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いざなうはワールド・コーン・ラビリンス -19- #ppslgr

植物特有の細胞が積み重なり出来上がった巨大トウモロコシの内壁は、有機物で出来た要塞内部を想起させる。もちろん、動物の臓腑のそれとは異なるのでグロテスクさこそなかったが、やはり異常な空間であることには変わりはない。

「なあR・V、何か周波音みたいなの聞こえね?耳鳴りみたいな」
「いや、俺は聞こえないな。王子は?」
「私もだ。A・Kだけに聞こえているのではないか」

怪訝な顔で否定する王子。俺自身も回答した通り彼の言う耳鳴りは感じない。だが、この異常な状況ではどんな些細な事も軽視すべきではないと判断する。

背に背負った荷を下ろすと小物が入った箇所から、二粒の耳栓を取り出してはA・Kへと手渡しつけるように説明。渋々耳栓を耳穴に突っ込んだ彼はすぐにほっとした表情を見せる。

「お、お……止んだわ」
「ないよりはましだったな。俺達の声は聞こえるか?」
「聞こえにくいけど何とか」
「よし、替えはあるから戦闘になったら躊躇せず外してくれ」
「了解」

トウモロコシで出来た冒涜の塔内部を探索に戻る。植物同様の造りだとすれば、この通路は恐らく本来は水管、水分を通す為の器官だと推測できるが一方で何故今は空虚な空間となっているのだろうか。

「ヒョウタンを道具に作り替えるように、成長し切った後はある種の建築物として活用しているのか?」

テラフォーミングを兼ねた揚陸艦と考えれば機能面ではそこまでおかしい所はない。おかしいのは何から何までコーン尽くしな所だが、そこはもう言ってもせんがないだろう。邪神に何故邪神なのか問うようなものだ、そして邪神は理由や意図などなくあるがままに人間にとっては邪悪な神なのである。

「ところでR・Vは気づいているのか?」
「妨害がない事なら」
「あ、言われてみればあんだけしつこく出てきたコーンが全然いねぇ……」
「大方誘い込まれているんだろう、さっきの調査員の挙動からしてな」
「ちょっ、まっ、それわかってて中入ったのか!?」

信じられない、という顔のA・Kに対して大げさに肩をすくめて見せる。

「罠はかかったふりして踏み砕く主義でな。ま、無理ならしっぽ巻いて逃げるが」
「それ良く生き残ってこれてるな……」
「生き汚いのが取柄でね」

他愛のない雑談を続けながらも、半ばリラックスした状態で探索を続ける。緊張半分、リラックス半分くらいでないと咄嗟のトラブルには対応が難しい。

しかし、こちらの警戒を他所に一向に敵生体が出てくる様子はない。周囲の壁と廊下を構築している細胞壁が変質して襲い掛かってくるという事もないので一転して内部深奥まで誘い込まれているのは間違いないようだ。

ゆるくカーブを描く、長い長いらせん状の通路を歩き続けてたどり着いたのは、推測するに巨大トウモロコシの中心部にあたる部分だ。

中心部は王の居室めいて大きなゲートで仕切られており、中は円形の広場。そして広場の奥にはあのブロンドの調査隊員が虚ろな表情で棒立ちしている。かと思えばガクガクと痙攣し奇怪極まりない挙動をしながら声を絞り出した。

「aーfーr-y-……あーあーあー、こうか。何と繊細で扱いにくい発声器官な事か」

明らかに人間の振舞からかけ離れた発声練習の後、隊員はぎょろぎょろと焦点が定まらないままに激しく眼球をうごめかせた後突如こちらを凝視してきた。

「待ちわびたぞ!我らの楔にして王よ!」
「は?王?だれが?」

隊員、いや彼女を乗っ取ったコーンはいきなりとんでもない事を言い出した。王だと?だが洗脳コーン隊員の視線の先は俺でもなければ王子でもない。まっすぐにA・Kに突き刺さっていた。

【いざなうはワールド・コーン・ラビリンス -19-終わり:その-20-へ続く

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