No-inbox Life/飛び跳ねる文脈/フォロワーを増やすこと

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2019/05/27 第450号

はじめに

はじめましての方、はじめまして。 毎度おなじみの方、ありがとうございます。

何度か予告していましたが、かーそる第3号がようやく発売となりました。パチパチパチパチパチパチ。

今回も、個性豊かな執筆陣による個性豊かな文章が集まっておりますので、よろしければご覧ください。

いや〜、それにしても本当に時間がかかりました。第二号から約2年経っています。

私が体調を崩してしまい、仕事量を激減させた後、二冊の本の執筆依頼がやってきたので、その遂行に専念していたため、他のプロジェクトがまったく止まっていました。この「かーそる」プロジェクトも、そうして止まっていた企画の一つです。

が、本二冊も書き上がり、こうして「かーそる」の編集も無事終えることができました。これで、体調不良時代の宿題はかなり返上できた感触です。

あとは、『僕らの生存戦略』ですが、こちらもあまり無理をせず、着々と進行していきたいと思います。

〜〜〜記録 help us〜〜〜

前回から2年も期間があいていると、結構なことを忘れています。書式の設定はどうだったのかとか、目次の作り方はどうしていたのかとか、そういう細かい諸々を完全に忘却しているのです。

幸いなことに、雑誌「かーそる」を制作&販売しているBCCKSには、前号のデータが残っています。ぽっかり忘れていることがあっても、前号を参照すれば作業に支障はありません。問題は、表紙などの画像データです。

画像データに関しては、私のパソコンで作っており、そのためにPixelmatorとAffinity Designerという二つのアプリケーションを使っています。で、そのとき使ったデータの保存場所が散らばっていて、「原本」がなかなか見つけられませんでした。普段なら「最近使った項目」から即座に参照できるのですが、当然2年前のデータには通用しません。

さらに、号数の表記に使ったフォント名が思い出せず、必死に探し回るハメになりました(フォントをアウトライン化してしまい、メタデータから辿れなくなっていたのです)。

というわけで、今回は「記録」を残しておく重要性を痛感しました。いや、そういうのは毎回感じているのですが、2年もの歳月が開いてしまっていたので、よりいっそう強くそれを感じた次第です。

現状は、作業メモをScrapboxに残しているので、だいたいのことはそのメモから「掘り起こせる」ようになっています。毎日の小さい記録の蓄積は、やっぱり大切ですね。

〜〜〜めほり書店〜〜〜

堀正岳さんの新サイトがオープンしておりました。

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 堀 正岳 (@mehori) の読んでいる本、みたもの、聞いたものについて積み上げている仮想的な書店です。
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感覚というか、方向性はHonkureに近いですが、サイトのデザインがメッチャかっこいいですね。さすがです。

一番最初にアップされているのは、本ではなく映画「プロメア」の紹介記事で、私は──タイトルだけ見て──記事の中身を読む前に映画を観てきました。堀さんが紹介しているからには観に行く価値があるのでは、という期待が半分、かーそる企画が終わってぽっかり空いた気持ちの穴を即座に違う作業で埋めたくなかった気持ちが半分といったところです。

で、個人的にはそういう「ちょっと背中を押されるくらい」がイイ感じの推され方だと考えています。

つまり、「あの人が言っていたから、必ずこれをチェックしよう」という権威主義ではなく、「こういうのあるんですよ。どうですか」という紹介があり、それが別の機会と重なって購入(行動)の動機づけとなる、という塩梅です。

今回に関しては、私はあらゆる感想を読む前に映画を観たい派なので、記事を読む前に観に行きましたが、本の場合だったら、フムフムとレビューを読み、それをどこか頭の片隅に留めておいて、別のところで目にしたり、本屋でダイレクトに出合ったり、あるいは今読んでいる本で言及されているといった機会があったら、読んでみる、というようなステップを踏んだことでしょう。

そうした複数のインプットによる閾値的な反応というのが、「オススメ」が溢れかえっている時代は、有効なのではないかと感じます。

私のHonkureも、そういう感じでゆるゆると更新することを指針としています。「これを読みなさい!」って結構疲れますからね。書く方も、読む方も。

〜〜〜昨日の自分からの挑戦〜〜〜

最近、自分のお腹のぽっこり具合がひどいので、プランクを日課に加えています。これがまあ、きついんですが、それはそれとしてその時間測定にiPhoneの「ストップウォッチ」を使っています。特別なアプリではなく、標準のタイマーアプリの一機能です。

で、「さあ、今日もプランクをしようか」とそのストップウォッチを立ち上げると、昨日ストップウォッチを止めた時間がそのまま残っていて、私の目に飛び込んできます。

その数字が、まるで昨日の私からの挑戦状のように感じられます。「昨日の俺は、これだけやったぜ。さあ、アンタはどうなんだ」とでも言うかのように。

もちろん完全な妄想なわけですが、それが「やあ、やるぞ」という気持ちに微妙に火を付けてくれるので、案外バカにしたものではありません。

めちゃくちゃ小さいことではありますが、そうしたものの積み重ねが、行為の継続に影響を与えるので、積極的に利用していきたいところです。

〜〜〜夫婦会議の時間〜〜〜

ごりゅごcastで「家族会議」の話題が上がっていました。

なかなかおもしろいな〜と思いつつ、我が家のことを振り返ってみると、定期的な家族会議(≒夫婦会議)はないものの、あるものがその代替になっていることに気がつきました。それが、妻の送り迎えです。

私は妻を毎日(もちろん出勤日はということです)仕事場に送り迎えしているのですが、その際の移動時間がちょうど夫婦会議の場として機能しています。何かしらの相談や、スケジュールの調整、日常の話題交換などがそこで行われているのです。

・発生することが確定している
・時間は有限(到着したらお終い)
・相手の話を聞く以外に特にすることがない

というわけで、会議にピッタリのシチュエーションです。

で、それはそれとして、自分たちがやっていることは、自分たちにとっては「当たり前」なので、他の夫婦の話を聞いて、「なるほど、これはそういう役割だったのか」と気がつくことが結構あります。その意味でも、ごりゅごcastは面白いです。

〜〜〜オレンジページ・デビュー〜〜〜

先日、生まれてはじめて「オレンジページ」を買いました。2019年6/2号「魅惑の触感豆腐おかず」です。

たまたまコンビニで見かけて、へえ、面白そうと興味を持ったのですが(最近のおかなぽっこり傾向に強い関連がありそうです)、実際買って読んでみると、雑誌の構成とか広告の割合とか記事のレイアウトとかをついついチェックしてしまいます。

職業病ですね。

〜〜〜今週見つけた本〜〜〜

今週見つけた本を三冊紹介します。

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 歴史修正主義が跋扈し、人文学の危機が叫ばれるなか、あえて「世界」とは何かを問う。人文学の根源的な問い直しのために。
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 激変する現代社会に必要な思考法、それは柔軟的思考である。無意識と想像に支えられた「ひらめき」の術を身につけるための方法論。
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 「生命とは何か」という問いの根源を探究する著者の思考は、物理法則の第一原理“コンストラクタル法則”を武器に、富と資源の流れ、階層制の遍在性、テクノロジーやスポーツや都市の進化、政治や社会を支配する原理、時間や死の諸相までを見渡しながら、生命と進化にまったく新たな視座を与える。
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〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のウォーミングアップにでも考えてみてください。

Q. 他の人のオススメ情報はどのように利用されていますか?

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

今週も「考える」コンテンツをお楽しみくださいませ。

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2019/05/27 第450号の目次
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○「No-inbox Life」 #BizArts3rd
 最近inboxとの付き合い方が変わってきました。そんなお話を。

○「飛び跳ねる文脈」 #知的生産の技術
 Scrapboxを使い始めて情報整理のやり方が結構変わってました。基本的に、よい方向に。

○「フォロワーを増やすこと」 #やがて悲しきインターネット
 お金を払ってフォロワーを買う、という行為をきっかけに思索を進めます。

※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。 

○「No-inbox Life」 #BizArts3rd

inboxを持たなくなってから、かなりの時間が経ちました。もちろん、大げさに表現しています。

メールを受信するGmailには「受信箱」が存在していますし、それはどう理屈をこねてもinboxと呼ぶべきものでしょう。そして、そのinboxは、毎日空っぽになるように心がけ、処理をしています。inbox-zeroの考え方です。

一方で、Evernoteには、同種の働きを持つノートブックはなくなりました。基本となるノートブックは一つであり、そこにあらゆる情報が流れ込んできます。そして、そこから移動させることは基本的にはありません。つまり、inbox-zeroには決してならないのです。

そのように運用するようになってから、Evernoteと付き合うのはすごく楽になりました。そこに漂っていた、扱い難い義務感のようなものが綺麗さっぱり消えてしまったのです。

■Gmailは他人発

GmailとEvernoteの違いはどこにあるのでしょうか。

Gmailに入ってくる情報(≒メール)は、他者発のものであり、そこから発生するタスクは、大抵すでにある程度の輪郭を持っています。

「締め切りまでに原稿を書いてください」
「新しい連載の依頼をしたいのですがいかがでしょうか?」
「○月○日にイベントがあるのですが、講演していただけませんか?」

それはそうでしょう。依頼者の中に、明確なメッセージがあるからこそ、私にメールしてきているわけです。

「倉下さんの文章を読んで、ちょっと思うところがあったのですが、それが具体的に何なのかはわかりません。本の執筆を依頼したいのか、イベントに来ていただきたいのか、自分でもよく見定まっていない感じがするのです。なのでメールさせていただきました」

ということは、まずないでしょう。一般的にメールの送信は、具体的な依頼があり、それを相手に伝えるために行われます。だから私は、その具体的依頼に対して、行動を起こせばいいだけです。

そのための行動は、たとえば「○月○日までに原稿を書く」というタスク(ないしはスケジュール)で対応できることもありますし、また「〜〜について下調べを行い、検討する」という少し距離のあるタスクで対応しなければならならないこともあります。

しかし、どちらにせよ、「原稿を書く」や「YesかNoの返事をメールする」など、最終的な到着点は定まっています。こうしたものの扱いは、一般的なタスク管理の技法でうまくいきます。つまり、inboxは、いずれゼロに持っていけるのです。

■Evernoteは自分発

一方で、Evenroteはどうでしょうか。そこに集まるのは、自分発(自分の脳発)の情報です。GTD風に言えば「私の気になること」です。

そうしたものの中には、依頼と同じようにすぐにタスクを抽出できるものもあれば、なかなかそうはいかないものもあります。さっきの例を逆向きに利用すれば、

「○○さんの文章を読んで、ちょっと思うところがあったけど、それが具体的に何なのかはわからない。本の執筆を依頼したいのかもしれないし、イベントに来ていただきたいのかもしれない。あるいは別の何かということもありうる。さて」

ということが、「気になること」としてinboxに放り込まれていたときに、これを「すぐに」処理することは、かなりの困難を伴います。なんといっても、自分にとってこれが何なのかが判然としていないのです。どう扱いたいのかがわからない以上、どう扱えばいいのかもわかりません。

もちろん、無理矢理決めてしまうことは可能でしょう。たとえば、企画案として扱って、タグを付けたりノートブックに入れておけば「処理」はできます。しかしそこでは、大幅な情報の欠損が生じています。だって、それは「企画案であるかもしれないし、別の何かかもしれない」ものなのですから。

上記の例に留まらず、「自分が思いつくこと」の中には、簡易には処理できないものが混ざってきます。そうすると、inbox-zeroの理念はまっとうできません。

■本来的なinbox-zeroの役割

でも、それはinbox-zeroが悪いわけではありません。

もともとinbox-zeroの考え方は、「メールの受信箱をタスクリスト代わりにするのをやめよう」からスタートしています。

メールの受信箱は次々新しいものが入ってくるので、いつまでたっても「終わり」がない。だからメールを読み、その中身をきちんと判断して、しかるべき「タスク」をタスクリストに記入しよう。そして、そのタスクを実行していこう、という考え方です。

メールの受信箱をいったんゼロにし、そこから抽出されたタスクのリストがあるならば、以降はタスクリストを参照して作業を進めていけます。その作業中にどれだけ新しいメールが入ってきても、タスクリスト自体は「クローズ」できているので、終わりがあるのです。

常に作業に追い立てられているのではなく、「今日はここからここまで」と線引きすることは、やる気というモチベーションを維持する上でも重要です。

しかしこれは、やはり「メール」を捌くための考え方なのです。言い換えれば、タスクの発生源としての情報を処理するための方法論なのです。

残念ながら、これをそのまま「気になったこと」の処理全般には敷衍できません。できるのは、タスクを抽出しやすい対象に限られます。

■さいごに

では、「気になったこと」全般はどのように処理すればいいのでしょうか。

その答えは、私も知りたいところですが、一つ言えるのは、こうした「気になったこと」は、時間ともに変化する、ということです。

・興味が薄まって気にならなくなった
・なんか勝手に解決していた
・別の気になることの下位要素に位置づけられることに気がついた
・他の気になることと絡み合って新しい気になることが生まれた

こういう変化が起こりえるので、その点を考慮した取り扱い方法が必要となるでしょう。

その意味で、アウトライナーは有用な選択肢の一つですが、おそらくそれ以外のツールでも、やり方次第でいろいろ対処はできるように思います。

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倉下忠憲

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倉下忠憲

倉下忠憲のWRM 「読む・書く・考えるの探求」

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