【『無能なナナ』第8巻ネタバレ考察】××と◎◎が能力者たちを操り行き着く先は?

※注意※
※単行本派による考察です。
※原作を確認してはいますが個人の妄想に近いものなので、信憑性は保証できません。
※本文にはネタバレありますが、未読派の方に配慮した表記を心掛けています。

ちなみに前の記事です↓

以上、ご了承の上どうぞ~。

前回までの不明点がいくつか多少クリアになり、大きな決断を次巻に持ち越す結末となった第8巻。そこまで大きな新事実はないものの、考察のネタは増えましたね。

今回新たに判明したことを順に挙げ、新情報それぞれについて考察すると同時に疑問点を整理しましょう。今回は考察より情報整理がメインになります。


1.新情報|◎◎の父との関係と能力の拡張について

第53・54話にわたってナナオが目覚めた前後の様子が回想の形で描かれたことで、彼についてわかったことがいくつかあります。

《ナナオ関連の新情報》
①ナナオの父は政治家ではなかった(第8巻21ページ)
②ナナオの父はナナオの目の前で(おそらく彼の能力によって)死んだ
③ナナオが昏睡状態から目覚めたのはナナが島で鶴見川レンタロウを追い詰める直前(第8巻42ページ)
④ナナオが目覚めたときには既に能力は拡張していた
⑤ナナオの能力を使えば人を殺すことは簡単

まずナナオの父についての確認事項となる①と②。これまで鶴岡と密談していた政治家はナナオの父ではありませんでした。そして今回はっきりと死が描かれたので、今後(蘇生能力でも出てこない限り)再登場はないでしょう。つまりナナオの父は、ナナオの人格形成のためだけのキャラだったようです。

そして⑤からは、ナナオの能力が人間の行動や認知のすべてを簡単に操れることがわかりました。何というかもう…これって最強どうのじゃなく、何でもありですよね。呼吸の能力を奪えば相手を殺せるわけですし。こうなると、彼の能力の代償が気になります。

ではこれらの新情報から考察の余地のあるものや、新情報によって新たに浮かんだ疑問点を掘り下げてみましょう。

→考察1|◎◎が救出されたのはいつ?能力が拡張した要因は?

第8巻を読んで個人的に最も気になるのがこれです。ナナオの能力の拡張について、そのタイミングと要因

以前の考察で述べたとおり、私は鶴岡蘇生能力者説を押しています。よってナナオが鶴岡に引き揚げられたのがいつで、その時彼に息があったかどうかはかなり重要なポイントとなるわけです。

第8巻を確認するに、ナナオが目覚めたのはナナがレンタロウを追い詰める直前だったようです。巻数でいうと第4巻262ページですね。ナナとの通話内容が一致しています。

しかしナナオが海に落ちたのは第1巻82ページ。確認したところ、目覚めるまでにざっと18日ほどの時間が経過していることになります。

昏睡状態が何日くらい続くのかは病状などに大きく左右されるのでしょうし、何十日何か月と続くこともあるでしょう。しかしこれは現実ではなく物語なので、何故あえてナナオが目覚めたタイミングがわかる描写を入れたかという理由があると考えるのが自然です。

そしてその理由として、ナナオは発見された時には既に事切れていて、鶴岡が蘇生させたという説も充分あり得るのではないでしょうか。更にいえば、その蘇生によって、ナナオの能力が拡張したということも考えられるのでは…?

これも前回述べましたが、私は鶴岡に蘇生能力があった場合、その代償は生前通りの状態を再生できないことだと思っています。ナナオのケースではそれがたまたま、能力の拡張という強化の形で表れたのではないでしょうか。

前回はナナオの人格の変化が蘇生の副作用(代償)かと思っていましたが、第8巻を見るにそれは鶴岡の人心掌握術によるもののようですしね。確かにその方が、ナナオが鶴岡に対して全く能力を振るう様子が見えないのも納得できます。(こういうところなんだよな、るーすぼーいらしさって)

あるいは蘇生の代償とは関係なく、単に死ぬほどの目に遭うことで能力が拡張したのかもしれません。能力の拡張はこれまでも示唆されていましたが、実例はナナオが初なので、今のところ有り得る(ありがち感は否めませんが)かなと。

ちなみに、ユウカが海に落ちたのはナナオのおよそ12日後渋沢が湖に落ちたのは24時間以内です。ナナオが引き揚げられたなら、この2人も鶴岡に助けられて生きているかもしれませんね。

ユウカの場合はシンジの蘇生は無理そうですし、それなりの悪事も働いたので彼女も海に沈んだままの方がいい気がしますが、渋沢は正義感に燃える善人だったので、大団円を迎えるためには生きていてほしいところです。もしそうなれば渋沢の能力も拡張しているのでしょうか?

2.新展開|相馬ダイスケの登場と西城タケオの死について

(この2人の名前は伏せる必要なしという判断)

第8巻のメインは、新キャラ相馬ダイスケの跳梁跋扈でしょう。

《相馬ダイスケとは》
・島では古株の能力者
・粗暴な性格だがそこそこ頭も切れる(ナナとの駆け引き、自分たちを「人類の敵」とする冷静な考察力など)
・能力は自己申告によると「広範囲に影響を及ぼすほどの電気」(第8巻192ページ)
・学校にはあまり出てきていなかったため古株以外は彼についてよく知らない
・ナナオによると「もとからネジが外れてるやつ」(第8巻103ページ)
・能力だけに頼らず金と権力を手に入れることに意欲的な野心家(第8巻99ページ)
・能力があいまいなのにリーダーとして持ち上げられたナナを良く思っていない
・今回ナナに譲られる形で新リーダーに就任

そんな相馬が、登場早々殺人を犯します。被害者は、彼とは島に召集される前からのつきあいで、勝手な言い分を咎めたもう1人の新キャラ西城タケオ。凶器は盗んだ車でした。動機は元リーダーであるナナを陥れるためのようです。

と、読者視点では事件の概要は判明しているのですが、何故その手口を選んだのか、どうやってナナの部屋に車のキーを隠したのかなどの謎が残っています。また偶然犯行現場を目撃したモエは、そのまま危篤の祖母の元に駆けつけたため、ナナを含む能力者たちに未だ真相を話せていません。

→考察2|相馬の殺人は物語にどのような影響を及ぼすか?

私は基本、トリックにはあまり興味がなく、考察する気もありません。よって今回私が考えたいのは、相馬の殺人の物語上の意義です。

→→考察2-1|モエの方向性を固めるため

第8巻で殺人事件と同時並行で描かれている、祖母の容体の急変に伴うモエの帰省。現状、モエは相馬の犯行の唯一の目撃者でありながら、そのまま帰省したためにナナやキョウヤたち能力者たちの誰にもそのことを伝えられていません。

モエに祖母の急変を伝え、帰省の便宜を図ったのは鶴岡です。

「もともと貴様は柊の控えだった
 島に送り込んだ柊があっけなく能力者に殺された場合
 “委員会”の老人どもに次の余興を与えねばならなかったからな」
出典:『無能なナナ』( 作:るーすぼーい / 古屋 庵 スクウェア・エニックス発行 ガンガンコミックス)第8巻245ページ

と鶴岡自身が述べていますが、彼のナナへの異常な執着に鑑みると、少なくともモエがナナありきの存在だったことは間違いないでしょう。委員会にはスペアだと説明していたでしょうし、鶴岡自身にとってはナナを操るための駒の1つだったのではないでしょうか。

だからこそ、モエがはっきりとナナにつくことを宣言した今が、彼女の駒としての使いどころなのです。祖母を餌にモエを再び自陣営につけ、同時に相馬を使ってナナを孤立させるというのは、鶴岡なら普通にとる作戦です。ナナオが相馬に接触したのも、そのような目的があったからだと考えると辻褄が合いますしね。

そこでモエが鶴岡の思惑通りナナから離れるのか、それとも祖母の遺志を継ぐようにナナを支えるのか、というのが次巻当たりの見どころなのかなあと個人的には思います。鶴岡なら何重もの作戦を仕掛けているでしょうしね。

モエの心境の変化のためというのは、相馬の登場の意義の1つとして結構順当なところでしょう。

(※追記:この仮説自体は正解でした(第9巻にて)。もうひとつの存在意義についてはこちら

→→考察2-2|相馬の殺人に関連する謎について

しかしそれだけでは必要性がわからない謎がいくつかあります。それらを挙げつつ、個人的な考察をメモ書き程度に添えてみます。

《今回の事件の謎》

①なぜ凶器に車を使ったのか
 →「電気」「ガラス」の能力と関係がある?
 →→それが単なるトリックの種なのか、鶴岡とナナオの関与のせいなのか…
(※追記:関係ありませんでした!(第9巻))

②サチコがやけに目立っているのは理由がある?
 →実は相馬に弱みを握られて手先になっている?
 →→今後ナナが次々と裏切られていく展開に? ナナが能力者たちに真実を明かせていないことが決定的な決裂を生むかも…(今回ナナがキョウヤに打ち明けられなかったシーンが意味を持つ)
 →→→その窮地をモエが救う? あるいはキョウヤがナナ側に立つ? むしろジン(変身)の出番?
(※追記:半分正解。後半は妄想でしかないと判明。詳しくはこちら

③モエが犯行現場を目撃したのも鶴岡(たち)の計画なのか?
 →だとすると西条殺害はナナからモエを離反させるための計画
(※追記:目撃させたことに関しては正解。詳しくはこちら

相馬自身は鶴岡とナナオの暗躍のための駒だと思うんですよね。彼は事件を引き起こしはするけど、物語の本質にはあまり関係なさそう。この事件が解決すると同時に殺されても不思議じゃないくらい。
(※追記:半分正解。詳しくはこちら

しかし鶴岡はナナオにモエに相馬にと、ナナを「弄ぶ」ためにどれだけ駒を揃える気なのかと! ここまでナナに執着する理由は是非知りたいところです。

3.その他気になることと第8巻の総括

第8巻は起こった事件はまだ解決せず、中途半端な情報のみがばらまかれた感があります。そのような判然としない情報と疑問点を最後に整挙げていきましょう。どれも真相が掴めずとっちらかっているのは、どうかご容赦を。

→①◎◎の父の「愛情の裏返し」は真実? ××の仕込み?

どちらでも大差なさそうですが、ちょっと気になるのが、ナナオの父が実は息子想い描写(第8巻46ページ)です。

鶴岡がどこまで(ナナを陥れるために)ナナオを駒として必要としたかの指標となりますし、もし仕込みであれば、今後ナナオがそれを知って鶴岡から離反する展開もあり得るわけですから。

→②引き続き**の存在感が気になる!

前巻からにわかに存在感を増している、能力者たちの取りまとめ役である先生。今回出番は1シーンだけですが、顔がはっきり描かれるようになっていますね~(第8巻83ページ)。また漫画表現の基本に鑑みると、84ページ2コマ目も何となく不自然じゃないでしょうか。いるか? このコマ。

そう疑問を抱かせるためのミスリードなのか何なのか…。今回ジン(変身)が出てこなかったので、まさか本土に帰ってからは彼が成り代わっているのかとも疑ってしまいそうです。鶴岡の指示でモエを呼びに来たことを考えると、その可能性は薄そうですが。

→③モエの祖母に対する××の本心は?

「サチヨの前でおれは徹頭徹尾善人であり続けた
 俺を善人だと信じ続けたまま死んでいく様を見たいのだ」
出典:『無能なナナ』( 作:るーすぼーい / 古屋 庵 スクウェア・エニックス発行 ガンガンコミックス)第8巻92ページ

鶴岡がナナオに答えるこの台詞。このシーンで気になるのは答えとしては曖昧すぎることと、鶴岡が喋りながら煙草を吸っていることです。

鶴岡は煙草キャラではありません。調べたところ、彼がこのシーンの他に煙草を吸っていたのは1シーンのみ。第5巻89ページ、ナナを指導室に呼び出してから、口を開く直前までです。

鶴岡は仕草や語調、そして表情を巧みに用いて相手の心理を操ることに長けています。その彼が表情の制限される煙草を吸って見せるのは、自分の真意を隠したい、表情を読まれたくないからではないでしょうか。だとすると答え方が曖昧なのも当然ですよね。

つまりこれは嘘とは言えないまでも、真意をごまかした発言だと考えられます。鶴岡はサチヨとはナナオに正直に語れないような複雑な関係であり、これまでの長い付き合いの中で、彼女に対しては一定の信頼や敬意などがありそうです。

そう思うと8巻終盤、222~229ページのサチヨとの対話でも、そのような雰囲気が見て取れます。鶴岡がこのように穏やかに、敬意を払って会話する相手は他にいませんよね。

しかし見逃してはならないのがこの台詞。

「折を見て
 普通の学校に通わせてもらえませんか?」
(中略)
「お約束しましょう」
出典:『無能なナナ』( 作:るーすぼーい / 古屋 庵 スクウェア・エニックス発行 ガンガンコミックス)第8巻225・229ページ

きた! 鶴岡の“約束”! ナナ曰く「鶴岡は約束を守る方」とのことでした。前回の考察で述べたとおり、あえてこうナナに言わせたのは、鶴岡が本当に約束は守る人間だからだと思っています。実際コハルを始末したナナに対しては、約束通り真実を語りました。さらに深い真実が隠されているにせよ、それでも約束は守ったわけです。

ナナとの約束を守る鶴岡が、サチヨとの約束を守らないわけはないでしょう。まあ現段階でモエを戦線離脱させることは、鶴岡にとっても好都合なので約束の履行は当然といえば当然ですが。

私が気になるのは、鶴岡が約束を守る人間だということが、今回の言動で真実味を増すんじゃないかという点です。2度あることは3度ある。今回約束を守ったなら、ミチルちゃんを生き返らせる約束だって守ってくれるのでは!?

思い込んでいるせいか、私にはあれもこれも鶴岡の蘇生能力を示唆しているように見えてしまいます。まだ反証が出てこないので、依然この説を押していく所存です。

→④次号予告の台詞

次号予告ページの台詞の中で、

「君はモエくんを仲間だと言い切った 
 それに酔いたいだけだろう?」
出典:『無能なナナ』( 作:るーすぼーい / 古屋 庵 スクウェア・エニックス発行 ガンガンコミックス)第8巻256ページ

これ、ジン(変身)の台詞ですよね!?!?!?!?

いつもの“試し”の台詞ならいいのですが、ここにきてまさかのナナ・モエ不仲誘導!? 今回ジンの出番がなかっただけに、裏で何らかの動きをしてそうで気になります…。(感想)

→⑤総括に代えて

内容や考察とはあまり関係ないですが、第8巻は何となく言葉選びの雑さが気になりました。作者さんが疲れてらっしゃるのでしょうか。いつものような的確さを欠いている印象です。

単行本派としては続きが待ち遠しいですが、それよりクオリティを下げず一貫性を持って最後まで描き上げていただきたいところ! ではまた次回!

次の記事です!

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