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夢に舞うは胡蝶、現に横たわるは蚕蛾 -49- #ppslgr

けん玉めいた焼却者、その中央の星を中心として、太陽系のごとく幾つもの惑星が周遊し始めれば周囲の光景も一転して夢幻の銀河に取って代わった。
その中には先ほど俺が斬り落とした星もまた含まれている。

「キリがないな全く……!」
「この空間は既に私の世界その物、世界自体を滅ぼせる人間など居るわけがない!」
「大きく出たじゃないか!なおの事、斬りがいがあるというものだ!」

だが、大剣を握りなおしたイクサの機体が徐々に焼却者より遠ざけられていく。この感覚は、重力制御によって反発力が生じている。あの惑星フォーメーションは、反重力圏を形成し異物である俺達をはねのけているようだ。

「無駄だ無駄だ!例え君達自身に干渉できずとも、現実改変であれば破壊する手立てはいくらでもある!」

仰々しくその白亜の塔その物の腕を振り下ろしたる焼却者の誘導し従って、遥か星空の彼方より無数の物体が飛来する。イクサのモニタに表示されたるは大質量の物体の群れ。

「隕石か!」
「R・V!こっちは今迎撃できないよ!」
「わかってる、任せろ!」

飛来する無数の隕石群を前に、ソロモンとシャンティカの二人を護る様に位置どると、足を大きく開いては両手を組んでまっすぐ前方に突き出させる。
力強く組まれたイクサの両手の周囲に、量子励起による仮想砲身の蒼い蛍光が螺旋を描いて隕石流雨のど真ん中に射線を形成。

「こいつは俺の取って置きだ、ようく目に焼き付けな!」

俺の射撃指示と共に、迫りくる流星群へ向けて、膨大な光で形成された螺旋なる渦が光の速さすら超えて解き放たれた。暴虐としか表現できない莫大なエネルギー量の砲撃は地球地表を焼き尽くすに足る隕石の嵐すら余さず飲み込み、銀河の彼方の果てまで押し流していく。

「……もしかして私、今神様の戦争に巻き込まれてるんじゃ」
「ここには人間しかいないよ、大丈夫」
「それはそれで何一つ安心できないんだけどーっ!」
「弓を取るんだシャンティカ!勝たなきゃ帰れもしないぞ!」
「……ええ、やってやるわ!」

二転三転する環境にも既に克服したか、力強く弓を取るシャンティカ。
だが次の瞬間、俺達三機の周囲を見た事もない異形の物体が霞がぶれる様に現れては隙間なく球形の包囲網を形成した。

油膜の様に虹色に瞬くドーム状の目を不規則に表層に張り付けた、岩石質の槍の穂先といった風情の個体。あるいは苦無の様に尖った小さな個体の群れで出来上がった集合型。さらにはなまめかしい緑色の肉がきちっと正方形を維持する個体など、世界というのは実にバリエーション豊かな存在を内包するという事をこちらに実感させてくる。

「やはり現実改変というのは厄介な能力だな!」
「関心してる場合じゃないでしょ!」

出所不明な異形の軍団はじわり、じわりと包囲網を狭めてくる。
もはやターゲットである焼却者の姿すら見通せない密度だ。

「万事窮すか……?」
「大丈夫、間に合ったよ」

M・Kの言葉と共に、包囲網の一部が橙の熱い爆炎によって一気に吹き払われた。

【夢に舞うは胡蝶、現に横たわるは蚕蛾 -49-:終わり:その-50-へ続く

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