電子書籍の広がり #burningthepage

本は死なない』の第二章「電子書籍の起源」より

電子書籍のようなデジタル・メディアの分野で成果を上げるためには、焦らず長期的なビジョンを持つことが必要不可欠だったのだ。

日本では何度も「電子書籍元年」が叫ばれてきました。おそらくそういう発想自体が何かしら日本的なものなのでしょう。

実際の所、本当の意味での電子書籍元年は、未来から過去を振り返ることでしか確定できないはずです。それはそれとして、2014年という年は、何か一段階ギアが入った年であったとは言えそうな気がします。

とびっきり使い勝手の良い端末がすぐさまできあがるわけもありません。なにせ、そうした端末を作るためには大量のユーザーからのフィードバックが必要だからです。

ソフトウェアと違って、ハードウェアのフィードバックサイクルを回すのは時間がかかるので、どうしても一定の基準に達するためには時間がかかります。初めの段階で短期的な費用対効果を判断していては、いつまでたっても良い端末には辿りつかないでしょう。

また、コンテンツの拡充にも時間がかかります。ただ頭数を揃える施策には意味なんてありません。読者が読みたいと思える本を増やす必要があります。

当然、すでにコンテンツを持っている出版社の説得が必要であり、だいたいの業界は慣性で動いているので、路線変更には時間(および忍耐)が必要でしょう。

ちなみにAmazonは、すこしでもコンテンツを増やそうとKDPというサービスも提供しています。

Amazonにとって、本が出版社から発売されているかどうかは関係ありません。Kindleストアに面白い本が並んでいるかどうかが重要なのです。それが顧客にとっての価値になるからなのは言うまでもありません。

このKDPによって、すでにコンテンツを持っている著者は取り得る選択肢が増えました。海外では活用されている事例も多そうです。日本でも、徐々にそうした方向に流れていくでしょう。初版の出版部数が減れば減るほど、その流れは加速していくはずです。

で、どこかに閾値があり、それを越えれば一気に電子書籍の市場が豊かになり、ユーザーもごく当たり前のように電子書籍を買うようになる。そんな世界がやってくるでしょう。

でも、それは今すぐというわけではありません。時間がかかるのです。だから、長期的なビジョンを持ってことにあたる必要があります。

ひとつ言えることは、現時点の状況だけで「電子書籍」の全てを判断しようとすると確実に見誤る、ということです。

ハードウェア的進歩、ソフトウェア的進歩、増えるコンテンツ、幅が広がるコンテンツ、新しい読者層の登場……

未来は確率論的にしか言及できません。完全に予測(というか予言)することなど不可能です。

でも、徐々に徐々に「電子書籍を読む」ということに対するハードルは下がっていくだろうことは、確度の高い流れではあるでしょう。

(続く)

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倉下忠憲

『本は死なない』を読む

ジェイソン・マーコスキーの『本は死なない』の感想を綴っていくマガジン。
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