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ZOZO前澤社長の1億円お年玉騒動の背景を想像する

前回と趣向を変えて、時事ネタ(前回の続きは絶対に書きます)。

正月、Twitterを騒がせたZOZO前澤社長の1億円お年玉騒動について思ったこと。

あらゆるメディアでニュースになった1億円お年玉キャンペーン。前澤社長をフォローして、RTした方の中から抽選で100名に100万円をプレゼントするという内容で、結果的にはRT数約530万(世界記録)、フォロワーも500万以上増えたらしい。

なにしろ前代未聞だったからか、「新しい広告の形」「夢がある」「成金の悪趣味」など、賛否様々な意見が行き交った。話題を作った、多くの人たちに知られたという意味では、有意義なキャンペーンだったのかもしれない。

ぼくは前澤社長をフォローしていて、わりとリアルタイムでこのTweetを見たのだが、その時に感じたことが「前澤社長の焦り」だった。

その前段として、昨年のZOZOの状況がある。いい意味でも悪い意味でも、話題を独り占めした感があった。

プライベートブランド

プライベートブランド展開発表、ZOZOスーツの無料配布、サイズ計測によるオーダーアイテムの発売、ZOZOスーツの終了。これがほぼ一年間の出来事とは信じられないほど濃密。内容に関してはいろいろと思うところはあるけれど、数字(中間期実績)から考えてみる。

PBの年間売上目標は200億円で、中間期までの実績が5.4億円(受注は15.4億円)。虎の子のオーダースーツは生産と発送が遅れている上に、品質やサイズに問題ありという声が出ている。その後に発表されたZOZO HEATは低単価アイテムなので、普通に考えて目標は達成されないだろう。残り6ヶ月で185億円を売ったら、奇跡として永遠に語り継がれそう。

つまり、現時点では成功していない印象。

本業(ECモール)

さらになぜPBに力を入れる方針にしたのかを想像してみると、本業(ECモール)の行き詰まりにあるのではないだろうか。こちらも数字(中間期実績)から見てみると、

・売上高537億6400万円(前年同期比25.9%増)
・営業利益100億5300万円(27.3%減)
・経常利益100億700万円(27.7%減)
・純利益62億9100万円(34.1%減)

売上は上がっているものの3割近い減益。クーポンやセール乱発は利益率に大きく影響するだろうし、低単価ブランドの導入は、全体の単価低下につながる。実際、取り扱い商品の平均単価は5年前の5,011円に対して、直近第2四半期では3,655円になっている。

EC開発受託

オンワード離脱に先駆けて流れたビッグニュース。ユナイテッドアローズ(以下UA)が、自社ECサイトの開発をZOZOの子会社アラタナから他社へ切り替えるという(勘違いしている人もいるけど、UAがZOZOから撤退するわけではない)。

個人的な印象として、ZOZOが大きくなったきっかけがUAが出店を決めたことだったと思う。そのUAがEC開発とはいえ、ZOZOと距離を置く。そこにはEC開発市場の競争激化もあるかもしれないが、こうした流れは決してポジティブとはいえず、続いて出てきたのがオンワードホールディングスの販売停止というニュースだった。

新サービス

オンワード販売停止のきっかけはZOZOが始めた新しい有料会員割引サービス「ZOZOARIGATOメンバーシップ」で、会員になれば常時割引されるという内容(上限あり)。このサービスに対してオンワードは
「恒常的な値下げにより、当社のブランド価値が毀損される危険性が高い」
「定価で売る努力をすべきで根本の考え方が折り合わなかった」
と、まっとうなご意見で販売停止を決断(おそらく離脱)。ZOZO依存率が低いショップやブランドにとって、もし自社のショップやECサイトがあったならば、ZOZOで常時割引されるのはプラス面が少ないのは間違いない。オンワードに続くショップやブランドが出てくる可能性は多いにありそう。

こうして見ていくと、本業では収益悪化、第二の柱とすべきPBやEC開発受託も先が見えない。対策はセールやクーポンなどの値引きのみ。そして値引けば値引くほど、自社で集客できる良質なショップやブランド離脱の可能性は大きくなっていく。それを反映してか、株価は低迷。話題の大きさとは裏腹に、ビジネスがうまくいっている印象が感じられない。

だから、前澤社長は「焦っているのでは」と思った次第。長くなりました。。。

なにより、お金をばらまくって、何の創意工夫もなくない?

加えて、このキャンペーンはZOZOに利益をもたらすのか、という点も大きな疑問だった。ZOZOの名前は知れ渡ったと思う。でも、お金バラマキに反応した人たちがZOZOの優良な顧客になりえるのだろうか。結果的には低価格化の流れを早め、ブランド価値毀損にもつながりかねない。求めるべきは量ではなく、質ではないだろうか。

つまり、誰のため、何のためのキャンペーンなのか、というキャンペーンそのものの目的が不明確のように感じた。まあ前澤社長ご自身のキャンペーンであれば納得なのだが。。。(なんとなくホリエモンとLivedoorをイメージした)

思えばZOZOは前澤社長のキャラクターと相まって、「イノベーションを起こしそうな雰囲気」が強みだったような気がする。実際、ZOZOスーツはイノベーションの可能性を感じた。

しかし、ZOZO HEATというヒートテックの二番煎じを販売した時は本気でガックリ。性能云々ではなく、人様の土俵(しかもレッドオーシャン)で勝負するしかないのか。ZOZOは他社がやっていないサービス、商品開発をしてくれそうな雰囲気が期待値につながっていたと思うのだが、その幻想は崩れ去った。

※ヒートテックとの比較広告で話題だったZOZO HEATだけど、自社商品販売全体で比較すると、ユニクロは2兆円、ZOZOは現状5.4億円と、勝負にならない。。。

勘違いして欲しくないのは、これは批判ではない。実はぼくのブランドはスタートシーズンからZOZOに取り扱っていただいていた。取引自体は諸事情で一年で終わってしまったけど、当時のバイヤーの判断力、会社にお伺いした際の洗練された雰囲気など、とてもポジティブな印象だった。

長々と書いたように、今のZOZOは決してポジティブな印象ではない。この状況をどう変えていくのか。なんだかんだ言って、結局は前澤社長に注目してしまうのだ。月旅行とか現金バラマキではなく、本業でポジティブな話題を作って欲しい。

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