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天皇杯サッカー決勝は元日開催だからこそ意義がある。

2020年元日 天皇杯サッカーで新国立競技場のこけら落とし

再来年、2020年の元日に東京オリンピックメインスタジアムである新国立競技場のこけら落としとして、天皇杯サッカーの決勝戦を行うことを日本サッカー協会が発表しました。

正月スポーツの風物詩として、箱根駅伝や大学ラグビーなどと並びすっかり世間に定着してきた元日の天皇杯サッカー決勝。

プロ・アマの垣根なく真の日本一を決めるこの大会はおよそ100年の歴史を持つ由緒あるサッカー大会ですが

『元日の明治神宮に250万人の参拝客が来るので、初詣帰りの1%でも来てもらえないか』

という当時の日本サッカー協会の思惑もあって、1969年から明治神宮にほど近い国立競技場で元日決勝が行われるようになりました。

Jリーグ人気の衰退とサッカーファンの二極化

1993年、日本初のプロサッカーリーグ「Jリーグ」が誕生し、その爆発的人気は社会現象にまで発展し、日本社会におけるサッカーの世界は大きく変化していきます。

それまでは夢のまた夢であった日本代表のワールドカップへの出場も、Jリーグが誕生してから5年後の1998年に果たされ、2020年には日韓共催でワールドカップも開催されました。

このようにして、どんどん発展しているかのように見えていた日本サッカー界でしたが、実はこの頃からサッカー人気の起爆装置であった肝心のJリーグは観客数を年々減らしていきます。

1999年にはJリーグ発足時の「オリジナル10」と呼ばれるチームの1つであった横浜フリューゲルスが経営難から事実上消滅、その前年には初代Jリーグ王者ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)の経営から親会社であった読売新聞が撤退するなど、順風満帆どころか非常に厳しい実情が露呈しはじめてもいたのです。

ワールドカップなどを戦う日本代表に対する世間の関心は高いままでありながらも、いつしかJリーグに対する関心は冷めていく一方となり、日本代表とJリーグの間には世間的関心の二極化が顕著になっていったのです。

「正月スポーツの風物詩」としての天皇杯サッカー

そんな「二極化」した日本サッカー界にあって、天皇杯決勝では毎年のようにチケットが完売となり、元日の国立競技場はいつも満員の観客で埋めつくされてきました。

勿論、満員のスタジアムを作ってきたのは決勝戦に進出したチームのファン・サポーターに拠るところが大きいのは間違いのないことですが、それと同時にこの試合が「正月のスポーツ風物詩」として世間にしっかりと認識されてきたことも非常に大きな要素であったはずです。

普段は全くサッカーを見ない人が、元日の午後だけは毎年NHKをつけて天皇杯決勝をテレビで視聴する。

言ってみれば元日に行われる天皇杯決勝は、世間的関心の高い日本代表であっても4年に1度のワールドカップでしか、Jリーグに至ってはほとんど果たせなくなってしまってきた「世間と日本サッカーとの接点」としての役割を果たしてきたのではないかと私は思うのです。

そして、この貴重な機会は、多様化の進む日本社会において唯一とも言える特別な日「元日」であるからこそ機能してきたのではないでしょうか。

「世間と日本サッカーとの接点」としての天皇杯決勝

そんな天皇杯サッカーの決勝戦が、2018シーズンつまり2019年の元日に行われません。

これは2019年1月5日からUAEで行われるAFCアジアカップに参加する日本代表チームの活動日程を考慮してのもので、前回この大会が行われた2014シーズンにも同様の措置がなされたのに続いて2度目のこと。

今シーズンについては、AFCチャンピオンズリーグに優勝した鹿島アントラーズへの配慮から(12月中旬からUAEで開催されるクラブワールドカップへアジア代表として出場が決まり、当初の天皇杯スケジュールと完全にバッティングしてしまった為)さらに前倒しされ、12月24日から12月9日へと変更になりました。

日程の変更、前倒しが参加チームや選手たちに対する配慮であることは十分理解しています。

それでも現在の日本サッカー界にあっては貴重な「世間との接点」という役割を果たしている天皇杯決勝の元日開催について、そこに存在する意義、「正月スポーツの風物詩」として楽しんでいる潜在ファンの存在、それらに対してもしっかりと目を向けていくことが、日本サッカー界にとって非常に重要な視点ではないかと私は考えます。

世界中でサッカーが愛されているように、日本においても限られた人たちだけではなく、あらゆる人たちからサッカーは支えられるべきだし、そうなれるだけの魅力をサッカーは持っていると思うのです。


『フットボールでより多くの人々の生活に彩りを生み出せたら』 と考える、フットボールライター(仮) 2017年、25年続けたフラワーデザイナーの仕事に別れを告げ、日本サッカーの為に生きることを決めてしまったが、果たしてその行く末は!?