見出し画像

芋煮・バトルロワイアル #ppslgr

黄昏色の爆発が、蒼天直下の出島めいた海浜公園中央から生じては島表層を綺麗に嘗めとる。散り散りに四方八方へ爆風に吹き飛ばされる無辜の民。

「ッハ、ハーッハッハッハッハ!やった!やってやったぜ!これで今年の逆噴射小説大賞は参加者全滅で俺の優勝が確定した!CORONAは俺の物だ!」

未だ爆炎渦巻く地獄へと、清朝期の服装をまとった筋骨隆々の男が狂笑と共に橋を渡って足を踏み入れた。その顔には勝利を確信した満足感に満ちており、大きく胸を張って惨状を見届ける。

彼の名はA・K。逆噴射小説大賞のCORONAを狙うパルプスリンガーの一人だ。そして今日この海浜公園ではとある作品のファンイベントとして、少なくない数のパルプスリンガー達がこの場に集まっていた。そこを、ドカンと爆破したのである。優勝をもぎ取る為、ライバルを減らす事が目的の奇策であった。

「ハーッハッハッハッハ……は?」

A・Kの笑いは爆炎の中から決断的に歩み出てくる真鍮製の鍋を頭からかぶった、全身黒づくめに黒コートを羽織った男の姿を認めた時点で中断する。
その男は全身に針鼠めいて武器を満載しており、腰には特徴的な大太刀を差している。だが今はその武器のいずれにも芋煮汁がぶっかかったのが見て取れる惨状であった。

「その声はA・Kか。まさか本当に爆破すると思わなかったぞ」
「お、おいR・V、いや待てお前なんであの爆発で生きてんだよ!」
「あの程度で俺が死ぬわけがないだろう」
「いやいやいやいやおかしーって!」

R・Vと呼ばれた真鍮鍋黒づくめの男は剣呑な声で自身の死を否定する。どういう原理か、R・Vの身体には芋煮汁こそぶっかかった物の爆風の被害は微塵も見受けられない。ブッダの加護とでもいうのか。

「俺が死ぬとか死なないとか、そんなことはどうでもいい。いいかA・K……!おまえは!たべものを!そまつにしては!いけないとおそわらなかったのか!」

R・Vの一喝と共に真鍮鍋が吹き飛ぶと、その下から鬼すらすくむ憤怒の瞳を持った黒髪の男の顔が姿を見せた。それと同時に黒づくめの男の背後に蛍が寄り集まる様に光の粒子が生じては人型を構築すれば、忽然と黒鋼と黒曜石で彩られたかの如き黒騎士の巨人が顕現する。

「ゲッ……イクサ出すとかR・Vマジ切れしてんじゃん……!ここは逃げるが勝ちだ、ぜ?」

構わず振り向いて逃げ出そうとしたA・Kの眼前に、今度はゆったりとしたカジュアルなファッションに眼鏡をかけた、温和な雰囲気の青年が立ちはだかる。彼の眼もまた、怒りに燃えている。

「ひどいよA・K!僕に何の恨みがあってワイフと徹夜で作ったカボチャタピオカを全滅させたんだ!」
「おーう……わりぃM・J、でも芋煮にタピオカは流石の俺もどうかと思うぜ?」
「意外と合うんだよ!つまみ向けの味付けだし!」

前門のフェンリル、後門のアシュラと言った有様だが、追及は当然それだけではやむはずがない。今度は横合いからさらなる新手が炎の中より姿を現した。

藍の着流しに細表の顔立ちとすらりとした長身の男性は、無精ひげをさすりながらアルカイックスマイルでA・Kの陰謀を問いただす。

「ふっふ、A・K君、君は一体全体何が目的で私が企画した秋の芋煮会&バーベキューを台無しにしたのかな?」
「いや、ほらK・S、パルプスリンガーがこんな集まるなんて千載一遇のチャンスじゃん?ならやるしかないでしょ!」
「うーん、これはキツめのお仕置きが必要ですね」

そうつぶやいたK・Sと呼ばれた男の背後にも、R・V同様に光の粒子が虚空より湧き出すと、ちぐはぐなバランスのジャンクめいた巨人が姿を現す。
その機動兵器は、右腕がペンチめいた巨腕、左腕は指先が多連装ビームキャノン、両脚は長さが一緒と言うだけの別の機体の脚が強引に据え付けられた代物だ。

「おいおいおいおいおいフリッケライ・リッター出すなんてマジかよ!」
「このくらいする権利はあるんじゃないかな?」
「ごもっともです!」

三方を塞がれたA・Kは当然の事ながら諦めずに空きスペースからの逃走を試みるがそこもまた第四の刺客に阻まれた。

新たに現れたのはワイシャツにスラックスのシンプルなファッションの青年で、整った顔立ちには怒りの余り笑顔になって見えるほどの闘士が浮かんでいる。

「ちょうど今来た所だったんだけど、要するに……芋煮が壊滅してるのあなたのせい、だよな」
「もうヤケクソだ!そうだぜH・K!イエス!」
「ならば許すまじ!非・ユウジョウ!」

H・Kもまたスマホを高速フリック操作でアプリケーション起動すると、自らの機動兵器を物質転換事象によってこの場に現す。
さらに出現した機動兵器は、これまでと異なり四脚からなる歩行機構によって支えられた上半身に、一対の腕と複数の武装をマウントした紺碧の多脚人型戦車だ。

「オーゥブルシット!だがこんな事で諦める俺じゃないぜ!」
「そろそろ降参して素直に謝った方が良いのではないかな?」
「往生際が悪いんだ俺は!つか助けてくれたっていいだろうおうじ!」

A・Kは不意に虚空から現れた、容姿端麗なエルフの青年へとたすけを求めるが、あえなく袖にされる。このエルフの青年はA・Kのイマジナリーから生じた物理存在だが、自我を持ち独自に行動するのだ。

「だが断る。今回はA・K、君が100%悪いし彼らの言い分がもっとも過ぎる。残念ながらレディとダーヴィも同意見だ」
「でーすーよーねー!」

A・Kが自身の可視化空想存在と漫才をしている間にも、パルプスリンガー四人はじりじりと彼への包囲を狭めていく。

「こうならヤケだ!俺もソウルアバターで徹底抗戦……」
「ムッハッハッハッハッハ!!!!!ウリャー!!!」

懐からスマホを取り出したA・Kに対し、目にもとまらぬ猛スピードで出島に突っ込んできた一つ目アイコン覆面のマッスル・レスラーが彼の足首をひっつかむと即座にジャイアントスイングに移行する!

「ちょっ、まっ、グワーッ!!!」
「セイヤーッ!」

裂帛の気合と共に宙に投げ飛ばされるA・K!それを追う謎のマッスルレスラー!マッスルマンは見事にA・Kを空中でキャッチするとそのまま回転しながら恐るべき必殺技、パイルドライバーを決める!

「フンッ!成敗!」
「グゥワーッ!!!」

したたかに砂浜に脳天から打ちつけられると上半身半ばまで砂にぶち込まれて、その衝撃で砂浜にはすり鉢状のクレーターが生じる!ガッツポーズを決めるレスラー!

「やったぜ!これで俺は芋煮会で爆発四散したパルプスリンガー達の仇をうったヒーローで逆噴射小説大賞優勝者だ!ムッハッハッハッハッハ!……む?」

突っ込みを入れる間もない早業でA・Kを成敗したマッスル・レスラーはそこで他のパルプスリンガー達が健在である事に気づいた。先に姿を現した四人以外の参加者もまた、各々何かしらの手段で身を護ったのか一人の犠牲者も出ていない。芋煮鍋にバーベキューセット、そしてカボチャタピオカについてはもれなく犠牲になっていたが。

「なんだ、皆無事なのか」
「当たり前だろう、皆あの程度の爆発でどうにかされるタマじゃない」
「チッ……チャンスだと思ったのに、まあいい、やる事殺ったし俺は帰るぜ」

迷わず帰ろうとしたマッスル・レスラーをR・Vが呼び止める。

「まあ、待ったH・M。せっかくだから芋煮食ってけ」
「アアン?芋煮って全部爆発でオジャンになったろ」
「今K・Sがここの運営に予備を依頼してる。じきに届くそうだ」
「焼き肉もあるか?」
「ある。CORONAもある」
「あるならしょーがねーな!いただいてくぜ!」

H・Mという名のマッスルレスラーは、肩をいからせて芋煮会場のはずだった焼け跡へと向かう。そこには既にテントを張りなおし、設備を設置しなおしている参加者の姿があった。

当初の四人も、やり場のなくなった人型兵器を虚空に戻すと、芋煮再開の準備を手伝う。

「酒は?」
「クーラーボックスに入ってたのと、位置が良かったのか無事~」
「あー良かった、M・Jセレクションが割れてオジャンだったら泣けるとこだぜ」
「銘酒は在庫が少ないからね!」

わいわいがやがや騒ぎながら高民度復旧行為メントを続ける参加者を尻目に、エルフの王子は砂浜に突き刺さったままのA・Kへかがみこんで優しく諭す。

「いいかA・K、逆噴射小説大賞はちゃんと作品を投稿して争った方がいいと私は思うぞ」
「ふぁい……」

秋にしてはヤケに熱い砂浜に、一陣の潮風がふいた。

【芋煮・バトルロワイアル:終わり】

作者注記
この作品はフィクションです。フィクションだったら!
以下補記。
・芋煮会で爆発は起きていません。
・実際のカボチャタピオカは製作者のセンスの良さにより普通に芋煮汁と合う美味しい仕上がりでした。
・よくもこんな胡乱な話を!という事で作中ではニンジャヘッズの集まりであることを明記する事を避けました。ゴメンネ!
・モデル本人がひどい目に遭っているのでこれを誕生日プレゼントにするのは奥ゆかしく差し控えます。しかしてハッピバースデートゥユゥー!

現在は以下の作品を連載中!

まとめマガジンはこちらからどうぞ

弊アカウントゥーの投稿はほぼ毎日朝7時夕17時の二回更新!
主にロボットが出てきて戦うとかニンジャとかを提供しているぞ!

#小説 #パルプスリンガーズ #スーパーロボット #毎日更新 #芋煮会

ドネートは基本おれのせいかつに使われる。 生計以上のドネートはほかのパルプ・スリンガーにドネートされたり恵まれぬ人々に寄付したりする、つもりだ。 amazonのドネートまどぐちはこちらから。 https://bit.ly/2ULpdyL