My Fav.02:ガンダムビルドファイターズ

ガンダムビルドファイターズが終わってしまった。月曜日が寂しくなってしまう。

ひさびさにイノセントに楽しめるアニメであったことは間違いない。

おそろしくガンダムであり、まったくガンダムではない。そんな世界が広がっていたように思う。あと、委員長がカワイイ。

まっすぐなストーリー

はじめ番組の発表を聞いたとき、「おいおいそんなにプラモ売らないとヤバいのかよ」と思ってしまった。商業主義にあてられた物の見方である。

実際、このアニメでガンプラの売れ行きは伸びたに違いない。たとえガンプラバトルができなくても、プラモを組み立てるのが何だか楽しそうに思えてくるアニメだ。そういう意味では、販促アニメである。が、それだけではない。

何かに情熱を捧げる人たちの「熱さ」が描写されているし、少年向けのアニメとしても安心感あるストーリー展開だった。ひねったところはまるでない。オチまでの流れが、かなり早い段階で読めてしまう。でも、最後まで見てしまうのだ。

それはやはりバトルの描写が本物だったからだろう。

スタービルドストライクの新武装(相手のビームを吸収してなんやかんや)も、(若干チートではあるが)テンションが上がってしまう。戦争ではないので、ややこしいことを考える必要はない。正面からぶつかって、勝つ。それがその世界での至高であり矜持でもあるのだ。

あと、構成も実に正々堂々としていた。バトルの途中で「次回に続く!」なんてことにはならず、毎回きちんと決着がつくのだ。それでいて、きちんと引きはある。実に素晴らしい。

ガンダムではない

この作品が、ガンダムではないことは説明の必要がないだろう。だって、戦争をしてない。主人公が、たまたま近くにあったMSに乗り込んだりとか、最新鋭のMSが敵軍に強奪されたりとかもしていない。ニュータイプが利用され、忌避され、挙げ句の果てに憎悪を全身で受け止めたりもしない。

舞台は、平和極まりない日本である。

その意味で、本作はまったくガンダムではない。同じ文脈で、機動武闘伝Gガンダムも私はガンダムではないと考えている。あれはガンダム風の何かである。ただし、面白いことは面白い。スパロボでも、ゴッドガンダムが出てくるとついつい育ててしまう。

ともあれ、本作は「戦争」を日本的に切り取ったものではない。熱血バトルプラモデルアニメだ。だから、一連のテレビシリーズのガンダムとは、かなり違った場所にポジショニングを持っている。

ガンダムである

さりとて、これはまぎれもなくガンダムである。

過去のシリーズからさまざまな機体が登場するし、ファン泣かせのセリフや小さい描写も頻繁に登場する。つまり、私たちが日常生活で口にする「ガンダム」の世界が満ち溢れている。

最近のアニメでは、まったくもって「おっさんキャラ」が活躍しない。というか、そもそも登場しないことだって多い。私がぱっと思い出せるところでは、「PSYCHO-PASS」ぐらいだ。

しかし、本作ではおっさんが__というかラルさんが__ちゃんと活躍する。そういうおっさん臭も、やっぱり「ガンダム」だ。それがないと、なんだか物足りない。

「ガンダム」要素が満ち溢れた部分については、これまでのガンダムファンをチャームするだろう。そして、熱血アニメ要素は、現代の子どもたちをチャームする。つまり、本作は二重的な要素を持つアニメだ。こういう形は、長年続いてきたガンダムシリーズだからこそ実現できたのだろう。

新しい地点

長く続いてきたガンダムシリーズにおいて、新作を作り出すのは簡単ではない。これまでもいろいろなアプローチが試されてきた。

ガンダムSEEDは、現代の若者向けに描かれた初代ガンダムである(と一応書いておく。異論は認める)。

ターンAは、ガンダム世界の終焉であり、全てのガンダムの歴史の終わりだ。

ユニコーンガンダムは、初代を楽しんだ人向けの現代版ガンダムと言って良い。

個人的には、どれも好きである。世界観はターンAが圧倒的だが、人間描写はユニコーンが、ガンダムのチートっぽさはSEEDが突出している。それぞれ好みはあろう。

ガンダムビルドファイターズは、まったく新しい石を投げた。ただし、その石は「戦争」を避けて通っている。それがいいことなのかどうかはわからない。

わけのわからないままに戦争に巻き込まれていき、いつの間にか主体的に戦争に関わらざるを得なくなっていく少年たち。戦争という状況が持つ力の強さを表現した世界。勝つことが正義と、即座に断じれるならどれほど楽だっただろうか。戦争なんて知りませんと言っていれば、誰も死なないですむ世界であればどれだけ心地よかっただろうか。でも、現実はそうではない。

しかしながら、今の日本の若者には、そういう描写は届きにくいのかもしれない。それこそ、良いことなのか悪いことなのかはわからないのだが。

さいごに

ほんとうに難しいことをまったく考えずに、カッコイイロボットが活躍するのを楽しめるアニメであった。私は、そういうのも好きである。

でも、これはガンダムではない。良い意味でもなく、悪い意味でもなく、フラットにそう言えると思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?