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GTDと未来/比較ツール論 Evernote編その2/これからのブログの形/10分間のコンサルティング

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2019/02/11 第435号


はじめに


はじめましての方、はじめまして。 毎度おなじみの方、ありがとうございます。

すいません。

私の適当な予想では、二月中ごろまでに完全校了→三月末に発売、というスケジュールだったのですが、編集者さんが頑張ってくださり、二月末に発売のはこびとなりました。

勝手な予想で「あ〜、発売までまだ時間あるな〜、販促の準備をゆるゆる進めないと〜」と暢気に構えていたので、ぜんぜん準備ができておりません。

とりあえずは、ブログで内容の紹介を、このメルマガで執筆の裏話を書いていきたいと思いますが、とりあえずは来週からになります。

それに、何かしらイベントもやりたいと考えている今日この頃です。

〜〜〜ツイートの嬉しさ〜〜〜

上記の本の発売が2月になるという驚愕の事実を知り、Amazonでも予約ページがばっちりできちゃっているので、ブログの公開よりも先に、Twitterでツイートしました。



で、このツイートをほんとうにたくさんの方にリツイート&いいねしていただき、私の記憶の限りで@rashita2アカウント至上最大の反応数になっております。本当に、ありがたいものです。

で、そのおかげかブログで告知する前に「予約しました〜」や「ポチりました〜」というご報告も頂けました。これもありがたいものです。

世知辛い話というか、実務的な話なのですが、こういう予約数がアップすると(たぶん)初回の印刷部数にも影響が出てきますし、刷られる数が多ければ、その分露出も増え、それがさらに売れる可能性をアップさせる、という好循環を呼びます。もちろん、中身がダメならたくさん刷っても売れないでしょうが、それでも潜在的に売れる可能性が高まる、というのは著者としてもありがたいものです。

でもって、電子書籍版がすぐに発売になる見込みは、曇りの日に遠くから富士山の山頂を見届ける、というくらいには可能性が低そうなので、紙の本の在庫数がそのまま機会損失にダイレクトに関わってきます(小売業的職業病)。

というわけで、発売前に反応していただけるのは、著者としても(たぶん出版社としても)非常にありがたいものです。

しかし、逆に言うと、ネットやソーシャルでの告知機能を持たない著者や出版社は、現代では結構(というかかなり)大変だろうなという気がします。なかなか厳しい世界です。

〜〜〜電子書籍ビュアーに求めるもの〜〜〜

現状、電子書籍ストアは、メインがKindleで、ライトノベル・漫画がBookWalkerの担当になっています。

しかし、微妙に不満もあるので、他のストアもいろいろ試しているのですが、「これ!」というものがありません。

求める機能はそう多くはありません。もちろん、本を買うときのシステムとか本棚のUIとか、細かい点はいろいろ気になります。が、それらは読書の外側の行為であり、我慢しようと思えばいくらでも我慢がきくものです。

ただ、「自分がつけたハイライトを一覧する」「読んでいる本の一節をツイートする」という機能は、我慢がききません。前者がないと、読書メモの管理において非常に不便ですし、後者は「ああ、これ、おもしろい、ツイートしたい」という欲求に多大な不満を発生させます。

まあ、後者は著作権的なものもあるでしょうし、そもそも私がTwiter中毒すぎるせいもあるのですが、それでもせっかく一読者が、その本の面白さを世の中に広めようとしているのに、それが阻害されるのはどうにも納得できません。Kindleですら、昔は普通にツイートできたのですが、最近は直接文言をツイートできなくなっています。困ったものです。

それでも、Webブラウザから(これが重要です)、自分のハイライトとメモに一括アクセスできるので、やっぱり現状はKindleがメインです。こればかりはどうしようもありません。

〜〜〜インクリメンタルな環境改善〜〜〜

結城浩先生のメルマガで「インクリメンタルな環境改善」が紹介されていました。



「インクリメンタルな環境改善」とは、自分の(仕事)環境を少しずつ改善していこう、という試みで、Twitterでもその「成果」をのぞき見ることができます。

https://twitter.com/search?q=%23インクリメンタルな環境改善&src=typd

最初に上の記事を読んだときは、原稿の追い込み作業の真っ最中だったのでスルーしていましたが、最近ようやく原稿から手が離れつつあるので、少しずつ自分でもインクリメンタルな環境改善を進めています。

まず、Scrapboxで自動作成しているデイリータスクリストのテンプレートを改造しました。これまではどの曜日でも絶対に行う基本的な作業だけを雛形にしていたのですが、そこに条件分岐を入れて、それぞれの曜日のタスクを設定できるようにしてあります。

◇Scrapboxのデイリータスクリストを曜日別で作り分ける - 倉下忠憲の発想工房
https://scrapbox.io/rashitamemo/Scrapbox%E3%81%AE%E3%83%87%E3%82%A4%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%92%E6%9B%9C%E6%97%A5%E5%88%A5%E3%81%A7%E4%BD%9C%E3%82%8A%E5%88%86%E3%81%91%E3%82%8B

また、Scrapboxで「一週間分」のページを、同じくテンプレートで作成しているのですが、土曜日にそのテンプレートを使うと、次週ではなく今週のリストが作成されてしまう不具合を発見して、それも改善しました。

◇sprintテンプレートの実装を見直す - 倉下忠憲の発想工房
https://scrapbox.io/rashitamemo/sprint%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%AE%E5%AE%9F%E8%A3%85%E3%82%92%E8%A6%8B%E7%9B%B4%E3%81%99

どちらも小さな改修ですが、少なくともゼロではない効能が発生しています。それを積み重ねることは、きっと大切なことでしょう。

で、この「インクリメンタルな環境改善」の肝も、そこにあります。「大きな改修」ではなく「小さな改修」をコツコツ積み重ねていくこと。大きな改修は、華々しいですし、効果もきっと高いでしょう。しかし、その分取りかかるための心理的コストが高まり、また実行するための時間の確保も難しくなります。

さらに、そうした改修は完成までにフィードバックがやってこないので、途中で挫折する可能性大です。もちろん、やり遂げられれば大きな成果を得られますが、どちらかと言えばハイリスク・ハイリターンなやり方と言えるでしょう。

「小さな改修」の場合は、そこまで大げさにはなりませんし、ちょっとやってみてダメだったらすぐに戻せます。人間にはサンクコストを重視してしまうバイアスがあるので、大がかりに作ったものは、たとえ不具合があってもなかなか捨てられないものなのです。

以上のようなことを加味してみると、小さな改修をじわじわと進めるのが一番実際的であることがわかります。

でもって、そういう改善を、日々の心がけ(あるいは日課)にしていると、自分の環境や意識に注意が向くようになります。これも結構大切です。

〜〜〜異世界もの〜〜〜

あるとき思い立って、「そうだ、異世界転生ものの漫画を読み漁ろう」と決意しました。なぜそんなことを思い立ったのかは今ではもう思い出せませんが、人気どころ・名前を聞いたことがある作品を片っ端から読みました。

その「成果」(というかなんというか)は、最近のHonkureで公開されております。

◇Honkure – 本を読めば日が暮れる、本を書けば日が昇る。
http://honkure.net/rbook/

で、転生ものは、よく「なろう系」などと揶揄されて、チート要素やテンプレばっかりじゃん、という先入観があったわけですが、実際に読んでみると、その先入観は半分正しく、半分間違っていることがわかりました。

まず、正しかったことは、やはりテンプレートが多いことです。定番の話運びというのがやっぱりあります。

しかし、よくよく考えてみれば、ジャンルとはテンプレートで成り立っています。探偵が出てくるミステリー、武士が出てくる時代劇などは、ある種の物語の枠組みを持っていて、そこから逸脱することはほとんどありません。だからといって、それらの作品が面白くない/劣っている、と評価することはまずないでしょう。作品の面白さと、テンプレートの利用は、あまり関係がないわけです。

で、その点が、先入観が間違っていたこととも関係します。

いろいろな作品を読んでみて、テンプレートをメタ的に使っているものもあれば、どう考えても完全にテンプレートなのに、それでも異様な面白さを持つものもあります。そうした作品は、テンプレートを土台にして、その上に独自の世界を構築しているのが面白さの秘訣なのでしょう。

また、一口にチートや異世界転生と言っても、その内実はかなり多様だ、ということもわかりました。異能が開花する場合もあれば、もともと有する力が評価軸が異なる別世界に移動したことでチート化する、というものもあります。デウス・エクス・マキナ的なものが擬人化されている場合もあれば、そうでない場合もあります。

あまりよく知らない状況だと、「テンプレートだろう」と一括りにしてしまうわけですが、じっくり観察してみると、そこに差異が現れて、その差異によってどんな作品世界が立ち上がっているのかを考えることもできるようになります。これはこれで楽しいものです。

というわけで、別に異世界ものを書くつもりはないのですが、一度その設定の傾向というのを分析してみようかと思っています。

〜〜〜書評YouTuber〜〜〜

今年の目標の一つに「本を紹介する動画を作ろう」があるので、参考になりそうな情報に目を光らせています(ややおおげさ)。

で、「文学YouTuberベルさん」を発見しました。

◇文学YouTuberベル【ベルりんの壁】 - YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCL4QAojeGy6CJ9R2PwmlmJQ

チャンネル登録数が5万を超えているので、たぶん有名な方なのでしょう。アップされている動画数も多く、しかも本の紹介だけでなく、本にまつわる話が多彩に展開されています。実に面白そうです。

ただ、この方向性を「お手本」にしたいかというと若干微妙なところ。私からするとややポップすぎるというか、元気すぎる印象です。自分がやるなら、もう少し落ち着いた(というか気の抜けた)感じにしたいところです。

ともあれ、こうやって「この方向は良いな」「この方向ではないな」を確認できるので、他の人のコンテンツをチェックしまくるのはやっぱり有効です。

〜〜〜今週見つけた本〜〜〜

今週見つけた本を四冊紹介します。

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 21世紀の終わりなき倦怠感をいかにして打破しようというのか
――イギリスの気鋭の現代思想家が『資本主義リアリズム』に次いで著した文化論
そして、加速主義にたいする応答
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 本書は「富のあり方」をテーマに豊かさというものの再考を試みる。なぜなら『資本論』は何より「富」に対する透徹した眼差しに貫かれた書物だからである。
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 第二次世界大戦で戦火を交えた英国と日本。その不幸な出来事の結果として英国の近代日本語コレクションは戦後急速に成長し、英国図書館、ロンドン大学東洋アフリカ学院図書館、ケンブリッジ大学図書館そしてオックスフォード大学ボードリアン日本研究図書館が所蔵する四大日本語コレクションが築かれることとなる。敵国語としての日本語教育や敵国財産として接収された日本語書籍によって支えられた日本研究の発展を、戦争とのかかわりから読み解く。
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 ハーバード大学の超人気教授にして『ニューズウィーク』中国版が選ぶ「最も影響力のある外国人」、マイケル・サンデル。彼の共同体主義は、儒教を始めとする伝統的な中国哲学とどのように共鳴するのか? 気鋭の研究者9人の論考にサンデルが応答する、正義論の新展開
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〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のウォーミングアップ代わりにでも考えてみてください。

Q. 自分の仕事環境の改善は、どういうペースで進めていますか。少しずつ/一気に/ずっと変わらない?

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

今週も「考える」コンテンツをお楽しみくださいませ。

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2019/02/11 第435号の目次
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○「GTDと未来」 #BizArts3rd
 GTDが持つ指向性について考えます。

○「比較ツール論 Evernote編その2」#比較ツール論
 他のツールとの比較を通して見るEvernote像。

○「これからのブログの形」 #これからのブログの話をしよう
 「読まれる」ブログの新しい形とは。

○「10分間のコンサルティング」 #ショートショート
 ちょっとしたお話(フィクションです)。

※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。

○「GTDと未来」 #BizArts3rd

GTDを支える考え方に、もし矢印を付けるとしたら、それは「今」という点をスタートにし、そこから未来方向にず〜っと伸ばす形になるでしょう。

今→未来

これがGTDの主要な視点です。

GTDでは「今気になっていること」を書き出し、一カ所に集めます。そして、それらを「次にやること」リストや、「いつかやることリスト」に書き留めます。

それらはすべて「今→未来」の視点です。

また、GTDでは、一週間に一度週次レビューを行います。最初の日本語訳では「振り返り」でしたが、最新では「更新」と訳されている行為です。

◇全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術 | デビッド・アレン, 田口 元 | Amazon
https://amzn.to/2GfLG3Z

◇GTD®とは - 日本唯一のGTD公式サイト。GTD Japan
http://gtd-japan.jp/about

これは一見、視点は未来ではなく、過去を向いているように思います。特に「振り返り」という訳であれば、いっそうその感じが強まります。しかし、実際のところ、レビューの視点はやはり未来を向いています。「更新」という訳であれば、その感覚が理解されるでしょう。

たとえば週次レビューで、プロジェクトリストをレビューする場合のことを考えてみましょう。プロジェクトリストに書かれていることは、その日以前の自分が書いたことですが、そのとき確認されるのは、「書かれていること」と「今の自分が気になっていること」の齟齬です。そして、齟齬があれば、「今の自分が気になっていること」の方に合わせて修正します。それが「更新」(私の言い方では「同期」)ということの意味です。

そして、当然のように「今の気分が気になっていること」は、現時点から未来にかけての時間領域の話です。

同様に、GTDが扱う情報は、今から未来向きの情報がほとんどです。

たとえばGTDでは、「ログ」という考え方が出てきません。「次にやること」リストに記載された項目は、それが終了済みになったと同時に用済みになるかのように扱われます。「ログを保存しておいて役立たせましょう」のような話はまったく出てきません。

同じことは、ルーチンにも言えます。

タスクシュートという手法では、ルーチンが重視されていますし、むしろ多くのことをルーチン的に処理していこう、というような思想が垣間見られますが、GTDではまったく出てきません。なぜでしょうか。

それは、GTDは「気になること」を主要に扱うからです。

繰り返されるルーチンとは、基本的に「気にならない」ものです。人間の認知の機構的に、繰り返される行動は慣れを呼び、慣れは注意を押し下げます。だから、気にならなくなってくるのです。その意味で、タスクシュートではどんどん「気にするもの」を減らしていこう、という志向性を持っているのですが、GTDは「気になること」の整理術なので、「気にならないこと」はそもそも扱わないのです。対象領域に入っていない、というべきでしょうか。

また、ルーチンと似ていますが、「チェックリストを活用しよう」という話もあまり出てきません。一応レビューの際の「トリガーリスト」というのは、一種のチェックリストなのですが、その場面以外でチェックリストに強く言及しているところはありません。これもまた、繰り返される行動は「気にならない」からでしょう。

まとめて言えば、「今→未来」のGTDの基本的視点は、過去の情報を有用に利用しようという観点を欠いています。

上記の話は、別段GTDの弱点というわけではありません。むしろ、GTDの基本を理解した上で、ログやチェックリストをシステムに新たに加えて、自分なりのシステムを構築すればいいだけです。

このことを、以下のScrapboxでは「GTD拡張パック」と表現しています。

◇GTD拡張パック - タスク管理のScrapbox
https://scrapbox.io/taskmanagement/GTD%E6%8B%A1%E5%BC%B5%E3%83%91%E3%83%83%E3%82%AF

私はこの考え方に全面的に賛成です。そして、私がノウハウを教条主義的に扱うことが嫌いなのもこの点が関係しています。あまりに教条的になりすぎると、その方法を絶対視してしまい、その人それぞれの創意工夫が出てこなくなるからです。

上記のような「改造」を、邪道だと罵る声もあるかもしれませんが、「邪道ですが、何か?」と切り返せばよいでしょう。私たちは、別にGTDマスターになりたいわけではありません。自分の「気になること」や「行動」を少しでもうまく処理していきたいだけです。その達成には、正道なのか邪道なのかはまったく関係ありません。自分が使って、機能すればそれでいいのです。

GTDは「今→未来」の視点を取ります。そして、そのGTDは「気になること」を整理するための固定的なワークフローを持ちます。

私たちの「気になること」が多様であるのに、そのワークフローがあまりにも固定的過ぎるのではないか、という疑義は前回も書きました。

たとえば、私が「先週の会議で失敗してしまった」ということをグダグダと気にしていたらどうでしょうか。あるいは、過去の恋愛をズルズルと引きずっていていたら?

その「気になること」は、ワークフローではどこに着地するのでしょうか。そして、そうして行われる処理は「まっとう」と言えるのでしょうか。

あるいは、GTDを志す人間は、そんなことをイチイチ気にすることなく、未来だけを向いて進むべきなのでしょうか。

是非とも考えておきたいところです。

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