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『Sonny boy』に惹かれたワケ

しばらく前に、
『Sonny boy』という2019年のアニメ
の記事を書いた。
この記事では深掘りして描かず、
江口寿史デザインの女の子に妙な
色気を感じたとか
表面的な印象しか描けなかったけど、
何でこの作品に強く惹かれたかというと、
女の子たちだけじゃなかった(言い訳がましいけど)。
というのを思い出した。

世界観が、
「何よりも心を第一にしていて、
心の変化とか心のありようで、
世界がまるごと変化する、
心が全ての世界観」
だったから。

中学3年主人公たちはある日、
学校にいたら真っ暗な空間に校舎ごとワープしてしまって、
『漂流教室』みたいになるんだけど、
その異世界は
心のありようが直接世界に反映されるみたいな、
ある種のデジタルな仮想世界に近い感じ。

マトリックスみたいに、
瑞穂という女の子が食べ物や必要な物を何でも
投影して猫がどこからともなく運んできてくれる
「Nyamazon」という
能力が発現するんだけど、
これで
「食べ物を作ったり、
みんなで生き残るために
働く」
必要がなくなる。
つまり、
マズローの欲求階層説でいう
最下層の肉体の必要がほぼ無くなるんだけど、
瑞穂が毎回、
猫たちに物資を注文しなくてはいけなくなり、
「わたしだけ便利な能力があるからって
毎日タダ働きさせられるのは
不公平だし地味に面倒だし、
なんか納得行かない。
もうやりたくない」
ということになって、
生徒会にや学級委員からルールが作られて、
「労働」によってスマホにニャマゾンポイントが貯まって、
そのポイントを瑞穂にスマホで支払わないと
物資の調達ができない
「貨幣システム」が導入された。

これなら瑞穂にはポイントが支払われて、
瑞穂もそのポイントを誰かに支払って
何かやってもらったりできるから
公平になるし、
働くことに対価があるから
納得できるようになった。

その代わり、
全員働かないといけなくなって、
しかも特にやることがない世界だから、
「石を運んだり土を掘ったり、
特に意味のない行為を延々とやって
ポイントを貯める」
ことになった。
公平さを理想とする
ルールに従ってみんな働く姿は
社会主義国家みたいな感じで、
社会ってこうやってできるのか、、
みたいな洞察があったけど
要するに、
肉体の必要というよりは
「働くという犠牲をみんなで公平にしないと
納得できない心の必要性」
が本質だった。
『Sonny boy』
は毎回のエピソードでこうやって
「心」に焦点を当てて、
そのために登場人物たちは対立したり、
少しわかりあったり、
世界の謎に近づいたり、
自分の殻を破って成長する子もいれば
孤独になったり
プライドとか競争意識に囚われたままの子がいたりする。

かたくて重い、
厳然とした現実の世界ではなくて
心の欲求とか変化で
次に何がどうなるか全く予想がつかない
ある意味デジタルっぽい
フワフワした世界だからこそ、
心がすごく浮き彫りになるし、
心が全ての世界観。

これが何より、
面白かったし、
すごく感情移入できた。
主人公が生きる気力があまりない
タイプだったのもあったけど、
いろいろな性格の男女が繰り広げる
無人島の恋愛ドキュメンタリー的な
エゴとかが剥き出しになる感じとか。

あと、
アニメとしては人間関係がメインで
エゴをいちいちリアルに描くから
なんとなく陰湿でジメジメしてるんだけど
それと対照を成すかのように

中学生たちが仮想世界で住んでいる島は
南国のビーチ風、
景色は晴れ晴れとした
青空に白い雲と海で、
見てるだけで夏の風を感じるほど爽やかで、

エゴの陰湿さとか憎しみとかがどんどん出てくるんだけど、
そういうジメジメしたものが溢れて
夏の風に乾かされていくみたいな
カラッとした爽やかさもあった。


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