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戦艦でマグロを釣りにいくんですか?おかしいと思いませんかあなた?-8-

 雷雲から降り注ぐ雨がしとどに武蔵、クラゲ、俺の機体の三者を濡らしていく。もちろんこの程度の天候変化の影響は、ソウルアバターには小さく、然したる障害ではない。

 背のスラスターを青白く輝かせ巨大クラゲから距離を取りつつ身を翻し海中にダイブ、公共通信帯域でクラゲモドキを操るグリーンだかブルーだかのうさんくさマグロ保護団体代表を煽ってやった。

「貴様の目的はマグロ保護ではなく、回遊マグロ資源の独占による闇マグロ価格の高騰だろう?」

 先ほどから半狂乱になって喚いていたマグロ保護団体代表、いやマグロ独占密漁団代表は俺の言葉にはたと黙り込んだ。昨今、マグロは全世界で需要が高まり、価格の高騰が続いている。そこにこの様な形でマグロを抱え込んで流通量を大幅に引き下げてしまえば需給バランスは極端に崩れ、物好きでアホなカネモチが優越感目当てに闇市場へと遇された価格高騰闇マグロに大枚をはたくという訳だ。

「なっ、ななななななな何のことだかさっぱりぜんぜんわかりませんねぇ!」
「A・D」
「おうよ。おいクラゲ野郎、お前がこの海域を警護させていたマグロ密漁海賊船はかたっぱしからこの俺が沈めてやったぞ」

 しばしの沈黙の後、闇マグロ密漁団代表INクラゲは抵抗をやめて急速に海中に没そうと潜航し始めるが、判断が遅い。既に俺はクラゲの直下へと潜り込んでいた。俺ごと潜航しようと海水を溜め込むクラゲの下っ腹へと機体の両手を突き上げる。

「たっ、たかが一機でこの質量を持ち上げられる訳が!?」
「出来るんだなぁ、それが!!!」

 既に海中へと潜航する巨大クラゲ型マグロ密漁兵器は俺の乗機である黒い騎士によって押しとどめられ、逆に海上へと持ち上げられていく。蒼い光が海水を切り裂いてたなびき、処刑台めいてクラゲ密漁兵器を空中まで押し上げた。

「やれ!A・D!」
「おうとも!」

 武蔵は一度納めた刀を腰だめに構え、踏み込みながら一閃、更には巨大日本刀を振り下ろし十字に亀裂を走らせる。潜航を無理やり持ち上げるという力業で阻まれたマグロ密漁首領は抵抗する事にすら頭が回っていない。

「続いて!全主砲!撃てッ!」

 斬撃の十字痕に向かって放たれる46サンチ三連装砲の轟音を伴う砲撃が雨あられと砲弾をクラゲへと集中砲火、逃がすことなくマグロ密漁兵器クラゲを穿ち続けた。例え1キロメートル級のサイズであろうと、至近距離からの戦艦の主砲、その集中砲火は耐えきれるものではない。分厚い透明隔壁は瞬く間にへこみ、ひび割れ、砕け散っては海水とマグロを吐き出していく。

「マッタ!マッタ!あなた達も我々の仲間になりませんか!?我々の仲間になればマグロは食べ放題!これ以上ない条件だと思いますが!」
「この期に及んで頭沸いてんのかテメェ、良いかマグロってのはなぁ……自分で釣るから美味いんだよ!」

 大上段に刀を構えると武蔵は渾身の力でマグロ密漁クラゲへと振り下ろす!斬撃はその刃の長さを遥かに超えてクラゲを両断!俺はしっかり巻き添えを回避!真っ二つに両断されたマグロ密漁兵器クラゲは海水をまき散らしながら爆発していく!解放されるマグロ達!

「アバーッ!マグロ独占夢……海の露と、ともに消ゆ……」

 俳句だか狂歌だかワカラン末期の言葉が、俺達に届いたマグロ密漁首領の最後の言葉であった。巨大クラゲマグロ密漁兵器は度重なるダメージで完全に崩壊し、海へと沈んでいく。マグロ密漁団首領本人も、よもやマグロの救援直訴によって滅びる羽目になったとは思うまい、南無阿弥陀仏……クラゲが滅びた時には雷雲は薄れ、合間から陽の光が戻ってきた。

【戦艦でマグロを釣りにいくんですか?おかしいと思いませんかあなた?-8-終わり:-9-へと続く

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