MP戦略第十二回:MPの差に気をつける

前回佐々木さんがおっしゃったように、「MPを底上げする」のは簡単ではありません。しかし、不可能ではないでしょう。

プロ棋士の方たちは、一時間以上も同じ盤面について検討されることがあるようですが、そういうことができる人とフラフラ生きている私の認知資源が同量だということはさすがにないでしょう。

体力と同じで、脳における体力も、強い負荷と休息の繰り返しで向上することが想像できます。言い換えれば、意識的にそうしたことを行えば、MPを底上げできる可能性があるわけです。

いかにもマッチョ志向な指針ではありますが、戦略としてはそうした指針も引き出しに入れておきたいところです。

少し脱線になりますが、この体力のメタファーに関して二点だけ補足しておきます。一つはMPの維持で、もう一つはMP格差です。

まずMPの維持について。

私たちが何かについて判断を下すとき、そこではMPが使われます。だったら、判断を徹底的に避ければMPが節約できそうですね。それを拡張して、あらゆる判断を日常から取っ払ったらどうなるでしょうか。

たぶん楽は楽でしょう。でも、その楽さは、おそらく無重力空間の楽さと同じです。つまり、その状態に長く居続けると筋力が低下します。

メタファーを引き戻せば、判断することを徹底的に避けていると、判断する力が向上しないばかりでなく、それが落ち込むことも想定できます。そしてそれは、自律的な感覚を損なうことにつながっていくでしょう。

もちろん、現実的な生活で、あらゆる判断を回避するのはほとんど不可能でしょうが、それでも「判断を徹底的に避けるのは良いことなのか」については少し考えておきたいところです。

もう一つのMP格差は、より現実的な問題です。

AさんとBさんの二人がいるとしましょう。そして、Aさんの方が基礎MPが高いとします。だとすれば、Aさんが簡単にできることが、Bさんにはできない、という状況が発生します。

もしここで、「人間は皆同じである」という認識が背後にあると、AさんはBさんを見て「なんでこんなことができないんだ」といらつくかもしれません。逆にBさんはAさんをみて「自分にもあれができるはずだ」と思い込むかもしれません。どちらにせよ、あまりよい状況ではないでしょう。

これは、基礎MPの差だけに限られる話ではありません。

ある行動に習熟するとMP消費量が減少します。それも急激に減少します。つまり、同じ行動であっても、上級者がそれをやるのと初心者がそれをやるのはMP消費的にまったく違っているのです。よって、上級者が自分の「当たり前」を初心者に教えても、教えられた方はぜんぜん頭がついていきませんし、初心者が上級者を「そのまま」真似してもうまくはいきません。

これは知識の伝達においても、行動の伝達においても、共に言えることです。

よって、上級者はできるだけかみ砕く必要がありますし、初心者は自分にできることから始めなければいけません。この二つがうまく噛み合っていると、たいへんよい伝達が起こりえます。

今回は、少し脇道に逸れてみました。

この連載のMP戦略は、基本的にはセルフコントロールを主軸においていますが、MPの差に気をつけることはコミュニケーションにおいても大切になってくるでしょう。


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倉下忠憲

働く人のMP戦略

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