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WorkFlowyとScrapboxその3/モノ・行動・情報の整理/書斎について 作業机編/新刊裏話 文体の選択

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2019/03/18 第440号

はじめに

はじめましての方、はじめまして。 毎度おなじみの方、ありがとうございます。

無事、確定申告が終わりました。

「おれは確定申告を終えたぞ!ジョジョーーッ!!」

くらいに叫び出したいテンションです。

以上。

〜〜〜気になるランキング〜〜〜

ミーハー、というのではないのですが、ちょこちょこ新刊のAmazonページを開いて、ランキングを確認してしまいます。

KDPだとダッシュボードで実売部数がわかるのですが、商業出版では何冊刷られたのかはわかってもどれだけ売れたのかはわかりません。で、元コンビニ店長としては「販売数」とか「動向」みたいなものがかなり気になるわけです(まあ、たいていの著者が気になると思いますが)。

なので、代替的な指標として、Amazonランキングを確認しています。

で、Amazonには「売れ筋ランキング: 本 」という大カテゴリ以外にも、カテゴリごとのランキングというのがあって、それが上位だったら、それはそれで嬉しいわけです。

現状『「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門』は、

・本 > 新書 > 星海社新書
・本 > ビジネス・経済 > 経営学・キャリア・MBA

の二つのカテゴリに入っていて、下の方はバリバリのビジネス書カテゴリで競争が激しいので、上位に(できれば1位に)入れるとしたら、「本 > 新書 > 星海社新書」の方だな〜と、そのページをチェックしてみるものの、トップに位置するのは『20歳の自分に受けさせたい文章講義』。これは難敵です。

そうなるとこのカテゴリでも1位は無理だろうな〜と、ふとAmazonページの左を見てみると、「新書」の一覧が表示されています。で、それが無茶苦茶長いのです。

私が高校生くらいのときは、新書なんてごく限られたレーベルしかなかった記憶がありますが、数えてみると、そのサイドには98個の新書レーベルが並んでいました。Amazonであればこうして一覧されますが、リアル書店であれば、かなり厳しい場所取り競争が行われていることでしょう。

そういうことをいろいろ考えてみると、「本 > 新書 > 星海社新書」ランキングで1位を取れないことなど非常に些細なことに思えてきます。出版されて、読者さんに手にとってもらえている、こと自体が一種の奇跡みたいなものです。

とは言え、それはそれとしてやっぱりランキングも気になるわけですが(本音)。

〜〜〜買い手ハック〜〜〜

私は結構コンビニで買い物をします。毎週火曜日に発売されるお酒の新商品なんかは、楽しみの一つです。

で、たまに「おっ、これはいける」という新商品を見つけると、多少買い方に工夫を入れます。毎日それを飲むのなら、一日に一つ買うのではなく、まとめて数個買ってしまうのです。すると、どうなるか?

ここで発注者の立場になってみます。

コンビニでは、基本的に新商品はカットの方向です。毎週新しい商品が入ってくるので、スペースを空けるために新商品は売りきりの方向なのです。しかしもちろん、すべてをカットするわけではありません。売れ行きが作れそうならば、継続的に発注をかけます。

つまり、発注者はその目利きを常に行っているのです。で、そういうときに、まとめてたくさん売れた商品があるならば?

そう、追加で発注するんですね。すると、私も継続的に変えるようになる。実にwin-winな結果です。

1,1,1,1

と毎日一つだけ売れている商品だと、発注者から見たら実に「良い感じ」でカットできる雰囲気があります。

でも、

1,1,4,0

とかだと、この4がついた日に、「おっ、もうちょっと発注しておくか」みたいな気持ちになります。で、追加で発注されたものも、多少まとめて買うことで、さらなる追加発注が見込めます。

ごくごく単純な話を書くと、「6個」しか発注されなかった商品は絶対に6個以上は売れません。追加で発注してようやくそれよりも多い売上げが発生するのです。そうして「そうか、この商品は人気があるのだな」と確認されます。

逆に言えば、どれほど実力を持つ商品であっても、追加で発注されなければそれは確認されません。で、その趨勢を決するのが、案外に消費者の行動だったりするわけです。

「気に入っている作家(作品)の新刊は、発売直後に書店で買った方がいい」みたいな話がありますが、これは作り手側からの要請として捉えるのではなく、むしろ「書い手ハック」として捉えるのが賢明です。相手の評価軸につけこむやり方です(やや露悪的な表現)。

〜〜〜創造心を刺激する漫画〜〜〜

たまたま何かで知ったのですが、『ブルーピリオド』という漫画がかなり面白いです。

美術大学を目指す学生の話なんですが、こういう説明では何にも伝わらないと思うので、クリエーター心を刺激されたい方は、ぜひ読んでみてください。

〜〜〜新ポッドキャスト〜〜〜

予定は未定ですが、近々ポッドキャストを始めようと思っています。

ひとりでしゃべるのではなく、ゲストさんと話す番組のイメージです。

詳しいことが決まり次第、紹介させていただきますので、ぜひご期待ください。

〜〜〜コピペではなくリンク〜〜〜

他の人と共有しているScrapboxで、誰かが言及している話題に自分も言及するときは結構あります。

その際に、何かしらの言葉を入力しようとして、その言葉のスペル(や漢字表記)が自分の中で曖昧な場合が多々あります。正しいスペルである、という自信がない、というような感覚です。

そういうときは、すでに登場している単語をコピー&ペーストで再利用するのが一般的でしょうし、私もこれまではそうやっていました。

しかし最近だと、すでに登場している単語をブラケット([])で囲み、自分が入力したい部分でブラケットを作ってその中で最初の数文字を入れる、という行動がまっさきに思い浮かぶようになっています。かなりの変化です。

それが一度きりの行動であれば、コピー&ペーストの方が楽ではあるでしょう。しかし、曖昧な記憶は、いつまでたっても曖昧です。だから、そのコピー&ペーストは何度も繰り返されることになります。その点、一度ブラケティングしておけば、それ以降はずっとブラケット+最初の数文字で入力できるようになります。しかも、ページ中にその単語が出ている必要すらありません。

で、そいうことをいちいちシミュレーションしなくても(≒「こうしておけば、後から再利用できるぞ!」みたいなことを考えなくても)、自然とブラケットで囲む動作が発生するようになっているのですが、これはもうScrapbox脳だと言って差し支えないでしょう。

しかも、そうしておくと、ページとページが自動的につながるのです。これはまったくすごいことです。ほんとに。

〜〜〜ややこしいコンボ〜〜〜

最近気がついたことがあります。

私は、楽観的な予想に基づいたかのような行動を取りがちなのですが、それは楽観主義だからではなく、むしろ悲観主義+天の邪鬼のコンボだった、という発見です。

「それは難しいだろう」とか「いやダメだろう」という状況認識があるにもかかわらず、「だからこそ」とか「にもかかわらず」とかの天の邪鬼マインドを発揮して、あたかも楽観主義であるかのような行動を取る。

そういう傾向があるような気がしてきました。気のせいかもしれませんが。

〜〜〜見つけた本〜〜〜

今週見つけた本を四冊紹介します。

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 ネット上で、なぜ、どのように人の心や行動は変わるのか? ネット上で変貌する人間心理を解き明かす SNS、いじめ、炎上、集団力学、プライバシー、ジェンダー、子供とネット、オンラインゲーム…… ますます広がるインターネットの影響と問題対応を説き明かす。
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 >>
 数学は、こんなにも面白く、驚きに満ち、美しいものだったのか。
 本書のテーマは、絵画におけるモナ・リザや、物理学におけるE = mc^2に相当する、数学の傑作を紹介することです。
 共通する特徴は、(1)数学者以外にはあまり知られていないこと、(2)証明の考え方を教えてくれること、(3)高校までの数学で理解できること、(4)驚きの帰結であること、(5)応用に結びつくこと、(6)数学の美しさを味わえること。
 本書を読むことで、読者は、真に数学的な考え方を理解し、意思決定や物事の判断に役立つ基礎的能力を得ることができるでしょう。
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 ヨーロッパの前衛、熱帯の自然、土着の魔術と神話が渾然一体となって蠱惑的な夢を紡ぎだす大地ラテンアメリカ――。ガルシア=マルケス、バルガス=リョサなどはもちろん、アストゥリアス、パスなどの先行世代、アジェンデ、アレナスなどのポスト・ブームの作家まで、20世紀後半に世界的ブームを巻き起こした南米文学の佳篇16篇。
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 20世紀前半のヨーロッパ激動の時代を生き、現代思想に大きな影響を与えた著書を数多く残したドイツの思想家ベンヤミン。ドイツ青年主義、ユダヤ神秘主義、シュルレアリスムなどを根底に持ち、右か左かという出来合いの選択を拒否した先進的でアクチュアルな思想と生涯に、長年フランクフルト学派を研究してきた著者が肉薄。
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〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のストレッチ代わりにでも考えてみてください。

Q.「再利用」する可能性の高い情報を、どのように管理していますか。

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

今週も「考える」コンテンツをお楽しみくださいませ。

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2019/03/18 第440号の目次
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○「WorkFlowyとScrapboxその3」 #比較ツール論
 今回はScrapboxの用途について書いてみます。

○「モノ・行動・情報の整理」 #BizArts3rd #知的生産の技術 #整理の整理
 先週書いた「こんまり流」の話から、さらに一歩進めたお話を。

○「書斎について 作業机編」 #物書きエッセイ #書斎について
 書斎連載の第三回です。

○「新刊裏話 文体の選択」 #物書きエッセイ
 新刊の舞台裏話を。今回は文体と内容についてです。

※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。

○「WorkFlowyとScrapboxその3」 #比較ツール論

前回は、二つのツールの性質の違いから、以下の対象を設定しました。

Scrapboxは、オブジェクト。
WorkFlowyは、フラグメント。

二つとも「小さい情報」を扱う適正を持っていますが、その扱い方には違いがあります。それも、かなりの違いがあります。

では、その違いを踏まえた上で、実際にどう使っていけばいいのか。今回はそれについて考えてみましょう。

まずは、Scrapboxからいきます。

■Scrapboxはオブジェクト管理

Scrapboxは、それ自身が一つのアウトプットです。一つのまとまりであり、一つの独立したものを扱います。

Scrapboxでは、一つひとつのページが独立した情報単位です。また、それが集まるプロジェクト全体も一つの情報単位(あるいは情報系)となります。

つまり、Scrapboxは、二つの意味でアウトプットです。個々のページと、そのページ群によって織りなされるネットワーク。それを作り込んでいくことが、Scrapboxを使うということです。

とは言え、さきほど「独立したもの」と書きましたが、それは「完成したもの」を意味してはいません。むしろ、まったくの逆です。

Scrapboxでは、いつでも書き換え、上書きし、入れ換えることが推奨されています。それは、一つのページが変化することであり、それらのページによって織りなされるネットワークもまた変化する、ということです。

そのようなネットワークの記述、あるいは表現にScrapboxは向いています。

料理レシピ・プログラミングの知識・書籍のコレクション・ゲームの攻略情報……

一般的にwikiが作られるような対象であれば、Scrapboxが扱う対象となりえます。というか、Scrapboxはwikiなので、これは単なるトートロジーかもしれません。

一つひとつの独立した知識があり、その知識が他の知識と関係していて、大きなネットワークを作っている対象。それを扱うのにScrapboxは適正を持ちます。

■料理の「情報」

たとえば、料理レシピを考えてみましょう。

以下は白ごはん.comの「おでんの具の下ごしらえ、おでん用だしのレシピ」からの一部抜粋です。
https://www.sirogohan.com/recipe/odengu/

〜〜〜

調理時間:60分超過

おでんをおいしく作るには、なによりも具材の下ごしらえが一番大切です。定番の大根、こんにゃく、じゃがいも、たこ、厚揚げ、練り物など、下ごしらえを写真つきで詳しく紹介しています。

おでんの具とおでんのだし(つゆ)の材料の目安 (4〜5人分)

卵 … 4〜5個
こんにゃく … 2枚
大根(小) … 1本
厚揚げ … 2枚
じゃがいも … 4〜5個
ゆでたこ … 足4〜5本ほど

まずはおでんに欠かせない大根から。おでんの大根は『だし汁で炊く前に下ゆですることで、しっかりと味がしみ込みやすくなる』ので下ゆでが必要です。

〜〜〜

まず、この情報は「おでんの作り方」という一つの独立した情報になっています。その上で、ここに含まれる情報は、他の情報との関係性を持ちます。

たとえば「大根」を使う料理(レシピ)は他にもあるでしょう。家にたくさん大根があって、その使い方を検討したいときなどは、大根を使う料理が一覧できれば便利なはずです。

それだけではありません。たとえば、大根には「下ゆで」という工程がありますが、これを行うのはおでんだけではありません。よって「大根の下ゆで」というページを作っておき、そこに手順を書いておけば、他の大根を使うレシピのページからその情報を参照できるようになります。
※プログラマの方ならばサブルーチンやライブラリ、という表現を思い浮かべられたことでしょう。

そして、その「大根の下ゆで」という情報は、他の「下ごしらえ」の手順の情報と関係を持っています。Scrapboxであれば、それぞれのページに「#下ごしらえ」をつけ加えておけば、それらが一覧できます。

■活動と情報

「wiki」という言い方をしてしまうと、いかにも「知的生産活動に役立ちます!」という雰囲気が漂ってきますが、別にそれだけには限りません。ほとんどあらゆる活動は情報を使いますし、それらの情報が断絶していることは稀です。一般的には、つながっていることの方が多いでしょう。

たとえば、ゲームの攻略情報であっても、同じ情報が別の場所で何度も参照されたり、似た性質を持つ情報を一覧したいことは多々あります。情報を利用する、という場面では、こうした事例がたくさん出てくるのです。

もちろん、「知的生産活動」においても同種の事例は頻発します。wiki(的なもの)を使うメリットは大きいのです。

総じて言えば、関連性のある知識を後から参照するために整えておく、という用途にScrapboxは向いています。それぞれの知識(情報)は独立していながら、かつ他の知識(情報)と関連性を持っている──そのような対象について、知識を増やしていく・整理していく、という用途にScrapboxはピッタリです。

もちろん、Scrapboxには多様な側面があり、情報を簡単に入力できたり、小さな単位であっても問題ないという性質に着目すれば、このツールは「手軽なクラウドメモ帳」としても利用できますし、「マイクロブログ」として使っていくこともできます。

ただ、ネットワーク性、という点に注目すれば、そこで実現されるのは、知識(情報)が織りなすより大きな知識系の扱いです。それが他のツールにはないScrapboxの特性だとは言えるでしょう。

ちなみに、そのような知識は、その分野の発展が完全に止まっていたり、自分がその分野に関する興味を完璧に失っていない限りは、「増え続ける」ものです。また、変化・改善・修正も行われるものです。だから、Scrapboxではそれが簡易に行えるようになっています。

「いつまでも未完成」というのは、「いつまでも増え続ける」「いつまでもバージョンアップの可能性がある」ことを意味します。

その意味で、Scrapboxで本を作る(≒新しい電子書籍のフォーマットとして使う)、というのは、ある程度Scrapboxっぽさが失われているとは言えるでしょう。
※むろん、そういう使い方も、圧倒的に便利だとは思いますが。

では、WorkFlowyはどうでしょうか。少し長くなってきたので、続きは次回とします。

(つづく)

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