Weekly R-style Magazine 「読む・書く・考えるの探求」 2018/04/30 第394号

はじめに

はじめましての方、はじめまして。毎度おなじみの方、ありがとうございます。

四月も最終日ということで、人によってはGWに突入されているかもしれません。気分はウキウキですね。

私はと言えば、18歳でコンビニでアルバイトをし始めてから「大型連休」とはまったく無縁の人生を歩んできました。大型どころか、普通の連休すらDream of Dreamです(適当な英語)。だから、GWと聞いても気分は沸き立ちませんし、そもそも「休もう」という気持ちすら湧いてきません。

目下、締切ある原稿やら企画案作成業務があるので、GW中もせっせと仕事になりそうです。でもまあ、悲観的な気分は一切ありません。ありがたいことに。

〜〜〜閃く構成案〜〜〜

本編に少し書いたのですが、今進めている原稿の第三章の構成案で悩んでいました。あらかじめ書こうとしていたことが、議論としての体をなしていないことに気がついたのです。

材料があることにはあるのですが、それらがきちんと流れません。話としてまとまらないのです。

そうしたときは、一から仕切り直すようにしています。何も参照せず、そのテーマについて自分の頭の中にあることを素直に書き出していきます。

その際は、メディア(媒体)を変えるのがコツです。エディタで文章を書いていたのなら、何か別のツールを使ってみる。Keynoteでもよいでしょうし、スプレッドシートでもよいでしょう。私は、紙(コピー用紙)を選択しました。

紙への書き出しは、単語やフレーズレベルでざっと書いていくのがいつものやり方ですが、少し思い立ち、書いたものを切り取ってパズルのピースのように扱えるようにしました。

◇紙で構成を整える - 倉下忠憲のメモ
https://scrapbox.io/rashitamemo/%E7%B4%99%E3%81%A7%E6%A7%8B%E6%88%90%E3%82%92%E6%95%B4%E3%81%88%E3%82%8B

これがすこぶるイイカンジです。ただし、紙を切り取るのはたいへん面倒で、これですべての構成を考えようとは思いません。あくまで詰まったときの緊急手段です。

で、そうやっていろいろ並び替えたら打開策が見つかった……のならよいのですが、そのときは空振りでした。で、諦めてお風呂に入り、本を読んでいたら、イナズマのような閃きが訪れました。「こう書き始めればいける」というコアを思いついたのです。

ちなみに、そのとき読んでいた本は、山鳥重さんの 『「気づく」とはどういうことか』で、内容はまったく関係がありません。本の内容とは無関係に、「ああ、そうだ」と閃いたのです。

発想術の本でもたびたび触れられていることですが、情報を入力し、思考を巡らせた後も、深層意識下ではその情報の検討が進んでいるのでしょう。で、その力を最大に発揮させるためには、一時的にそのことについて考えないことが必要なのだと思います。でないと、意識が勝ちすぎるのでしょう。

〜〜〜執筆におけるモットー〜〜〜

「理想の進捗ではなく、継続できる進捗を」

〜〜〜pixivFANBOXの難しさ〜〜〜

pixivが新しいサービスを開始しました。

◇pixivFANBOX(ファンボックス)
https://www.pixiv.net/fanbox

簡単に言えば、クリエーターに支援できるサービスです。

このメルマガのようにコンテンツの提供とお金の支払いがペアになっているのではなく、単なる支援・単なる応援としてクリエーターにお金を払う、というサービスです。カンパというか、ファンクラブの会費が一番近いのかもしれません。

クリエーター側がプランを複数設定できるので、有料メルマガよりも融通が利きそうですが、それはつまり有料メルマガと同じ発想で扱えるものではないことも示します。言い換えれば「まずコンテンツありき」とは違った考え方が必要になりそうです。

一応以下に私のFANBOXを作ってみましたが、ここにどんなコンテンツを投下していこうかはまだ悩み中です。

https://www.pixiv.net/fanbox/creator/8824137

〜〜〜アイデアがつながる:その1〜〜〜

2018年4月23日に以下のツイートをしました。

「べき」を別の「べき」に置き換えても、根本は変わっていない。
https://twitter.com/rashita2/status/988420295135444992

翌日の、2018年4月24日には以下のツイートをしました。

「怠惰とは、「べき」への反抗である」
https://twitter.com/rashita2/status/988758153473941504

共に、「べき」というキーワードが含まれていますが、そのことを先に考えてツイートしたわけではありません。むしろツイートした後に、「そういえば、昨日もべきに関するツイートをしたな」と思い至りました。

こういうものを、つまり時間的に断絶して思いつく共通のコンテキストを持つものをつなげていくことが、思想の一つの育て方なのではないかと考えています。

〜〜〜インタビューサイト〜〜〜

現在、知的生産の技術を扱う新しいWebサイト作りを検討しているのですが、そこではインタビュー記事も載せていきたいなと考えています。

『かーそる 2017年7月号』には、ブログ「Word Piece」のTak.さんへのインタビュー「シェイクとスイングの向こう側へ」が掲載されていますが、あれが(個人的には)すこぶる面白く、似た傾向のコンテンツを増やせたらきっと楽しいだろうという感触(あるいは予感)があります。

「かーそる」という雑誌はそうしたコンテンツを掲載するに相応しい場だと思いますが、出版期間が長く開くので、タイムリーなコンテンツ投下には向きません。たとえば、誰かの新刊が発売されるタイミングで、その人へのインタビュー記事を載せる、というような調整は難しくあります。

かといって、R-styleというブログにそういうコンテンツを載せるのも何か違う気がします。noteあたりを使ってもいいのですが、いっそ新しいWebサイトに、──長文インタビュー用のスタイルを整えた上で──記事を載せてしまう、というやり方がよいかな、と考え中です。

というように、構想案は膨らんでいますが、目下原稿にかかりっきりなので実際の作業は置き去りです……。

〜〜アイデアがつながる:その2〜〜〜

何かを思いつくとき、だいたいは記述的に思いつくのですが、それは分岐的な形をしています。以下をご覧ください。

◇ノイズコントロール - 倉下忠憲のメモ
https://scrapbox.io/rashitamemo/%E3%83%8E%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB

引用もしておきましょう。

 >>
 情報摂取においてノイズを少なくすることは大切だが、ノイズを無くしすぎないようにすることも大切。
 文脈が閉じてしまう可能性がある。→[フィルターバブルの弊害]。
 
 ゼロから情報環境を構築していく場合であれば、むしろ適度にノイズを入れていくことも必要となる。
 →[タイムライン・ポートフォリオ]

 これは、[注意されなくなったら、間違っていても気がつけない]にも通じる話だし、
 他者を受容するという社会論・公共論にも通じる。
 →[だれが正しさを決定するのか]

 #情報摂取の作法
 <<

何かを思いつくと同時に、「そうだ、これはあれに近いな(or 関係しているな or 通じているな)」というようなことも頭に浮かびます。引用部の→以下の部分が、その同時の思いつきです。

普通にメモを書く場合、このような話の分岐箇所は省略されます。メモ一枚の意味のまとまりが崩れてしまうからです。対策としては、せいぜいタグ付けすることぐらいですが、上記を仮にEvernoteでメモした場合「フィルターバブル」「タイムライン」をつけてそれで終了でしょう。でもって、それがどんな文脈でタグ付けされたのかは時間が経てば想起不能になります。つまり、役に立ちません。

Scrapboxでは、思いついた直接的な形でないにせよ、それに限りなく近い形でメモを残せます。これがたいへん使い勝手がよいというか、使っていて心地よいのです。

上記のようにメモしておけば、それぞれのリンク先のページからこのアイデアメモを辿ることができますし、それはこのアイデアメモが何かしらの形で活用される可能性がアップすることも意味します。

それはつまり、梅棹忠夫さんが『知的生産の技術』で述べられた、「カードをくること」の現代版(あるいはデジタル版)なのではないかと思う今日この頃です。

〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のストレッチがわりにでも考えてみてください。

Q. アイデアが「つながった」経験をお持ちですか。それはどんなシチュエーションでしたか。

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

今週も「考える」コンテンツをお楽しみくださいませ。

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2018/04/30 第394号の目次
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○「GTDの構成素」 #BizArts3rd
 タスク管理を掘り下げていく企画。タスク管理術の腑分けを進めています。

○「進化的意識」 #ショートショート
 読み切りのショートショートです。

○「人生に厚みを与える記録」#ノート道の歩き方
 不定期連載です。ノートについてのディープなお話。

○「読書のバラエティー」 #今週の一冊 #読書術
 Rashitaの本棚から一冊紹介するコーナー。新刊あり古本あり。

○「決めて、書いて、進む」 #物書きエッセイ
 物を書くことや考えることについてのエッセイです。

※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。

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○「GTDの構成素」 #BizArts3rd

今回は、GTDについて。その内側にあるものを腑分けしていきます。

とは言え、すでに有名な手法ですので、細かい解説は省略して、一気に本丸に突撃しましょう。

〜〜〜

GTDには、以下の要素が含まれています。

・情報処理ワークフロー
・情報保管ツールセット
・コンテキストリストによる実行

それぞれ見ていきましょう。

■情報処理ワークフロー

GTDを知っている人が、GTDと聞いてまっさきに思い浮かべるのが「あの」ワークフローでしょう。

inboxに入ってきた情報に対して、「これは何?」を問いかけ、その答えに応じて「しかるべき場所」に振り分ける。その後、定期的なレビューによって、それぞれの「しかるべき場所」に「しかるべきもの」が入っているのかを確かめる。

以上の流れがGTDのコアです。これを外してしまうと、もはやGTDとは呼べません。

たとえば、このワークフローから、「レビュー」の工程を取り除いたとしましょう。一見それでも、タスク管理自体はうまくまわるように思えます。inboxがあり、そこに入ってきたタスクが自問によって適切なリストに振り分けられるのですから、作業自体は進められそうです。

しかし、リストが不適切な状態では、GTDの提唱者が一番の肝とする、「水のような心」に至ることができません。なぜなら、リストに不要なものが入っていたり、入っているべきものが入っていないと、ツールに信用がおけず、行動のたびに「これは今することだろうか?」と問うことなるからです。

そのような毎回の判断は、「水のような心」に至るみちを閉ざしてしまいます。長い直線ストレートであっても、50mおきに信号機が置かれていれば、ギアを最速まで持っていくのは難しいでしょう。それと同じようなことです。

GTDの肝は、実行の段階では細かい判断をしないことです。そのためにあらかじめタスクについて考えておくことです。そのプロセスが欠けてしまうと、GTDはGTDではなくなります。このパーツ(情報処理ワークフロー)はどうしても外せません。

■情報保管ツールセット

次に、情報保管のためのツールセットがあります。

GTDは、inboxに入ってきた情報を「しかるべき場所」に移動させるのですから、当然その「しかるべき場所」として機能するものが必要です。最初のinboxもそうですし、それ以外のリストもそうです。

GTDでは、それらのツールのモデルは提示されていますが、具体的にこういうツールを使いなさい、という指示はありません。デジタルでもアナログでも構わないことになっています。だからこそ、GTDは汎用的フレームワークとして機能する(あるいはその可能性がある)わけです。

しかし、最低限これだけは必要だろうというものを列挙すると、以下の5つになるでしょう。

・inbox
・タイプ別リスト
・日付型ファイル
・プロジェクトノート
・ゴミ箱

inboxは最低一つ必要で、できるだけ数が少ない方が望ましいでしょう。

タイプ別リストは箇条書きリストが好ましいですが、それに縛られるものではありません。ただ、一種類のリストだけで済むことはまずないので、複数のリストが管理できるツールが望ましいです。

日付型管理ファイルは、上記で対応できない情報を扱うためのもので、一般的にはカレンダーを指します。43フォルダや、365日フォルダもその代替となるでしょう。365日分の項目を持つリストを作れば、「タイプ別リスト」に吸収させることもできます。

プロジェクトノートは、おそらくこの中で一番難しいものです。GTDの文献を漁っていても、具体的なイメージは湧いてきません。が、とりあえずノート的なツールであれば、用は足りるでしょう。

プロジェクトノートに書くべき(最低限の)ことは、そのプロジェクトを達成するために必要な複数の行動と、必要な資料やアイデアです。それらをまとめて扱えるツールならなんだって構いません。

もし、プロジェクトノートに記載された情報をあちらこちらに動かすならば、デジタルツールを選択する必要がありますが、GTDが想定するプロジェクトノートではそのようなことはあまり起こりません。せいぜい、行動やメモや資料が後から追加されるくらいです。その程度の編集であれば、アナログノートでも問題ないでしょう。

最後のゴミ箱は、アナログなら「普段の作業場所から手が届くところにゴミ箱を置いておく」という話になりますし、デジタルならば「不要な情報を削除してまわるプロセス」という話になります。どちらにせよ、GTDの情報保管ツールセットに保存される情報は、時間と共に増えていき、しかもそれらはレビューすることが宿命付けられていますので、定期的なゴミ捨ては必須です。

・コンテキストリストによる実行

GTDを構成するパーツの最後の一つが、コンテキストリストによる実行です。

GTDでは、今どの行動を実行するかを「一日のタスクリスト」ではなく、コンテキストリストによって決定します。もう少し言えば、「こういう状況のときは、この行動を取る」というリストを作っておき、その状況になったらそのリストから選んで実行するわけです。

一応、「一日のタスクリスト」を、「今日やること」というコンテキストによって集めたリストだと捉えれば、GTDと「一日のタスクリスト」は融合できますが、これはすこし「改造」に近いと言えるでしょう。

なぜなら、「一日のタスクリスト」方式は、コンテキストリストからの選択方式に比べると、融通さが欠けているからです。

たとえば、私が家で作業をしていたとします。「一日のタスクリスト」の上から順番に取りかかっていきます。そのとき、家にいる妻から「ちょっと牛乳買ってきて」と頼まれたとしましょう。「一日のタスクリスト」にはそのような行動の記載はありませんが、もちろん文句など一つもなく買い物に出かけます。

もしGTDであれば、その際「外出するときにやること」というリストを取り出して、他にできるタスクがないかを探すことでしょう。あるいは「スーパーで買いたい物」リストを見るかもしれません。しかし、「一日のタスクリスト」には、そうした情報は一切掲載されていないわけです。つまり、想定外の行動に対する備えが(基本的には)ありません。

上記のような場合に限らず、状況を自分でコントロールするのではなく、むしろやってくる状況に合わせて作業せざるをえない場合は、コンテキストリストによる実行が効果的です。逆に、私のように「一日家で作業する」のような同じコンテキストがずっと続く(≒続けられる)場合は、「一日のタスクリスト」を作成した方が仕事がうまく回る可能性があります。

■さいごに

今回は、GTDを構成する三つのパーツについて考えてみました。もちろん細かいパーツは他にもあるでしょうが、この三つを備えれば「GTD」のフレームワークと呼べそうです。

では、次回は「ポモドーロテクニック」について見ていきましょう。

(次回に続く)

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