フレイルという名の凶器にも似た挙動で、勢いをつけてコーンの実がこちらに向かって振り下ろされる光景は中々に衝撃的だ。

コーン・ヒュドラの振りかざしたコーン触手を踏み込みながらすれ違いざまに斬り飛ばし切断！勢いのままに明後日の方向へ飛んで行って同胞の木々をコーン実が真っ二つにへし折る！横から、縦から襲い来るコーン触手殴打を飛び上がり、足蹴にして渡りながら斬り落としていく！

「二人共注意しろ！ツル玉の内部に羽音を感じる！」

王子の警告が早いか、次々首を落とされたヒュドラは本体のツルの玉を解きほぐして解放。内部に秘められていたのは、あのコーンフライの巣と思しきコーン実だ！子実が次から次へとフライに変貌し飛び交う！

「次から次へとうっとうしい！」

ヒュドラのツル触手殴打をスウェイ回避しながらも迫りくるフライを優先して両断し大地に叩き落す！異形の大地にコーンの亡骸が積み重なり辺りはコーンサラダめいた惨状だ！

「A・K！これは渋ってる場合ではないのでは？」
「わかってるっつの！三人同時に出て来てもらうのは疲れるんだけどな！」

A・Kの言葉に応じてすぐさま、彼の背後より坊主頭のミリタリー装備にルーンをまとったレディ・ドゥームと黒く塗りつぶされた人影のダーヴィが姿を現してはそれぞれ戦闘態勢に移る！

「一回当たったらアウトってのは厄介だね、だからこそ真っ先に焼いておこうか！」

レディが宣言すると同時にその身体に彫り込まれたルーンが瞬きを始め、中空に滞空するコーンフライ達はまるで電子レンジで長時間調理されたかの如く沸騰し燃え上がる！次々と焼きもろこしとなって大地に落下するコーンフライ！

続いて飛び出したのは光を返さない漆黒めいたマッスルマンのダーヴィだ！コーンフライの支援を失って荒れ狂うヒュドラのコーン頭部殴打を流れるように捌きながらカウンター掌底を見舞う！掌底が触れるたびに爆殺されたかの如くポップコーンになるコーン頭部！

「お前たちに恨みはないが、生存闘争とあらば負けるわけにもいくまい」

見る間に攻撃手段を失って弱体化するヒュドラのツルをエルフの王子の流星雨もかくやという弓術が回りの木々へと縫い留めてゆく！太いツルであっても何本も並列射撃によって貫く様は、巡回高速伐採マシーンの如き正確さだ！

「このまま畳みかけるぞ！」
「もちろんだ！」

イマジナリィ三人の恐るべき連携によって見る間に無力化されたコーン・ヒュドラに対し、俺達二人は追撃の手を緩めない。これまでの成長速度を鑑みて、徹底的に破壊する必要がある。

「フンッ！」

コーン・ヒュドラのツルが伸び切って露出した中核コーンに対し、一足飛びに踏み込み様から二刀交差斬撃！Xの字に切り裂かれたコーンを前にさらに二刀を束ねて一息に横薙ぎ一閃！そして迷わず前方に飛んで距離を取れば続いてA・Kが右手に構えたショットガンからの散弾射撃の嵐！

「オラオラオラァ！」

立て続けに叩き込まれる散弾の衝撃が中核コーンをずたずたに引き裂き破砕してなおA・Kの攻撃は止まらない！続けて左手に握った単発グレネードランチャーから榴弾をぶっ放す！

スポン、という間の抜けた印象を与える射撃音と共に撃ち出されたグレネードはコーン中核のど真ん中へと突き刺されば、ツルを巻き添えに爆発四散炎上！橙と黒煙を伴った炎が天高く燃え上がる！

「ど、どうよ……？」
「問題ない、息の根は止まっている」

俺の言葉を裏付けるように、中核コーンが徹底的に破壊された結果ツルは例外なく枯れ落ち始め、周囲の木の騒めきも収まっては奇怪な造形ではあるものの静かな森へと変わっていった。

「これでまだラスボスじゃねーんだよなぁ……」

彼のぼやきももっともだ。正門の守衛程度のボスでこれなら一体本体はどんな化物が出てくる事やら。

【いざなうはワールド・コーン・ラビリンス　-15-終わり：その-16-へ続く】

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