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月刊中国メディアビジネス 2018年1月号

 初めまして。中国メディアビジネス日記編集者の松本です(Twitter: @kiki_brero)。中国復旦大学でジャーナリズムとメディアビジネスを学び、帰国後は業務委託を中心に中国ITのリサーチをしています。普段はブログを使って文章を更新しているのですが、実験で月刊マガジンを作ってみることにしました。

 去年1年、急激に注目度が上がった中国のIT。注目されるのは深圳のハードウェアやアリババ、テンセントが多いですが、実は中国のメディアビジネスにこそ、日本のIT企業やメディアが学べることがたくさんあると思っています。更に、ITだけでない中国のいろいろな姿を出版やエンタメ、メディアの側面からも知ってもらえればと思います。

 しばらくは模索状態での運営が続くと思いますが、日本で唯一の「中国メディアビジネスマガジン」、ぜひ継続して読んでいただければ嬉しいです!

 では早速、今月のニュース10です。


ネットメディア編

1.Toutiao規制強化/訴訟

 今月はToutiaoの、新サービスや悪い面など、様々なニュースのニュースが目立った月でした。
 まずは、自社アカウントへの大量処分。去年12月29日に「低俗な情報」を理由に当局から24時間の停止処分となったことを受け、年明けに1101のメディアアカウントに閉鎖、凍結処分を実行。更にコンテンツのチェック検閲要員を現在の4000人から2000人増員を決定しました。将来的には1万人を雇用する方針で、検閲要員の追加求人には日本のTopBuzzVideoへの検閲要員も含まれます。
 また、今月29日には、百度を不正競争で起訴する声明を発表。理由は検索結果のトップが公式サイトでなく政府からの処分への百度コラムの記事であること、公式サイト欄に「不安定で開けないサイト」と注釈が入っていたことが理由ということでした。「打头办(打倒Toutiao)」と書いた百度内のホワイトボードがあったことも不振を高めている様です。

2.Tiktokの存在感、日本でいよいよ拡大

 そんなToutiaoが日本向けに出しているティーン向け動画アプリのTiktok。その存在感がいよいよ上がってきました。
 マイナビティーンズ発表の「10代女子が選ぶトレンド予想ランキング」でTiktokはなんと3位にランクイン。TwitterでもTiktokからの転載動画が以前よりだいぶ増えました。有名人でもきゃりーぱみゅぱみゅを始め、MixChnanelでも人気の渡辺リサなど中高生に人気インフルエンサーが参入。更に先行するMusical.lyとの統合が発表されるなど、「広告がウザイ」などネガティブな意見ばかりが目立ちますが、その裏で中国産アプリが中高生SNSの「スタンダード」となる可能性も秘めています。
 
3.クイズライブの「ばらまき」合戦

 新年早々大流行を始めた、今年初の中国の新規ビジネス領域「クイズライブ」。アメリカのHQ Triviaを模倣して始まったこの流行は、1月4日、有名セレブ王思聪の一声で流行を始め、わずか10日間でマネタイズフェーズに移行しました。クイズの賞金は1回1000万円越えも普通で、各企業のあまりに太っ腹な賞金に本人たちまで「ばらまき合戦」という始末。ですが、既に有力アプリはスポンサークイズを実現しており、アプリへの新規ユーザー流入という意味でも上手くいっているようです。
 日本でもGunosyが参入を発表した他、Toutiao系のTop Buzz Videoが既にスタートしており、2月以降は日本で流行する可能性もあるかもしれません。

4.『旅かえる』中国で大ヒット

 今月半ば、日本のゲーム『旅かえる』が中国のアプリストアの無料ゲーム1位になり中国で大きな注目を集めました。
 『旅かえる』は主人公のカエルの旅支度を手伝い、後はカエルがお土産を持って旅から帰ってくるのをひたすら待つだけの、いわゆる「放置ゲーム」。ヒットの理由には、ユーザーが既存の他人と競争や比較をするゲームに疲れていたこと、日本風のかわいいデザインが受けていることなど色々挙げられています。
 制作会社のHit Pointには既に大量の中国企業から協業の提案があり、海外向けのプロジェクトも進んでいるようです。

5.山下智博さん、Bilibiliでバラエティ番組「窮豪旅遊記」開始

 中国で最も人気のある日本人ネットスター、山下智博さんが、動画サイトBilibiliで新たなバラエティ番組をスタートした。山下さんは日本文化と「変態キャラ」を武器に「紳士の大体1分間」などのコンテンツを動画サイトで展開、高い人気を集めている。
 制作者の鳥本健太さんによれば、今回の番組はbilibiliとの共同出資、更に「鉄腕DASH!」などを制作した「Directors 21」制作の大規模なもの。一人1日100元しか使えない貧乏チーム(山下+中国人助手)と、一人1日1万元使える豪華チーム(中国人美人タレント)が72時間で秋葉原から72時間以内に富士山まで向かう「日本っぽいバラエティ」で、山下さんは「日本のテレビ番組クオリティは中国のネット民に通用するか?」をテーマに取り組んでいます」とコメントしている。
作品はこちらで配信。既に3話まで進み、累計90万回再生を獲得している。

6.IT企業とプライバシー意識の摩擦拡大

 今年に入ってから、大手ITサービスの個人情報収集に対して一気に批判が集まり、話題になっています。
 元日に自動車会社「吉利汽車」のオーナー李書福がWeChatトップのポニー・マーを「彼は毎日、私のWeChatを盗み見ていると思う。彼らは何でも見られる。」と、チャットの内容が筒抜けであることを批判すると、3日にはAlipayがアプリの月刊使用額レポートのサービス同意書で、「ゴマ信用のサービス協議に同意」の部分が隠されていたことに批判が集まりました。(ゴマ信用は自分の「信用」をスコア化するサービスだが、個人情報を幅広く取得できるうえ、「本人の同意なく第三者に提供できる」といった条項も入っていた)。メディアアプリも例外ではなく。Toutiaoにも「盗聴されているのでは」という批判が寄せられました。
 一般的に、中国の人々の個人情報に対する意識は低いと言われており、その意識の低さがIT企業のデータ収集を順調にしているという指摘も多いです(Tポイントカードのデータ収集に批判が集まった日本とは状況が違うと言える)。だがこれらの意識の高まりが続けば、AIビジネスに盛り上がる中国企業も変化していくかもしれません。

出版/映像/新聞編

7.アニメ映画『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』日本上映開始

 2015年に公開され、中国アニメ史上最高の興行収入を記録した映画「西遊記 ヒーロー・イズ・バック(原題:大圣归来)」の日本公開が始まりました。
 500年の封印から目覚めながら本来の力を発揮できない孫悟空が孤児の少年リュウアーと妖怪に立ち向かうというあらすじの今映画は、レベルの高い3DCGと脚本によって192億円の興行収入を獲得しています。日本版はスタジオジブリの宮崎吾郎が監修している。
 中国アニメは近年レベルアップが著しく、その後も映画やネットアニメでヒットが連続しています。『西遊記』は「映画.com」でも3.9の評価を獲得しており、好意的なレビューも多いようです。

8.染谷将太主演『空海』中国で上映

 染谷将太主演のチェン・カイコー監督映画『空海(原題:妖猫传)』が、昨年12月22日以降、中国で上映されています。チェン・カイコーは『黄色い大地』等を代表作に持つ中国を代表する映画監督の一人。日中の豪華キャストを揃えた今作の注目度は高く、興行収入は既に90億円を越えていますが、高い期待値と制作費を考えればまだまだ期待外れだという報道も。
 ストーリーは、留学のため唐に渡った若き日の空海が白楽天と唐の謎に迫るというもの。日本でも2月24日から公開される。

9.有力メディア「新京報」「財新」で編集長級の人事異動

 骨のあるジャーナリズムで定評のある2つの有力メディアで編集長級の人事異動がありました。 
 『財新』では創刊以降編集長を務めていた胡舒立が退任、今後はCEOとして経営に注力していくこととなりました。『財新』は去年11月に、中国メディアとしては珍しいネット記事の有料化に踏み切っており、その際に「メディアが質の高い記事を書くには、有料化しかない」とも述べていました。
 『新京報』では、創設メンバーの一人で元副編集長の王跃春が退職。リベラルメディアの雄だった『南方週末』から異動してきた王跃春は『新京報』を中国屈指の実力派メディアへと成長させました。また最近では紙からネットへの移行も指揮し、成功させてきました。
 新京報設立10周年の2013年には「最大限度まで真実を話し、無限に事実と真相に近づくことこそ、新京報の理想であり、ジャーナリズムの価値の所以である」と述べた王跃春。2社の今後の経営状態は、中国ジャーナリズムの存続を占う上でも重要になります。

10.上海の季風書園が終了

 上海の老舗書店、「季風書園」が営業を終了しました。「何者からも独立した文化の立ち位置」と「自由な思想の表現」をモットーとし、独立、文化、自由を掲げる本屋で、誰もが行ける地下鉄駅にありながら、とても文化的な雰囲気が文化人たちの支持を集めていました。閉鎖の直接的な原因は大家である上海図書館から立ち退きを求められたからだが、一方で書店側は「背後に、もっと深い理由があることを、私たちは感じた。それが何かについて、話すのは差し控えたい」ともコメント。書店は文化人を招いた講演会も多く行っており、長く当局の不興を買ってきたとも言われています。
 最終日には停電のトラブルがありながらも多くの客が訪れ感謝を述べ、SNS上でも書店への評論が相次ぎました。

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中国メディアビジネス日記

中国のジャーナリズムスクールに留学し、日本でITリサーチャーをする学生が、中国のIT・メディアビジネスの考察を展開します。 中国ITリサーチの仕事、幅広く受けています。お気軽に Twitter:@kiki_brero に連絡ください。kikibrero.com に過去記事あり
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