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パンドラ・イン・ジ・オーシャン -3-

海中の光を阻む効果は実に高い。水に含まれる不純物の量によってその遮光性が変動するのだが、リゾート地の美しい海でもなければ早々に光量は落ちていって暗闇だけが支配する世界となる。

降下する俺達がまずたどり着いたのは海底としては比較的浅いと言える深度のポイントだ。いずこからか流れ着いたのか、コンテナ、漁船、そして軍艦の残骸と思しき鉄塊がいくらか泥の中にたゆたっていた。

「今の所、何の変哲もない海底だな」
「見た目はそうね、でもやっぱり魚達が見当たらない。普段の数値と比較して壊滅状態といってもいいレベル」
「という事は魚にとって脅威となる何かがある、そういう事だな」

先程遭遇したおぼろげなるブラック海坊主はまだ再出現していないが、あれで最後だったとも考えにくい。もう少し具体的な原因の調査が必要だという点で俺とM・Hの見解は一致していた。

「そういえば、O・Dが語った深海の神は壇ノ浦在住だったか」
「そうね。実在するとして、このポイントにも同様の存在が居ないとも限らないけど」
「確かに、宇宙と深海はまだまだ人間にとって未知の世界だからな」

海は広い。ソウルアバターによってこのような比較的容易に深海まで訪れる事が出来るようになって、種々様々な人間が探索するようになってもまだまだはっきりとした全貌がつかめたというには程遠い状況だ。

「神の定義に合致するかはさておき、陸の生き物を水中に適合する様な生態改良を施せる高度な知的存在がいてもおかしくはないか」
「でも、本当にそんな生物が居るならなんで今まで見つかっていないんだと思う?」
「さあ、海の底の連中相手じゃ思考ロジックからして違いそうだ。積極的に侵略戦争を仕掛けてこないだけでも御の字……⁉」

不意に海中の泥の中から三体の巨大な人型が持ち上がる。ソナーに感知されなかったのは泥の中に潜んでいたが故だ。ソナーは音波振動を手がかりに海中の存在を探るという仕組みのため、音波が反響しにくい環境の存在は探知するのが難しい。

暗緑色の人型存在は隊列を組んでその腕に握った銃と同形状の物体から機関銃のように長針を撃ち出す。水圧下の圧迫を切裂き乱射される針を螺旋回遊運動によって避け切ると、俺は共通通信帯域での接触を試みた。

「待て!何故攻撃してくる、この海域は緩衝地帯だろう?」

こちらの通信への応答はなく、三体の暗緑人型はその背と思しき部位からそれぞれ二本、計六本の円筒型誘導魚雷を投射しこちらに差し向ける。音もなく高速で迫る魚雷は、深海の暗さと相まって知覚しにくい。

「問答無用とな!」

徐々に実際の海中での動き方を理解してきた俺とイクサはまずは抜刀で迫る二本の斬撃破壊。追い来る残り四本を追わせながら海中をUターン航行し、暗緑潜水人型の一機を追う。

その間M・Hは二機の暗緑潜水人型をそのクジラその物の巨体に似合わぬ運動性で翻弄。深海にも関わらず微塵も損なわれていない航行速度で周遊から渦を作り出すと迎撃ニードル射撃を繰り返す潜水人型を巻き込み、巻き上げていく。

上方へもみくちゃにされていく潜水人型二機を横目にしつつ、眼前の残り一機の目前て水泳選手がターンするように敵を足蹴にすると急反転、こちらの極端な機動に追従が遅れた魚雷群は放った当事者に四本すべてが突き刺さり、炎が巻き起こった。

そして残りの二体は既にM・Hの駆る機体がフレイルめいて振り下ろした尾撃の一撃でもってまとめて海底へと叩き落されて泥中に没する。天高く巻き上がる泥の噴煙。

「タンマ!タンマ!降参だ!」

劣勢と判断したか、ようやく通信に白旗を告げる応答が返ってきた。

【パンドラ・イン・ジ・オーシャン -3-:終わり:-4-へと続く

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