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Weekly R-style Magazine 「読む・書く・考えるの探求」 2018/02/12 第383号

はじめに

はじめましての方、はじめまして。毎度おなじみの方、ありがとうございます。

ようやく、体調が戻りつつあります。

入眠できる時間も早くになり、食欲も戻ってきました。一日に数時間、作業ができるようにもなっています。これまでは最低限の仕事をこなすだけで精一杯でしたが、多少余力が出てきました。

いよいよ通常モードへの復帰です。具体的には「月くら」計画の再開です。

もちろん、一気に無理したりはしません。それで体調を悪くすれば元の木阿弥ですし、同じ徹を二度踏んだことになります。まずは、簡単な作業から始めるのがよいでしょう。

というわけで、2017年12月13日以降まったく触っていなかった「第一章」の原稿を読み返すところから、始めることにしました。

さすがにこれだけ時間が経っていると、何を書いたかはほとんど覚えていません。言い換えれば「他人の原稿」です。

その視点を持って、現状の原稿にツッコミを入れたり、肉付けをしていく。それが、ファーストトライとなりそうです。

とは言え、あまりディスプレイを見つめる時間を増やしたくないので、テキストファイルをPDFに変換し、それをネットワークプリントで印刷して、紙ベースで読むことにしました。

プリントアウトと赤ペン。

こういうところから復帰の第一歩を刻んでいくのも、なかなか良いものです。

〜〜〜プロスフェアー〜〜〜

「プロスフェアー」(Prosfair)というゲームをご存じでしょうか。漫画『血界戦線』に登場する架空のボードゲームです。

 >> チェスを基にした異界のボードゲーム。人界にも愛好者が存在する。ゲーム進行によって駒が進化し、また複数の盤で試合が展開する「戦域拡大」、場にある駒全ての属性を変化させる「宣誓」などのルールがあり、極めて複雑な内容になっている。プレイヤーの実力が拮抗するほど複雑さが増し、加えて時間が経つ程に指数関数的に難度が上がる。
血界戦線 - Wikipedia」より <<  

詳しい解説を知りたい方は、以下をどうぞ。

◇【血界戦線】「田中的プロスフェアー解説①」イラスト/田中たみよ [pixiv]
https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=51680210

この「プロスフェアー」というボードゲームは、時間が経てば経つほど複雑化し、難易度がアップするのですが、本の構成案を考えているときに、ふとこのゲームのことを想起します。

最初は簡単なのです。ちょっとした直感というか思いつきがあり、そこには中心的なテーマがあります。それで一冊の本を書き上げられそうな気がします。

ただし、素材集めが進んでいくと、どんどん複雑性が増します。どんなことを語ろうか、どんな順番で語ろうか、どんな関連づけで語ろうか……。素材が集まれば集まるほど、語り方のパターンは飛躍的に増え、脳内のメモリを占拠し始めます。最初にあった、素朴な「これは書ける」というような直感は、もはやどこにもありません。

おそらくは、そうした複雑な対象を、読書さんに読める形に整え、理解しやすいように並べるのが著者の仕事なのでしょう。広げることと、刈り込むこと。この両方があってこそ、面白い本ができるのではないかと思います。

〜〜〜陳列作業〜〜〜

ここ最近、近所のショッピングモールでテナントの入れ替えが進んでいます。売上げアップのための施策なのでしょう。売上げが振るわないところは退店してもらい、売上げが伸びそうなお店に入ってもらう。スクラップ&ビルドは、カイゼンの基本です。

結果、閉店&開店作業があちらこちらで行われているわけですが、私の目を引くのは開店作業です。特に、空っぽの棚しかない店内に、大量の在庫の段ボールが積んであると、妙に心が燃え上がってきます。

「あぁ、陳列したい……」

もしかしたら、前職病なのかもしれません。あるいはもともと備わっている性質なのかもしれません。どちらにせよ、何かを並べたい欲求が私の心の中に強く眠っています。

ここで言う「陳列と」は単に並べることだけを意味するのではありません。ある機能を持たせて(あるいはある目的に沿って)並べることが陳列です。

小売業の売り場であれば、「売上げを作るため」に商品を並べなければならないでしょう。では、どうしたら売上げが作れるのか。

売上げを作るためには、お客さんに商品を見つけてもらい、かつ手にとってもらうことが第一歩です。だから、見やすいように陳列しなければなりませんし、手に取りやすいように棚の配置を考える必要があります。

きちきちに商品を詰めれば在庫効率はあがりますが、お客さんが手を入れるスペースがなくなってしまいます。これでは手に取りやすい配置にはなりません。商品がグルーピングされていなかったり、子供向けの商品が最上段に置かれているのもタブーです。

一口に売り場作りといっても、実はいろいろ考えることがあります。最終的な目的が「売上げを作るため」であるにせよ、そこで考慮される要素は「できるだけたくさんの商品を陳列する」といった単一の要素ではありません。むしろそれは、複雑に絡み合ったパズルを解くような感覚があります。

そして、一番大切なことですが、その先には「人」がいます。人の動きを想像して売り場を作る。人の気持ちを考えて売り場を作る。そうしたことは難しいのですが、難しいがゆえの楽しさがあります。

でもって、考えてみると「本作り」というのも、「コンテンツの陳列」という風に捉えらるかもしれません。伝えたいことを、ある目的に沿って並べること。

仕事は変わっても、やっていることの方向性は同じなのかもしれません。

〜〜〜掃除作業の費用対効果〜〜〜

大きなショッピングモールにいくと、掃除を専門しているスタッフさんをよく見かけます。

落ちているゴミを拾ったり、いっぱいになったゴミ箱を替えたり、汚れている床を磨いたりなど、見た目や衛生面におけるメンテナンスを担当する大切な仕事です。

しかしながら、そうした仕事は売上げを一円も上げません。ひたすら経費が出ていくばかりです。

もし、ショッピングモールのマネージャーが「売上げ」で仕事を測定し、全体の効率化を図ろうとしたら、まっさきに削減されてしまうのがこの手の仕事でしょう。

測定基準が一つしかないのは、本当に怖いものです。

〜〜〜参照点効果〜〜〜

以下のツイートを見ました。

 >> 本を書きました。控えめに言って、名著です。サピエンス全史の4倍、反脆弱性の2倍、面白いです。 << 
https://twitter.com/hiroki_daichi/status/959390750621315072

この本が本当に「サピエンス全史の4倍、反脆弱性の2倍」面白いのかはわかりません。それでも興味を惹かれてしまいます。なぜなら、「サピエンス全史」も「反脆弱性」も私は面白く読んだからです。

もしこれが、別の本のタイトルだったら──具体例を挙げようと思いましたが、角が立ちそうなのでやめておきます──おそらくまったく興味を惹かれなかったでしょう。

「面白さ」というのは、客観的に測定できるわけではなく、あくまで主観的な、言い換えれば個人の好みに属するものですから、4倍だとか2倍だとかはこの場合どうでもいいというか修辞でしかなく、本当に重要になるのは、どんな本と比較しているかです。

その比較によって、なるほど、あの本たちと方向性が近しい本なのだな、という印象を伝えることができます。正直に言って、これはなかなかうまいやり方だなと関心しました。

〜〜〜空白時間〜〜〜

まだ体調が芳しくなかったときのこと。

ショッピングモールを歩いていたら、急に熱が上がってきたので、近くにあった椅子に座りました。フロアの隅にある自動販売機の横に置かれた椅子です。

その椅子に座りながら、何をするでもなく、ぼけーっと行き交う人々を眺めていました。5分、10分くらいのことです。

そのとき、ふと気がつきました。こういう時間の使い方をしたのは、ずいぶんとひさびさだな、と。

これまでは、時間があればiPhoneを取り出してタイムラインを確認したり、ノートを取りだして何かを書いたり、パソコンを取り出してEvernoteを整理したりして、常に「何か」をしていました。それはたいへん充実した時間の使い方なのですが、余白(マージン)というものがまったくありません。

思い返してみると、昔はもっと何もしていない時間を持っていたはずです。名前のない時間を。

体調不良のおかげで、自分はずいぶんと生き急いでいたのだと気がつけたのが、不幸中の幸いトピックス
の一つかもしれません。

〜〜〜このメルマガは「難しい」のか〜〜〜

少し前、当メルマガの読者さんから、「らしたさんのメルマガって難しいですよね」というご意見を頂きました。

なるほど、このメルマガは難しいのか──と、納得もしたのですが、自分としてはそんなに難しいことを書いている感覚はありません。そうなると、よくわからなくなってきます。そもそも難しいことが良いことなのか、悪いことなのかも不明です。

もちろん、最終的なジャッジメントはすべて読者さんが行うものなのですから、私がどう考えているかはあまり関係がないのですが、それでも今後の方向性についてう〜んと考えたくもなってきます。

はてさて、どうなんでしょう。

〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない純粋な質問なので、お気軽にお答えください。

Q. このメルマガの内容って、難しいのでしょうか。

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

今週も「考える」コンテンツをお楽しみくださいませ。

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2018/02/12 第383号の目次
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○BizArts 3rd 「中裁量におけるタスク管理対象」
 タスク管理を掘り下げていく企画。連載のまとめに入っています。

○SS 「変わった寿司屋」
 読み切りのショートショートです。

○ノート道の歩き方 Vol.08 「長期記憶をサポートする記録」
 週替わり連載。今回は、ノートについての連載です。

○やがて悲しきインターネット 「自分のブログの在り方」
 インターネットの昨今について書いています。

○物書きエッセイ 「ライティング・プロセス・パターン(WPT)」
 物を書くことや考えることについてのエッセイです。

※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。

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