GPT活用の奥義1.メタメタ思考〜GPT魔法学校(α)
さまざまな人のプロンプト改善(赤ペン先生)をする中で、プロンプトを工夫する具体的なテクニックより、もっと根本的なスキルが必要だと気付きました。
今回は、GPTの奥義として「メタメタ思考」を紹介します。
はじめに
奥義を習得するには、「思考を停止し、内なる好奇心を解き放ち、意志を研ぎ澄ませ」という心得が必須です。思考をGPTに丸投げするのがコツで、まだ学ばれていない方は、こちらをご覧ください。
思考を停止して、内なる好奇心を解き放っても、意志を研ぎ澄まさないと、良い指示(プロンプト)にはなりません。意志を研ぎ澄ます奥義が「メタメタ思考」です。
メタメタ思考とは
「なぜなぜ分析」は有名ですね。「なぜ (WHY)」を何度か繰り返すことで、問題の根本原因にたどり着く思考法です。それにより根本的な解決策を考えられます。
「メタメタ思考」は、自分の意志を一歩引いて見つめ直し(メタ認知)、それを何度か繰り返すことで、根本の意志にたどり着く思考法です。なぜなぜ分析から連想して、僕が命名しました。
では、具体的に「GPT活用の教育カリキュラムを作成する」場合で、メタメタ思考がないとき/あるときを見てみましょう。
メタメタ思考がないとき
教育カリキュラムを作成する時、皆さんは、GPTにどんな指示をするでしょうか?ある程度の経験者は「目的はXXXで、対象者はYYYで〜」みたいなことを考えて、こんなプロンプトになります。(直感プロンプト)
GPT活用のための教育カリキュラムを作成してください
#目的
生活や仕事でGPTを活用する
#対象者
社会人
悪くないですね。でも、これだと思考を停止して、GPTに丸投げできていません。例えば、目的や対象者以外にも、もっと色々な条件を与えた方が、良い教育カリキュラムが作成されるかもしれません。
ちなみに、GPT-4の回答はこちら。
# GPT活用のための教育カリキュラム
## レベル1: GPTの基礎知識
### 1.1 GPTとは
- GPTの概要、歴史、バージョン
- GPTが解決できる問題、活用事例
### 1.2 GPTの仕組み
- 自然言語処理とは
- GPTのアーキテクチャ(トランスフォーマー)
- 学習データと事前学習
### 1.3 GPTの制約とリスク
- GPTの限界
- 倫理的・法的なリスク
## レベル2: GPTの活用方法
### 2.1 GPTを活用するための準備
- GPT APIの利用方法
- 必要なツールとライブラリのインストール
(続く)
悪くないですね。カリキュラム内容が作成されています。
メタメタ思考があるとき
では「教育カリキュラムを作成する」という生煮えの意志を、一歩引いて見つめ直すメタメタ思考をしてみましょう。自分の背後や上空から、自分の意志を見つめて、研ぎ澄ますイメージです。
「質の高い教育カリキュラムを作成するには、どうすれば良いか」と困っていることに気づくのではないでしょうか?
であれば、そのお困りごとを、そのままGPTに指示しましょう。例えば、こんなプロンプトです。(メタプロンプト)
質の高い教育カリキュラムを作成するには、どうすれば良いでしょうか?
GPT-4の回答はこちら。
質の高い教育カリキュラムを作成するためには、以下のステップを踏んでください。
1. 目標と目的を明確にする: カリキュラムの目的や学習者が達成すべき目標を明確に定めます。これには、学習者がどのようなスキルや知識を習得することを期待しているのかを把握することが含まれます。
2. 学習者のニーズを調査する: 対象となる学習者のニーズやバックグラウンドを理解することで、適切な教材や教授法を選び、効果的なカリキュラムを設計することができます。
3. 教育内容を網羅的にする: 重要なトピックや概念を網羅的にカバーすることで、学習者が必要な知識やスキルを習得できるようにします。
4. 順序立てて構成する: カリキュラム内のトピックや教材を効果的な順序に配置し、学習者が段階的に知識やスキルを習得できるようにします。
5. 多様な教授法を取り入れる: 講義、ディスカッション、グループワーク、実習、シミュレーションなど、さまざまな教授法を取り入れることで、学習者の理解を深め、興味を持続させることができます。
6. 学習者の評価方法を設定する: 学習者の成果を評価するための方法を設定し、定期的にフィードバックを提供することで、学習者の理解度や進捗状況を把握し、必要に応じてカリキュラムを調整します。
7. カリキュラムの改善とアップデート: 学習者や教員からのフィードバックを受け取り、カリキュラムの改善やアップデートを行うことで、時代の変化やニーズに応じた質の高い教育内容を提供し続けることができます。
8. 教員の研修やサポート: 教員がカリキュラムを効果的に教えるためには、適切な研修やサポートが必要です。教員向けの研修や資料を提供し、カリキュラムの目的や教授法について理解を深めることが重要です。
メタメタ思考がないときの直感プロンプトと比べると、
そこで、指定したい条件は設定して、そうではないものはGPTに考えてもらいましょう。これで、研ぎ澄まされたプロンプトになります。(内省プロンプト)
上記のステップを踏まえて、教育カリキュラムを考えてください。ただし、下記の条件は考慮してください。
1. 目標と目的: 生活や仕事でGPTを活用する
2. 学習者のニーズ: GPTを使ったことがあるが、効果的な活用方法が分からないので知りたい
GPT-4の回答はこちら。
教育カリキュラムの例:
1. カリキュラムの目的: GPTの効果的な活用方法を学び、生活や仕事での活用スキルを向上させること。
2. 学習者のニーズ: GPTを使ったことがあるが、効果的な活用方法が分からないので知りたい。
3. カリキュラム内容:
1) GPTの概要と基本概念
- GPTの歴史とバージョンの違い
- GPTの技術的な仕組み
- GPTの活用事例
2) GPTの効果的な活用方法
- GPTを使った文章生成のポイント
- GPTによる質問応答の活用法
- GPTを用いた要約や翻訳の方法
3) 実践編: GPTを活用したプロジェクト
- プロジェクトのアイデア出し
- GPTを使ったプロトタイプ作成
- フィードバックと改善案の検討
4) GPTの限界と今後の展望
- GPTの制約と対処法
- GPTの倫理面での懸念
- GPTの今後の発展と技術動向
4. 教授法: 講義、ディスカッション、グループワーク、実習、ケーススタディ
5. 評価方法:
- クイズや小テスト: 各セクション終了後に学習内容の理解度を確認
- 実践編プロジェクト: GPTを活用したプロジェクトを通じて、学習者のスキル向上を評価
- 反省とフィードバック: 学習者が自分の学びや成長を振り返り、今後の学習の方向性を設定
6. 教員の研修とサポート: GPTの専門家や教育者が教員向けの研修や資料を提供し、カリキュラムの目的や教授法について理解を深めることが重要である。
7. カリキュラムの改善とアップデート: 学習者や教員からのフィードバックを受け取り、カリキュラムの改善やアップデートを行い、時代の変化やニーズに応じた質の高い教育内容を提供し続けることができる。
このようなカリキュラムを通じて、学習者はGPTの効果的な活用方法を学び、生活や仕事での活用スキルを向上させることが目的です。
最初の直感プロンプトでは「3.カリキュラム内容」だけが作成されていましたが、今回の本命プロンプトではそれ以外の「4.教授法」や「5.評価方法」まで網羅されています。これは、メタプロンプトで指示した結果を踏まえたおかげです。
このようにメタプロンプトで指示して、さらに本命プロンプトで指示すると、GPTが段階的に思考できます。専門的には「CoT (Chain of Thought):思考の連鎖」の一種と言えるでしょう。
また、直感プロンプトと内省プロンプトは、人間の認知の仕組みの二重過程理論におけるシステム1(直感・速い思考)とシステム2(内省・遅い思考)に対応します。直感では認知バイアスが邪魔しますが、メタメタ思考を経た内省によって、バイアスの少ない指示(プロンプト)ができるようになります。
そして、メタメタ思考の副産物として、「クリティカル・シンキング(批判的思考)」のスキルが身につきます。GPTはたまにウソをつくこと(ハルシネーション)が問題になりますが、クリティカル・シンキングによって、真実かどうかを見分けられるようにもなります。
まとめ
思い付きをそのまま指示する「直感プロンプト」はやめましょう。メタメタ思考によって、一歩引いて意志を見つめ直した「メタプロンプト」で指示して、その結果を元に「内省プロンプト」で指示すると、より良い結果に繋がります。専門的には「CoT (Chain of Thought):思考の連鎖」の一種です。そして、メタメタ思考を経た内省によって、「クリティカル・シンキング(批判的思考)」のスキルが向上し、GPTのウソ(ハルシネーション)を見抜けるようになります。
つまり、メタメタ思考により、人による指示が改善し、GPTへのインプットが改善することでGPTのアウトプットも改善し、人による解釈の能力も向上するのです。
おまけ
弊社では、法人向けにセキュリティ対策やプライバシー保護を重視したGPTプロダクトを発表しましたので、ご覧ください。
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