MP連載第十六回:決して貯まることのないMP

前回の話は、いかに人間がMPを使うのかが下手なのか、という点に尽きます。

使うべき場所で使わず、使わなくてよい場所で使ってしまう。むしろ、使うべき場所で使わないから、使わなくてよい場所で使ってしまう。そういうことが傾向的に起こってしまうのです。

つまり、以下です。

・行動を選ぶことにMPが使われず
・行動の中身でMPが大量に使われる

これで、「気がついたら休日の一日が終わっていたパターン」も説明できるでしょう。直感的に、気の向くままに、やることを選んでいけば、MPはどんどん浪費されていきます。そして、気がついたらもう何も手につけられない状態です。

おそらくマンモスを集団で狩っていた時代では、「やること」の決定はたいして重要ではなかったのでしょう。緊急性の高い出来事にすばやく対処することがもっとも重要で、それさえこなせば一日の大半は終わっていたのではないでしょうか。

もしそれが人類の出発点であるならば、人間の脳がさまざまな「やること」を適切に対処できないとしても驚くには当たりません。むしろ、現代という時代が人間に要求しているものが過分なのです。

そうはいっても、タイムマシンに乗って過去に戻ることはできませんし、あまり戻りたいとも思えません。現代で生きていくすべが必要です。

二つの行動の峻別

重要な点は二つあります。

一つは、システム2の支援が必要な行動と、そうでない行動があること

人間の脳はきわめて優れているので直感的判断でも問題ないどころか直感的判断の方が優れている場合も少なくありませんが、すべての対象がそうだとは言えません。いわゆる熟慮が必要なものもあります。その熟慮は、『ファスト&スロー』ではシステム2と呼ばれていて、MPを少なからず消費しますが、そこをけちっていると、全体としてのMP消費が増大してしまう危険があります。

しかもその危険は、直感的には理解されません。言い換えれば、素の状態ではその危険は体感されません。これが状況を固定化します。ねじれた言い方をするならば、どんな行動に熟慮が必要なのかは熟慮を経て判断される、ということです。

これは、システム的なバックアップがない限り抜け出せない状況です。簡単に言えば、「見えないもの」を見える化し、新たな体感を導かない限りずっと同じ状況が続きます。

これから本連載で語られることも、この見える化が大きなポイントになってくるでしょう。

MPは貯められない

もう一つの重要な点は、MPを節約するのはそれを貯金するためではない、ということです。

本連載がMP戦略と銘打って、四つの指針を示したのもこの点あります。いくら節約することが手近な方法であっても、節約しているだけではどうにもなりません。むしろ「節約すること」が目的化されて、肝心な場所で使えなくなるばかりか、「毎日同じことを繰り返さなければならない」といった歪んだ原則を生みかねません。

そもそも、です。お金であれば、節約すれば貯金が増えますが、MPではそうはなりません。MPを一日使わないでおいたら、次の日は二倍の量使える、といったことは起こらないのです。

MPは貯金できませんし、時間の貯金もまた不可能です。可能なのは、行動の蓄積だけです。

少し先回りして必要な行動を実施しておけば、ある時点で必要なMPを減らせるでしょう。これを一般的に段取りと呼ぶわけですが、段取りは業務の効率化だけでなく、MPのうまい使い方としても捉えられます。

結局のところ、MPは行動に変換されてはじめて意味を持ちます。つまりは、貯めることではなく、使うことに意味があります。

さいごに

ごく簡単な言葉でまとめれば、「MPをうまく使うこと」が目指したい状態です。減らせる部分は減らし、使うべき部分や使いたい部分で使う。そうできれば最高です。

もちろん、簡単な話ではありません。心がけ一つで達成できるものでもありません。

だからこそのMP戦略です。

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倉下忠憲

働く人のMP戦略

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