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MP連載第三十回:気がかりフリーの仕事術

MPは減るものです。

意識が活動し、注意が動いている間は、MPは使われていくのでしょう。ただ、それはあらゆる人がそうなのでしょうし、また避けられることでもないので、あまりそのことに注意を払っても仕方がありません。「MPは時間と共に減るものだ」と受け入れて、介入できる別の部分に目を向ける必要があります。

ポイントは、通常状態で減少していく──基礎代謝ならぬ基礎MP消費──以外のMP消費です。これが大きいと、ポケットに穴が空いているような状態になります。ガバガバとMPが溢れ落ちていきます。

穴を塞ぎたいところです。

何を解放するのか?

あくまで経験則でしかありませんが、「気になること」があると、うまく集中できません。作業に身が入らない、作業中もずっとそのことが頭の片隅に居座っている。そういう感覚があります。パソコンの常駐アプリケーションのように、何か別のことを処理しているプロセスが常に働いている気がします。おそらくそこでもMPは使われています。

単純に考えて、同じAという作業を遂行するのでも、Aだけに取り組むのと、別のBのことを気にしながら取り組むのとでは、MP効率性はきっと違ってくるでしょう。

よって、Aの作業をするときにはAのことだけを考えられる環境を作りたいところです。

この話は、基本的にデビッド・アレンの『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』で語られていることと同じではあるのですが、問題は上記のようなことにとり組んだところで、ストレスから解放されることはない、という点です。やるべきことを適切に処理したところで、ストレスは発生します。

上記のような環境設定で得られるのは、「一つの作業に取り組むときには、その作業以外のことは一時的に注意から外せる」ということだけであって、それはあまりストレスとは関係ありません。GTDを行っていても、嫌な上司は嫌な上司でありつづけますし、リストラの恐怖がなくなるわけでもありません。

もちろん作業周りに関するストレスは多少軽減されるでしょうが、それを「ストレスフリー」とまで称するのはさすがに過剰というものでしょう。せいぜい「気がかりフリー」なくらいです。記憶しておかなければならないという心配にDisturbされなくなる、というだけの話です。

リリース

とは言え、その効果は絶大です。

ストレスから完全解放されなくても、せいぜい気がかりから解放される効果しかなくても、それを実践する意義は強くあります。

お金の使い方で「ラテマネーを減らそう」という節約方法がありますが、あれに近いかもしれません。小さいMP消費を抑え込んでいくことで余裕を作り出す。そういうイメージです。タスクリストの存在は、そこに大きく関係します。

一日のタスクリストを作り、そこに「その日やるべきこと」を書き込むと、単純にそれらを記憶しておかなければならないというプレッシャーからは解放されます。でもって、実際に作業忘れなどのポカミスも減るでしょう。

しかし、それだけではありません。作業中に何か「気がかり」なことが発生しても、「タスクリストに書き込んでおけば、2時間後の自分に引き継げるから大丈夫」と思えるので、気がかりさをreleaseできるのです。

別にタスクリストに限られる話ではありません。メモのinboxでも、財布に入れたレシートでも、いつかやりたいことリストでも同じです。「気がかり」さを後で処理する仕組みがあり、それを自分が実行するという確信が持てることで、その時点の気がかりさからは解放されます。

この点が、タスクリストがうまく機能する理由であり、タスクリストがうまく機能しない理由でもあります。

サイクル・システム

比喩的に言えば、独楽のようなものです。回っている間だけ直立できるのです。

まったくのゼロベースでタスクリストを作った場合は、「記憶しなければならない」というプレッシャーからの解放で、精神的なメリットが享受できるでしょう。これはこれで素晴らしいことです。また、これまで脳内だけで処理していたことがらを、記録を使って処理するようになるので、MP効率もおそらく上昇します。

しかし、そうしたタスクリストが肥大化してくる話が変わります。

リストに項目が溢れすぎると、自分がそこから適切なタスクを見つけられる感覚が減少します。というか、あまり見たくない気持ちが高まるかもしれません。そうなると、「ここに書いておけば、後の自分が処理してくれる」という確信が薄れ始めます。するとどうなるか。気がかりさをリリースできなくなるのです。

自分がタスクリストを使うことで、タスクリストを使うであろう自分について確信が持て、そのことがタスクリストの使用を促進する。これがうまく循環している間は、気がかりさを抱えておく必要はなくなります。そして、そのどれかが途絶えると、システムは全体から崩壊し始めます。

さいごに

タスクリストを作るのは簡単ですし、使い始めたときは大きな効果が得られます。

しかし、タスクリストを使い続けていくと、別種の問題が生じ始めます。多くの人がタスク管理で躓くのもこの点でしょう。

とは言え、気がかりさをリリースできる仕組みを持つことは、やはりMP節約において重要です。でもって、そのためには「信頼できる」仕組みを構築するしかありません。こればかりはツールがどれだけ優秀であってもダメなのです。自分の行動についての確信がなければ、どうしようもありません。

だからやはり最初はタスクリスト作りから始めるしかないのでしょう。

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