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サッカー東京都4部リーグのチーム数がこの10年で半減してしまった理由

底辺からぐらつく日本サッカー界

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日本中に「Jリーグ入り」を大目標として掲げるサッカークラブが次々と誕生している一方で、日本サッカー界がその底辺からぐらついているという事実は、今やアンダーカテゴリーのサッカー現場においては、常識として当たり前に認識されています。

少子高齢化の進む日本社会。

若年層の人口が減少の一途を辿っていることについては、今さら説明するまでもないことですが、それによってサッカーを含めたあらゆるスポーツの競技人口が減少していっているという話も良く聞くところではあります。

しかし、これを具体的な数字で見てみると、その深刻度合いを更に強く感じさせられます。

この10年で半減した東京都4部リーグのチーム数

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私は数年前まで東京都社会人サッカーリーグに参戦するサッカーチームで活動していました。

そのチームの「居場所」はほぼ4部リーグでしたが、1990年代の後半にリーグ参戦を開始して以降、およそ四半世紀の時が経過してきた中で、我がチームの「居場所」東京都4部の光景も大きく変容してきています。

2000年前後より以前の情報についてはネット上にその痕跡もほぼ残っておらず、その正確な実態については調べるのが難しい状況にはありますが、今から約10年前、2007年度の東京都4部には10チーム×20ブロック、つまり200チームが参戦していたことが分かりました。

それが10年経った2017年度には最大10チーム×10ブロックにまで減少。

「最大」と書いたのは、必ずしも1つのブロックに10チーム存在しないケースもあるからで、それを抜きにして考えても単純にこの10年で東京都4部に参戦するチームの数は半減してしまったことになります。

「最底辺」東京都4部は消滅するかも知れない

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東京都4部リーグはJ1リーグを頂点とするピラミッドにおける最底辺リーグで、これより下位のリーグは存在しないので、参戦の意思があり諸条件が整いさえすればどんなチームでも参戦可能なリーグですが、違う見方をすればどんなチームでも東京都から「Jリーグ入り」を目指そうとすれば、必ずこの東京都4部からスタートさせる必要があります。(上位リーグにいるチームを吸収合併したりすれば別ですが)

こうした「最底辺リーグ」への参戦チームの減少傾向は、勿論東京だけに限った話ではなく、むしろ東京であるからこの程度で収まっていると言うことも出来そうですが、参戦チームの減少は各社会人サッカー連盟や、各都道府県サッカー協会にとっても死活問題で、その解決策として大きな転換期となったのが、約10年前になされた「学生選手枠」の新設と、その後なし崩し的に決まっていった「学生チーム参戦」の容認でした。

しかし、当然ながらそれでは根本的な解決には繋がらないわけで、このままいけば早晩、東京都4部リーグというカテゴリーは消滅してしまう可能性もあると考えた方が常識的であるように思えます。

人口減だけが原因なの?私が思うリーグへの「参戦障壁」

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ただ、こうした社会人リーグへの参戦チームの減少が単に「人口動態」だけを原因とした現象だと私は思っていません。

長年、東京都社会人リーグ参戦チームで活動してきた中で「リーグへの参戦障壁」だと常々思っていた事柄があるのです。

東京都社会人リーグはそれが例え最底辺の4部リーグであっても、日本サッカー協会傘下で行われる東京都社会人連盟が主催する公式リーグ戦であるため、そのレギュレーションが非常に厳格です。

東京都社会人リーグ4部にも「運営細則」が存在し、そこには第1条から21条まで大会運営にまつわる決めごとが事細かに記されているのですが、その中から少し抜粋してみると。

東京都社会人サッカーリーグ 2018年度4部運営細則 はこちらから

第8条 ユニフォーム

1)ユニフォームは、ユニフォーム規定に準拠したものを使用し、全選手同じメーカーのものを着用し、ラインの違いなどは一切認められない。

第10条 選手登録

5)選手の追加登録は、※Kickoffにて選手の追加登録を申請、連盟への登録料の支払いを完了し、「エントリー用紙」「登録選手一覧」の提出を4部運営委員会に済ませた後に出場を認める。

第11条 グランド

1)参加チームは年間5試合分以上のグランド提供を義務とする。提供はグランドを利用した時点でカウントする。尚、雨天など運営側に瑕疵(かし)がない場合はカウントしない。

5)グランド提供がない場合、次年度リーグ参加について、4部運営委員会で審査し裁定する。

※Kickoff・・・JFAの個人登録サイト(主に選手、審判)

「本末転倒リーグ」

こうした規則を読んで「当然あるべきものだろう」と思われた方も多いかも知れません。

でも、実情としての東京都4部リーグは、草サッカーに毛の生えたレベルのリーグ戦で、多くのチームが試合日に人を集めることが大仕事になっていて、試合開始までに選手の人数が揃わず没収試合になることなど全く珍しくない世界なのです。

それでも選手たちはソックスに入ったラインが1本多いからという理由で出場出来なくなったり、新しい仲間が増えて試合に出したくても選手登録に時間を要するので「来週の試合から参加したい」は現実的に難しい。

グランド取得義務を果たさないと来季のリーグ参戦が停止されてしまうので、東京都リーグの試合なのに茨城県や山梨県まで行って試合をすることすら珍しくありません。

その上、チームのサッカー協会加盟費に53,000円、リーグ参加負担金は年間に60,000円もかかり、選手ひとりを登録するのにも3000円かかります。

そして何よりも、こうした手続きやリーグ開催期間中の報告業務(試合結果などは担当チームがその日のうちに所定の書式に沿った書類を何種類も提出する必要がある)などの事務手続きの負担を考えると、はっきり言って「なかの良い仲間たちが集まった草サッカーチーム」レベルで対応するのは不可能だと言ってもいい。

もうこうなってくると、その状況は「サッカーを楽しむ」というよりも「リーグ戦をこなす」と言った方がしっくりくる程で、チームで活動をしていた時はいつもこの言葉が私の頭をよぎっていました。

「ほんと、本末転倒リーグだよ」

「最底辺リーグ」がやせ細れば日本サッカー全体が衰退する

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私はこの「最底辺リーグ」がやせ細っていけば、それは将来的に日本サッカー界全体の衰退に間違いなく繋がっていくと思っています。

それは単純にリーグ参戦チームの数が多ければ、それだけ社会人サッカー連盟やサッカー協会が「集金」を出来るということだけを指しているのではなく、より多くの人々がその世界に関与することこそが、その世界に発展と深化をもたらせる源泉になると思うからです。

選手だけについて考えても、100人の中から選ばれた選手よりも1000人の中から選ばれた選手の方がきっと優れているはず。そう思うのです。

その為には「最底辺リーグ」の、東京で言えば東京都社会人4部リーグの「参入障壁」は出来るだけ低くするのも一つの解決策ではないかと思います。

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『フットボールでより多くの人々の生活に彩りを生み出せたら』 と考える、フットボールライター(仮) 2017年、25年続けたフラワーデザイナーの仕事に別れを告げ、日本サッカーの為に生きることを決めてしまったが、果たしてその行く末は!?