就職氷河期世代の就職支援ってどうなの?

正規雇用で半年定着したら、研修業者に成功報酬型の助成金を出す。支援対象は100万人規模で、経済や社会保障の支え手になってもらう狙いがある。

なんだろうか。この「ゼネコンにお金を流せば、道路が作られて、雇用が生まれて、社会が豊かになろう」的価値感の施策は。あまりにツッコミどころが多すぎる。

たとえば、私が研修業者なら、適当な会社を作って、そこでどんどん採用する。そして、半年雇用したら、辞めたくてしかたない状況に労働者を置く。それで成功報酬だけ頂く。あるいは、計画倒産させてもいい。

これは極端な話だが、ようするに「半年定着する」を指標にしたら、いくらでもハック可能になってしまう。労働者の将来とか、置かれている環境みたいなものはまったく考慮されない実行が生まれてしまうことを阻止できない。しかし、人間は道路ではないのである。

また、「経済や社会保障の支え手になってもらう狙い」というのももちろん政府としては必要な狙いなのだろうが、そこでもやっぱり働き手のことは一切無視されている。賃金を稼ぎ、税金さえ納めれば、それで目標が達成されることになる。

現代の労働環境においては、雇用の流動性が低く、また労働者が働きながら新しいスキルを獲得することが難しい状況が問題になっているのではないか。

新卒しか募集されないから、ある年齢を過ぎたら働けない。働けないから、スキルが得られない。あるいは、働ける場所は、人をこき使うことしか考えていないブラック企業に限られるので、やっぱりスキルが得られない。新しい職場に移ることも不可能になる。低い時給でバイトしていたら、専門的なスキルを学ぶためのお金も稼げない。結局、それなりの職につくのは、どんどん難しくなっていく。

メスを入れるべきは、このような全体的な状況であって、目先の数値の改善ではないはずだ。

もっと言えば、その状況が改善されるならば、就職氷河期世代と呼ばれている世代以外にも影響は広がるだろう。その方が、ずっと予算を割く価値があるはずである。

とにもかくにも、人間は道路ではない。単に就業率を整備したら、それで経済が活性化するという風には、単純にはいかないのである。

#COMEMO #NIKKEI

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