組織設計の変遷

ゆめみの現在の組織設計には様々な変遷があります。

創業期(2000〜2005)


社員も社長も同級生という状態であったので、対等な関係性で議論ができる文化がありました。

役割にこだわる事なく、それぞれの強みを活かして柔軟に動く組織であったと思います。

一方で、組織の人数が30名を超えだし、顧客向けの開発プロジェクトにおいて、計画性を持って実施していくプロジェクトマネジメントの能力不足が露呈したり、個人に依存しない組織設計や、一人の暴走を防ぐようなガバナンスが無いといった事もあり、中途採用を行う中で、仕組みの構築が必要となりだしました。

組織形成期(2005〜2009)


中途入社のメンバー中心に、マネージャーを設置して、一般的な経営管理システムを一通り導入して、組織を形成しました。

・目標管理制度
・評価制度
・給与制度
・各種組織規定・職務権限規定
・稟議、承認フロー
・取締役会や内部統制によるガバナンス

など一般的な仕組みを導入して、真面目に運用したことによって、安定性を作ることができました。

受難期(2010〜2013)


一方でゆめみが扱うプロジェクトの規模が大きくなるだけでなく、非常に高品質が求められるプロジェクトが大きくなる中で、従来の経営管理システムでは、個人の力に依存する事になり、特にマネージャーへの負担が大きい状況が生まれました。

その結果として、マネージャーは退職はしないものの、「ギブアップ宣言」を行なって、違う職種や、別事業の異動するといった事が発生して、結果として、私が代表兼部長という事を繰り返すことが多く、受難の時期が続きました。

非常に優秀なプロジェクトマネージャーなので、それでもギブアップするという事は、個人に問題があるのではなく、従来型の組織に問題があると感じて、組織設計に踏み込む事になりました。

第一変革期(2014〜2017)


創業から、プロジェクト制をとっており、管理部門・事業部門の活動は、全てプロジェクトの集合体という形になっています。

プロジェクト単位で見るとクロスファンクショナルな組織になっていました。

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2014年に人に役割を割り当てる方法から、役割に人を割り当てるロールドリブンな組織設計に変えました。

また、事業部の中では、いくつかの、ビジネスユニットに分かれる形になっていました。

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ここでユニット毎にPF担当と呼ばれる採算責任を負う役割がいました。一般的な会社に例えると、部長あるいは課長という役職者に相当しますが、ロールドリブンな役割設計では意味が大きく異なります。

一般的な組織の役割設計を見てみます、

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一般的な組織の役割設計は、人に役職(肩書)が紐づいて、役職に複数の役割が紐づくという設計になっていると思います。

部長であれば、部のマネージメントスパンに対して、複数の役割が割り当てられますし、課長であれば、課のマネジメントスパンに対して、複数の役割が割り当てられます。

会社によっては、明確に役割は定義されず、とりあえず部・課・ユニットといった一定単位の中で、あらゆる責任を負うという暗黙のルールが成立している場合もあるかもしれません。(これ、辛いやつですが。。)

この設計のメリット・デメリットとしては

メリット
・責任者、相談先が明確である
・経営視点から見ると、結果に対しての管理をする形で管理がしやすい
デメリット
・責任者に負担が集中で単一障害点になる
・役職に対しての役割が曖昧になりがち

などが挙げられます。

もちろん、デメリットについては、副部長、課長補佐、主任といった形で様々な肩書きを用意して、マネジメントの役割を複数人で分担することも可能だと思います。逆に、肩書を昇進という報酬として活用が過ぎてしまうと、責任や役割が不明確な役職者が増えて、長期的には役割分担がうまくいかなかったりします。

ゆめみでも、10年以上前は、役職者を設置して管理していました。ところが、我々が扱うビジネスにおいては、プロジェクトマネジメントの複雑性が高くなり、プロジェクトマネジメントという役割の重要度・難易度が高くなってきました。

したがって、課長・マネージャーという役職者にとっては、プロジェクトマネジメントだけでも大変なのに、その他の役割まで見ることはとても辛いことでした。

なにせ、売上・利益・顧客満足・品質・組織・人事をカバーするいうのは、非常に制約が多い問題であり、結局、自分が頑張るという事になりがちだからです。

実際に、めちゃくちゃ優秀なPMでさえ、部長・課長という役職を与えられる中で、辛過ぎてなかなか続かないという現象・課題が発生していました。。

こんな優秀なPMでさえできないのは、人の問題ではなく、仕組みの問題だ。。。

そう感じる中で、

「頑張れば結果が出る」という原因と結果がシンプルなゲームであれば良いのですが、複雑性が高いゲームの場合は、その複雑性に合わせた設計が必要になると考えて、組織設計の見直しを行う必要性を感じました。

このような背景から、10年程前から役割設計を少しずつ変えて、2014年からは以下のように完全に役割設計を切り替えました。

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ロールドリブンの役割設計は、まず会社や組織に必要な役割を洗い出します。そして、役割に対して、それを担当する紐付けるという考えになります。

そして、一つの役割に対して、複数の人が紐づけることが可能であり、複数で役割を分担できる形になります。

この設計のメリット・デメリットとしては

メリット
・得意領域を活かした役割設定が可能
・複数人で役割を分担可能
デメリット
・最終責任者が曖昧になりがち
・マネジメント担当同士が密に連携しないとカバーできない範囲ができる
・最終的には、未割当の役割を誰かがカバーしないといけない

が挙げられます。

この設計によって、複数人でカバーすることで一人への負担が無くなったり、単一障害点がなくなることで、組織の安定性は増しました。

運用する中でも、以下のような責任論についての議論はありました。

・人のマネジメント(People Management担当)をしない・得意ではないいう人が、マネジメントの役割を担うべきなのか?
・売上・利益・予算責任(Profit Management担当)を考えない人が、プロジェクトマネジメント担当をするのは問題ではないか?

つまり、それぞれのマネージャー像、PM像というものがあり、独自の仕事観もあるので議論が生まれました。ただし、こう言った議論は、統一的な「マネージャー像」を作っても、議論が起きるものです。むしろ、マネジメントの役割は分担できるからこそ、一人一人が活躍できる役割から、まずはスタートして、いずれは全ての役割をできるようになれば良い、という設計方針を説明して納得してもらいました。

一方で、結局、ロールドリブンということは、例えば、ある課の役割に対して適切な担当者が未割当の場合は、「TBD(To Be Determined)」という状態になります。それによって、無理のない割当がなされるのは良いのですが、未割当の状態が不都合な場合は、結局、誰かがカバーしないといけません。。

あるケースでは、他の部門の誰かがカバーするケースもあれば、あるケースでは、執行役員・オフィサーといったより大きな職責を担う人が結局カバーするという事もありました。

何れにしても、マネジメントという役割を細分化して、チームで分担していく分散マネジメントという発想でずっと運用をしてきました。

第二変革期(2018〜2020)

その後、2018年となって、組織規模が150名を超えてくるタイミングで、将来的に1000名体制を目指す中で、スケーラブルな組織設計を考える必要が出てきました。

以前までの組織構造では、マネージャーに負担を押し付けるわけにはいかないので、結局、執行役員・オフィサーに負担が集中する事になりますが、組織規模が1000名を超える中では、執行役員・オフィサーが対応するには現実的ではない事が見えてきました。

そこで、これまでのプロジェクト制を保持しながら、役割を細分化して定めるこれまでのやり方を発展させて新しい組織形態にシフトを行いました。

そのタイミングで

ホラクラシー 
ティール組織
Scaling Agile
海兵隊組織

などを参考にしながら組織設計を再設計しました。

合わせて、
・企業文化
・評価制度、能力開発制度
・企業統治や責任・権限分担
など、組織設計だけでなく、会社全体の構造を再設計しました。

特徴としては、

・組織としては階層的に目的や業務を分解していく意味での「階層組織」は維持
・権限については上位から下位に移譲するのではなく、それぞれの業務を担当する組織(チーム)が全ての権限を持つ
結果についての責任を問わず、結果責任を負う責任者・役職者や役割を設けない
評価制度と給与制度を分離して、評価は個人の成長の観点のみで行い、給与は自己決定とする
・意思決定プロセスとしてティール型組織の助言プロセスを採用

などを行いました。この辺りについては、少しずつ詳細を書いていければと思います。

実際の運用やチューニング、理解浸透には時間がかかるので、課題として、時間がかかる事も認識した上で、焦らず、継続的に行う予定です。


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