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アフェリエイトの終焉/自由に考えることについて自由に考える/難しい本を読む、という体験

Weekly R-style Magazine 「読む・書く・考えるの探求」 2018/08/06 第408号

はじめに

はじめましての方、はじめまして。毎度おなじみの方、ありがとうございます。

先週紹介したイベント情報が、二つ公開されています。

まず一つ目。

こちらは8/10に行われる無料のイベントです。といっても、すでに一般募集の枠は埋まりきっていますが、LT枠かScrapbox/ブログ枠は空いています。つまり、LTをするか、ブログかScrapboxにイベントのレポートを書くのが条件での参加となります。LTは厳しくても、ブログ枠ならなんとかなるかもしれませんので、ご興味あればぜひ。

続いて二つ目。

こちらは有料のイベントというかセミナーです。8/26に行われます。佐々木正悟さん&Tak.さんが集うという稀なイベントですので、Evernote・WorkFlowy・Scrapboxみたいなツールをいっぱい使っている方はチェックしてみてください。この原稿を書いている時点で、残り枠は7人となっております。

上の二つのイベントが終わると、またしばらく東京に行く機会は少なくなると思うので、もし興味と機会とお金があればご検討くださいませ。

〜〜〜一週間遅れの発表〜〜〜

もう一つ、先週号の「はじめに」で思わせぶりに31日に何か発表できるかも〜と書いておりましたが、諸般の都合で一週間ズレることになりました。

つまり、このメルマガが配信されている月曜日あたりにブログで告知できるかと思います。乞うご期待。

〜〜〜記述し反応する知〜〜〜

先週号で、Googleフォームの利用法について書いたところ、Twitterでご指摘をいただきました。

実際に試してみたら、ものすごく簡単に設定できました。「IFTTTなんていらんかったんや……」みたいなことをつぶやきたくなるのですが、IFTTTを使えば、メール以外の場所(たとえばEvernoteとかTwitterとか)に通知を飛ばせるので利用方法はあると思って心を慰めておきます。

おそらく、通知の必要性を感じた段階で、検索すれば上記の設定方法は簡単に見つかったでしょう。しかし、「何かしら通知が欲しいな」と思った瞬間に「そうだIFTTTがあるじゃないか」と思いついてしまったのです。こういう「発見」としてしまうと、ついつい実践したくなるのが人間の性ではないでしょうか(異論は認めます)。

結果的に、必要ないレシピを作ってしまったということで、車輪の再発明に似たところはありますが、全体的に楽しかったのでよしとしましょう。

で、ここからが本題なのですが、私が「自分の知識が誤っていること」を理解できたのは、自分が理解していることを記述して、それを他の人に見せたことがきっかけです。それを記述してシェアしない限りは、(あるいは鷹野さんが高度なエスパーでない限りは)、私は誤った知識をそれが誤っていると知らずに保有し続けていたでしょう。

このことは『Scrapbox情報整理術』で、知識の問題として取り上げています。

書いて外に出すこと、パブリックとまではいかなくても、グループに共有すること。そのことによって、初めて自分の知識のブラッシュアップは進んでいきます。

他にも、書いて外に出すことにはいろいろな「効能」があります。もし、お時間があれば、以下のツイートのスレッドを追ってみてください。

どれも「書いて出した」ことが一つのきっかけとなって、展開が進んでいます。出さなければ決して得られなかった情報が得られています。

もちろん、ここで大切なのは、「書いて出す」こと以上に他者の存在です。他の人が誰もいなければ、どれだけ「書いて出して」も何の反応もなければ、展開も起こりようがありません。他の人がいるから、情報を出すことには面白さが生まれます。

ひとりよがりになることの怖さは、この辺にもありそうですね。

〜〜〜書店の売上げ〜〜〜

出版業界の売上げデータを紹介した記事を見かけました。

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 紙の出版物推定販売金額は6702億円(同8.0%減)で、書籍が3810億円(同3.6%減)、雑誌が2892億円(同13.1%減)。雑誌では月刊誌が2341億円(同13.6%減)、週刊誌が550億円(同10.7%減)。月刊誌のうち、月刊定期誌が約11%減、ムックが約16%減、コミックスが約15%減と、不定期誌の落ち込みが激しい。
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トータルの8.0%減はかなり大きい数字です。書籍の3.6%減もバカにはできませんが、雑誌の13.1%減など目玉が飛び出る数字です。たとえばコンビニでお弁当の売上げが13.1%減とかになったら、頭を抱えるのを通り越して、お店を閉める検討をし始めるところです。

実際、一日の売上げが50万円のお店(年商18,250万円)があるとして、仮にそれが8.0%減となって、一日46万円(年商16,790万円)になったら、もう閉店待ったなしなレベルです。実際コンビニはそんなことでは閉店しない(≒契約上できない)のですが、オーナーさんの胃はキリキリしていること疑いないでしょう。

一見、一日に40万円以上売上げているのだからまだまだ大丈夫そうに思えますが、コンビニではロイヤリティーがありますし、どんな商売にも経費がかかります。それらをさっぴいた金額が「利益」なわけで、売上げがあっても、利益がないという状況は充分ありえます。

おそらく閉店している書店でも「お客さんがゼロだった」ということはないでしょう。もしかしたら、閉店するお店は皆閑古鳥が泣いている、というイメージを持たれている人もいるかもしれませんが、実際はそういうことは少なく、「経営を維持していくだけの利益が上げられない」から閉店、ということが多いのです。

おそらく、時代が変化しても、本を読む人はいるでしょうし、紙の本にこだわる人も残るでしょう。でも、その規模が一定数を割ってしまえば、店舗は(特にリアルな店舗は)運営できなくなってしまいます。これはもう、どうしようもない資本主義的宿命です。

この売上げ減の風向きが転じることは、きっとないでしょう。特に雑誌は致命的で、五年後に皆が紙の雑誌を再び読むようになる、みたいなビジョンはどう頑張ってもイメージできません。

紙の書籍も、出版部数が落ち込む中で、そもそも書店に配本されない場合が増えてきています。となると、ユーザーはリアル書店ではなく、ネット書店で本を買うようになるでしょう。特に都市部以外ではそのパターンが増えているはずです。

結局のところ、売上げがぐいぐい上がっていく見込みはどこにもありません。

だとすれば、減った売上げで経営できるだけの利益を獲得できるようなビジネスモデルがどうしても必要です。それが開発されない限りは、少ない部数の本でも充分に配本されるような大型書店だけが残るのみになってしまうでしょう。

それは利益率の向上なのかもしれませんし、逆に店舗運営のための経費削減なのかもしれません。ただし、後者が行き着くところは「本の自動販売機」なわけで、それだったら品揃えでネット書店には勝てないのですから、どうにかして前者を進めていくしかないのでしょう。

とりあえず、業界がどう動いていくかはまだわかりませんが、紙の本の平均的な価格は上昇していくのだろうと予想します。そうしないと、持たない状況が迫っていそうです。

〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、脳のウォーミングアップ代わりにでも考えてみてください。

Q. リアル書店とネット書店の利用比率はどれくらいですか?

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

今週は少し長めの記事を含めた三本の連載でお送りします。目次は以下の通り。

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2018/08/06 第408号の目次
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○「アフェリエイトの終焉」 #やがて悲しきインターネット
 インターネットのこれからについて考えています。

○「自由に考えることについて自由に考える」 #リベラルアーツ再考
 現代的な「リベラルアーツ」はいかに語られるべきかを検討する連載です。

○「難しい本を読む、という体験」 #情報摂取の作法
 情報のインプット方法を紹介する企画です。

※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。

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○「アフェリエイトの終焉」 #やがて悲しきインターネット

先日、App Storeのアフィリエイトプログラムから〈アプリケーション〉が外れる旨のメールが送られてきました。実施は2018年10月1日からということで、まだもう少し先ではありますが、宣告は端的かつ、歩み寄る余地を感じさせない雰囲気を帯びています。

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 App Storeのアフィリエイトプログラムにご参加いただきありがとうございます。新しいiOSとmacOSのApp Storeの開始により、Appの見つけやすさが一段と向上しました。これに伴いまして、Appがアフィリエイトプログラムの対象から除外されることになりました。2018年10月1日以降、iOSとMacのAppとApp内コンテンツは、アフィリエイトプログラムの報酬対象外となります。音楽、映画、ブックなど、その他の全てのコンテンツは、引き続きプログラムの対象です。
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単純に言えば、2018年10月1日以降はiOSとMacのアプリをいくらブログで紹介しても、お金が発生することはありません。どれだけバズっても、得られるお金は0円です。

もちろん、完全100%にゼロになるわけではありません。メーカーとタイアップして紹介記事を書いて掲載料を頂く、というようなやり方はあるでしょう。しかし、そうしたことが可能なのは、すでに多数のPVを獲得しているブログ(メディア)だけです。大多数のブログには関係ありません。

「アプリを紹介し、アフィリを得る」

このような構造が、大きく崩れ去ろうとしているわけです。

さて、これは大きな変化と言えると思いますが、この変化はこれからのWebの情報流通をも変えていくでしょうか。

たぶん、答えはNoです。というか、もうその変化は先回りして発生していると言ってよいでしょう。

一時期に比べると、アプリを紹介するブログの数が減ったと感じないでしょうか。実は、紹介料の料率が0%になるという今回の変更以前に、すでに大幅な下降が生じていました。そして、そのあたりから徐々にアプリ紹介の記事も減っていたのです。

言い換えれば、それで稼いでやろうという意気込みでアプリの情報を発信していたところは、料率が下がった段階で採算が見合わなくなり、すでに撤退しています。よって、今回0%になったとしても、大きな変化はないでしょう。すでにもう、その変化は生じてしまっているからです。

そして、この変化はApp Storeのアフィリエイトプログラムだけに留まりません。いろいろなアフィリエイトプログラムで、紹介料が下がっているという話をよく聞きます。Googleアドセンスも審査が入るようになり、YouTubeで広告収入を得るためのハードルも高くなりました。全体的に、「簡単に儲けられる」環境では(だいたいそれはウソだったわけですが)、なくなりつつあるのです。

だから、一時期「ブログでアフィリエイトだ」と騒ぎ立てていた人たちも、今では(自分では)そういうことを言わなくなり、ダイレクトなコンテンツの販売に軸足を移されています。専門家としてのエッジを立たせて、自らの発言をマネタイズできるように戦場を変えつつあります。

そもそも、アフィリエイトというものは、どんなものが売れるのかを探る「目利き」が必要なわけで、業界の動向(あるいは先行き)が読めないようでは、商才は残念と言わざるを得ません。遅れてやってきて、誰かの「今からはアフィリエイトだ」というようなことを信頼して参画してしまう時点で、そのビジネスは諦めた方がよい、と言っても言いすぎではないくらいです。

実際、たとえば今回行われたアフィリエイトプログラム変更の告知の一ヶ月前に、「アプリ紹介ブログで一旗あげてやろう」と着々と準備してきた人がいたとしたら、この告知でちゃぶ台が綺麗さっぱりひっくり返されることになります。でもって、そのことに腹を立てても仕方がありません。ビジネスにおける自分の嗅覚が悪かった、というだけの話なのです。

そうなのです。形態でみれば、AppleなりAmazonなりが発注者で、その広告を貼る各ブロガーなどが受注者というか下請けになるのですが、そのような契約関係はいっさいありません。だから、発注者は好き勝手に環境を変えられます。ブロガーなどが条件に文句を言っても、「じゃあ、使わなければいいじゃないですか」と返されて終了です。そもそも一人二人が逃げていったとしても「代わり」はいくらでもいるのがインターネットです。

少なくとも、(広義の)プラットフォームビジネスでは、力関係はまったく対等になりません。プラットフォーマーが常に絶対的な力を持っています。そして、彼らの意図の変更次第では、ゲームの根幹があっさり変わってしまうことも容易に起こりえます。それだけを収入の柱にしてしまうのは非常に不安定だと言えるでしょう。少なくとも圧倒的な知名度を獲得し、プラットフォームを抜け出てもやっていけるだけの存在にならない限りは、足元は常にグラグラとふらついていることになります。

そうした身も蓋もない事実が、これからのインターネットで広まっていくのか(≒常識化していくのか)、それとも似たようなことが繰り返されるのかはわかりません。しかしもし、繰り返されないとしたら、今からの情報発信は、

・企業とピッタリくっついたプロ仕様の情報発信
・利益をほとんど気にしないアマチュア仕様の情報発信

に二極化していき、その中間あたりにごく薄く、「コンテンツを有料で販売する」層が存在する、という形になっていくのでしょう。

フェイクニュースやらパクリやら、いろいろWebの情報には困った問題はあるのですが、ひとたび儲からなくなれば、そうしたものに注力する人は激減するでしょう。

その焼け野原の上に、新しい情報発信の発展が築き上げられたらな、と願うばかりです。

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