日、WorkFlowyでバレットジャーナルをやってみる、という記事を書きました。

ちょっとした思いつきで試してみたのですが、その感触のよさに驚いています。これまで構築してきたWorkFlowyのシステムの中では、一番うまく機能しそうな予感すらあります。

しかしながら、最近はタスク・プロジェクト管理はすべてScrapboxで行っており、しかもそのシステムが日ごとに拡充度を増しているので、なかなか他のツールに軸足を移す機会がありません。「ちょっと一週間くらい、別のシステムでやってみようか」とすら思えなくなっています。

その点について、以下のようなツイートも頂きました。

というわけで、今回はこの辺の話もからめつつ、Scrapboxでのタスク・プロジェクト管理について紹介してみます。

■タスクとアイデア(素材)

まず、私のメインのScrapboxプロジェクトは二つあります。

・発想工房(public)
・倉下忠憲's project(private)

この二つの役割ははっきりわかれていて、前者がアイデア(素材)管理で、後者がタスク・プロジェクト管理です。

で、「別のページに書いたことどうしが、ひとつのセンテンスに育つ」というのは、タスク・プロジェクト管理には出てきませんし、アイデア(素材)管理にも出てきません。

ここは説明が必要でしょう。

たとえば、何かしら思いついた一行があり、別に思いついた一行があり、それらを重ねたり、書き換えたりすることで、センテンスに育て上げ、さらにそれを繰り返して(読み物としての)文章に仕上げる、ということを、私はほとんどしていません。少なくとも、Scrapboxではそれは非常に稀な現象です。

というのも、Scrapboxは、情報をページという単位で切り分けて、あたかもそれが一つのオブジェクトであるかのように扱います。ここでいうオブジェクトとは、「一つの独立した存在」ということです。

Scrapboxがこの指向性を持つ限り、二つの破片的なものを集めて、一つの完成(全体)に仕上げる、という方向にはなりません。少なくとも、その破片群をページ単位で保存している場合はそうなるでしょう。

もちろん、Aという概念を説明しているときに、Bという別の概念を持ち出すことは頻繁にあります。しかしこれは、思いついた破片的な一行と別の一行によって、センテンスを育てるのとはまったく別の行為です。

Aという概念はそれ自身で独立しているし、Bの概念を持ち出さなくてもそれは成立している。ただ、Bという概念を持ちだした方がより詳しく説明できる。そういう関係です。

だから、「別のページに書いたことどうしが、ひとつのセンテンスに育ちにくい感覚がある」というのはScrapboxを使っていればごく自然なことだと思います。それを行う場合は、供養祭ページのように別ページに切り分けるのではなく、同一ページに並べる必要があるでしょう。

このページ内であれば、私も二つの行がセンテンスに育つことがたまに起こります。しかし、その頻度は、アウトライナーよりはかなり低いものです。

むしろ、発想工房に保存されているものたちは、独立した素材(マテリアル)としてのアイデアと言えます。

その素材を参照しながら、文章を書き起こすことはよくあります。たとえば以下の記事は、そのようにして書きました。

上の記事は、比喩的に言えば、目の前に情報カードを三枚並べて、それを見ながらエディタで文章を書き起こした、という感覚です。これは、一行をセンテンスに育てた、というのはかなり異なるアプローチだと(個人的には)思います。

(もちろん、どちらのやり方がいいか、という話ではなく、今の私がそのように書いている、というだけの話です)

■タスク・プロジェクト管理

続いてタスク・プロジェクト管理の話に移りましょう。

担当してるのは「倉下忠憲's project」というprivateなプロジェクトでした。

このプロジェクトには、大きく以下の五つのタイプのページが存在しています

・インデックス系
・デイリーページ
・ウィークリーページ
・プロジェクトページ
・原稿

基本となるのはデイリーページです。そこに今日やるタスクやその日に思いついたちょっとしたことなどを書き込んでいきます。

Scrapboxの便利なところは、そのデイリーページをテンプレート(雛形)を利用して作成できることです。UserScriptを経由することになりますが、曜日などを加味した(≒曜日で条件分岐する)雛形を作成できます。

それだけではありません。

多くの場合、ツールに対するプログラムでのアレンジは、そのツール外になることがほとんどです。たとえばEvernote + AppleScript、あるいはWorkFlowy + Tampermonkey といった形です。

この場合、ツールを使っているときに何か不満が生じても、それを解消するためにはいったん別のツールへと移動しなければなりません。EvernoteからAppleScript Editorへ、といった具合に。

一方Scrapboxは、UserScriptとして、そのままScrapbox内で変更が行えます。ちょっとした改善点であっても、ぱぱっと修正できます。これは些細なことのように思えますが、細かい改修を少しずつ積み上げやすい、という点でかなり重要です。

■特別な日付フォーマット

また、Scrapboxにはタイムスタンプ機能があり、Macでは、control + t でその日の日付を簡単に挿入できます。

で、似た機能はたとえばEvernoteにもあるのですが、Scrapboxが良いのは、これまたUserScriptでそのフォーマットを変えられるところです。

で、私の「倉下忠憲's project」では、そのフォーマットを「21:56」のようにしています。つまり、年も月も日付もなく、ただ時間だけが入るようにしているのです。

なぜかと言えば、このプロジェクトで頻繁に触るのはデイリーページであり、デイリーページはすでにそのページ全体が年月日の情報を持っているので、タイムスタンプとしては必要ないからです。
※デイリーページはたとえば2019/05/12というタイトルなので、タイムスタンプに日付を入れると情報が重複してしまう、といことです。

むしろ私が欲しいのは、あるタスクを実行し終えた時間の情報です。つまり、タスクが完了したときに、

R-styleの更新

R-styleの更新×21:58

のような処理を行いたいのです(×は絵文字のチェックマークの代わりです)。

で、この操作が簡単にできるのがScrapboxの魅力の一つでもあります。

■切り出し

もう一つ、Scrapboxの取り回しの良さに「切り出し」と「呼び送り」があります(今勝手に名前を付けました)。

まずは切り出しから。

Scrapboxでは、ページへのリンクがすぐに作れて、しかもそのページがまだ実体を持っていなくても構いません。なので、これから書く文章のタイトルを書き込み、それをリンクしてクリックすれば、すぐにその文章の作成画面に移れます。

が、これだけならアウトライナーでも同じことができます。違いは以下の二点。

・すでに作ってあるページをすぐに呼び出せる
・項目の移動が必要ない

たとえば、私は毎週一回シゴタノ!の原稿を書いているのですが、その週の最初に [シゴタノ!05/10分] というリンクを作っておきます。

で、5月10日になったら、その日のデイリーページにブラケットを作り、5 とか 10とかを入力すれば、上のページ名が候補として出てくるので、それを選択すれば即座にそのリンクが作れます。

このようなリンクの呼び出し方は、最近Dynalistにも実装されて、いよいよ使い方が広がるなとは思っているのですが、やはり細かい使い勝手はScrapboxの方が上です。呼び出す際に、曖昧な検索を許容してくれるので、1文字くらい間違えても目当てのページ名が見つかるところが特に素敵です。

また、ページ同士がツリー構造になっていないので、5月8日に途中まで書いた原稿の続きを、5月9日に書く場合でも、項目の移動を一切行わず、ただリンクを作るだけでOKとなります。

アウトライナーであれば、前日のデイリー項目からよいしょっと移動させる必要がありますし、それが一週間前なら結構上(ないしは下)から持ってこなければなりません。その点、Scrapboxなら日付の跳躍などまったくスルーできます。ただリンクを作るだけで、「お目当て」の原稿へのアクセスが作れるのです。

おおよそこのあたりが、「切り出し」の効能なのですが、これだけであれば、先ほど書いたようにDynalistでも似たようなことは実現できます。大きな違いは、「呼び送り」にあります。

■呼び送りの要件

「呼び送り」はいくつかの要請により実行が求められ、いくつかの機能によってそれが実現しています。

・デイリーとプロジェクトの別離
・コミットログの有用性
・切り出し機能とアレンジ

まず、デイリーとプロジェクトの別離です。

デイリータスクリスト方式で運用していると、どうしても「二日以上のコミットを必要とするタスク」(つまりプロジェクト)の情報を、別立てで扱う必要がでてきます。

で、もちろんそういうページを作ればいいのですが、問題は、そのプロジェクトページへの書き込みが疎遠になることです。日中は、デイリーページを開きっぱなしなので、そちらに書き込んでしまい、プロジェクトページにはほとんど何も書き込まれない、ということが頻繁に起こります。

そのように運用しても、その日に関しては特に問題はないのですが、数日経ってから作業を振り返りたい場合に、デイリーページを順繰りに読み返していかなければならなくなります。それってかなり面倒でしょう。というか、もうそうなるとプロジェクトページの存在意義みたいなものがまったく失われてしまっています。

これをどうにかしたい、というのが(自分の)要請としてありました。

■コミットログを残したい

もう一つの要請に、コミット・コメント(メッセージ)があります。

これは何度かメルマガでも書いていますが、Gitを使って作業をしていると、一区切りの作業毎に「コミット」という動作が行われ、その際に何かしらコメントを残すことが要求されます。

で、そのコメントの履歴が、作業ログとして非常にうまく機能してくれるのです。

これを自分のタスク管理システムにも導入したい、という気持ちがありました。

■New page機能の活用

上記の要請を結びつけて解決したのが、Scrapboxの「New page」機能です。

まずこの機能について説明しておきましょう。

Scrapboxのどこかのページで、テキストを複数行選択するとポップアップメニューが出てくるので、そこにある「New page」をポチっと押すと、選択行の一行目がタイトルになった新規ページが作成されます。これはページを「切り出す」ときに非常に有用なのですが、それだけではありません。

この「New page」は、Scrapboxに備わっているURLから新規ページを作る機能が利用されているのですが、その機能では新しく作ろうとしたページがすでに存在している場合は、そのページへの追記とて働きます。

言い方を変えれば、「既存ページの追記」としても使えるわけです。

でもって、「New page」はそのURLから新規ページを作る機能を使っているだけであり、Scrapboxではポップアップメニューのコマンドを自作できるので、合わせると、自分なりの「既存ページの追記」機能が作れる、ということです。

■デイリー→プロジェクトへのAppend

さて、ここまで話してきたことを組み合わせると、次のような運用となります。

まず、定期的に進めているタスク(たとえばR-styleの更新)や、その期間に取り組んでいるプロジェクト(たとえばかーそる第三号の作成)のページを作り、そのページ名をデイリーのテンプレートに仕込んでおきます。

すると、毎日のデイリーにプロジェクトページへのリンクが自動的に掲載されるようになります。

日中、そのプロジェクトの作業を進めていくときは、そのページリンクの下に関連することを書いていきます。思いついたこと、作業内容、次にやるべきことなどです。

たとえば、以下のようになります。

[Honkure更新]
 モバイル知的生産の下準備
[シゴタノ!更新]
 [5月10日分のシゴタノ原稿]
[かーそる第三号の作成]
 goさんの修正を反映
 EPUBを作成
 書誌データを入力する

こうしてメモを書きながら作業を進めていき、作業が一段落したら、作業の項目名+メモを選択して、「Append」を発動させます。

この「Append」はUserScriptで自作した、プロジェクトへの追記のためだけの機能です。「New page」をアレンジして自分の用途にぴったりフィットするように書き換えました。

で、この「Append」を発動させると、書き留めたメモ全体がプロジェクトページに追記され、デイリーページからはその記述が消えます。

さらに、プロジェクトページへの追記には、追記元のページ名も含まれます。この場合であれば、デイリーページ、つまり日付が入る、ということです。

結果、[Honkure更新]というページには、

from [2019/05/09]
 モバイル知的生産下準備×

(×は絵文字のチェックマークの代わりです)

という書き込みが追加されます。当然次の日も同じことが行われ、

from [2019/05/09]
 モバイル知的生産下準備×
from [2019/05/10]
 モバイル知的生活×

のように、順々にログが積み上がっていくわけです。

また、こうしてプロジェクトページにメモを追記すると、デイリーページ側からはそのメモは消えます(項目名だけが残ります)。表示がすっきりするわけですね。

さらにUserScriptのアレンジによって、項目名の後ろに自動的に×(絵文字のチェックマーク)が入るようになっています。あとは、command + t のショートカットで終了した時刻を入力すれば、その日のプロジェクトに関するタスクはおしまい、となります。

■ワンクリックでできるということ

以上のような運用がすこぶる便利であり、しかも他のツールではまず実現できないので、Scrapboxから別のツールに乗り換えることがなかなかできません。

もちろん、デジタルツールであれば、「デイリーページからメモをコピーして、プロジェクトページにペーストし、その日の日付を加えておく」という手順を踏むことで、他のツールでも同じ情報環境は整備できますが、そのための手間がどうしても大きく感じられ、結局これまではうまくいかなかったのです。

しかし、Scrapboxでは、それが続いています。少しずつではありますが、プロジェクトに関するログが残っているのです。

それは一つには、手間がワンクリックだけで済む、ということも影響しているでしょうが、それ以上にデイリーにごっそり書いていたメモが、「一瞬で」プロジェクトページに移動する感覚が心地よい、ということも関係しています。メモが「消えてなくなる」のです。

これは、アウトライナーで言うところの、下位項目の表示を閉じるのにも似ていますが、やはり違います。アウトライナーであれば、一度閉じても再び簡単に開けますが、Scrapboxだと、プロジェクトページに「送った」ものは、そのページを開かないと閲覧できません。

つまり、デイリーページから見たときに、その情報(=送られた情報)が、「過去」という感じが強くしてくるのです。それはGitでコミットした内容が、簡単には修正できない、ということにひどく似ています。

ともかく、非常に感覚的な話でしかありませんが、一度メモを送ると「終わった」という感じがしてくるのです。その感覚の心地よさが、「呼び送り」の習慣化に役立っています。

■さいごに

他にも、Scrapboxをタスク管理に使っていくために、さまざまなカスタマイズを施しているのですが、さすがに話が長くなりすぎるので、今回はここまでにしておきましょう。
※うちあわせCastで話すかもしれません。

ともかく、Scrapboxで一番気に入っているのが、機能的なカスタマイズが可能な点です。CSSによる見た目の調整だけでなく、JavaScriptを用いて、今回紹介したような自分に合わせた調整ができるので、非常に使い勝手が良い環境を自分で作り上げられます。

でもって、言わせてもらえるならば、すべての情報整理ツールはこのようなカスタマイズ性を持ち合わせているべきだろうとも感じます。

それができないと、ツールやそれが提供しているフォーマットに自分の情報処理・整理を合わせざるをえなくなります。それはやっぱり窮屈なものです。

(おわり)

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