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【超短編小説】『ツイハイ』

NovelJam 2018年2/10~12日の3日間、著者・編集者・デザイナーの三者がチームとなって小説を作り電子書籍出版をする合宿「noveljam2018」に参加しました。そこで完成した小説「ツイハイ」を、全文無料公開します。7000字程度です。

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「ツイハイ」

〈著者〉渋澤怜〈編集者〉ふじいそう〈デザイナー〉澤俊之


@TuiitterJP「【Tuiitter Japan サービス終了のお知らせ】このたびTuiitter(ツイイッター)ジャパンは平成31年4月30日をもちまして、サービスを終了することとなりました。平成からの新元号への移行にともなうコンピュータシステムの対応、通称『ヘイセーション』による業務負担について検討を重ね……https://help.Tuiitter.com/ja/……」
@spring41111「RTこれマジ?!」
@dnugws「番組の途中ですがTuiitterさんが生前退位されるご意向を示されました」
@gayama596「は?! ヘイセーションとか完全に言い訳じゃん。『日本のTuiitterはオワコンだからバイバーイ(笑顔)』ってこと?」
@yangotonaki5104「最近のTuiitter、凍結とかTL改悪とか、あきらかに様子がおかしかったけど……まさかここまで……ご乱心だな」
@ymmatomomomo「てかそんなにヘイセーションって騒ぐことなの? 知り合いのエンジニアに聞いたら2000年問題の五億分の一くらいしか大変じゃないし、しかも2000年問題も結局騒ぐほどじゃなかったし、って感じだったよ?」
@yuuna54071「天皇制とか元号とか完全にどうでもいいと思って今まで生きてきたけど、初めて人生に影響が出た……ふつうに困る……仕事も友人関係も全部Tuiitterにたよってるのに……」
@tabbatabatabata「いやいやTuiitterいつまでも和暦のままじゃそもそもブロックチェーンとか仮想通貨に対応できないじゃんか。てかTuiitter和暦だったのかよ。インステやFBが当然のごとく西暦対応だったのに、ここでまさかの。まあわざわざヘイセーション乗り越えるのもコストかかるし、やむを得ないのでは。」
@tabbatabatabata「てかTuiitter、なんで和暦?!……と思って調べてみた。そもそもこれ、大学生が遊びで作ったサービスがもとで、それを会社が買って、でもそのままのシステムで来ちゃってるから、内部がガタガタだそうで。エンジニア的にはヘイセーションがきっかけで終了ってのは頷ける話らしい」
@tamattabatabata「タバタさんがそういうのなら仕方ないのか、イッターは」
@ramenkoyuki「とりまTuiitter民はインステかFBに移れってこと?」
@enojunjunjunno「インステはおしゃれじゃない人は入れないって聞いたんだけど……」
@kotonakaremmm「外国のTuiitterサーバに移動するのは? って思ったけど、どこも新規アカウントの作成を制限してる……同じこと考えてる日本人が殺到してるんだろうな……」
@kento2112kento「うちのお母さんはインステに、妹はFBに行きました。おかあさんはインステで半顔メイク写真をupし、妹はFBで彼氏と海に行ったビキニ写真をupしています。僕はどちらを見るのも嫌です」
@dalaimamam「顔本始めて同級生にネットで見つかるくらいなら死んだほうがマシ」
@izumirika30「FBって本名マストなの? だったら大半のTuiitter民は死亡なのでは……?」
@rengepanch「アニメアイコンでも登録OKな場所はありますか?」
@ohkitashigewo「ラ、LIME……?」
@ririmukiss33「ら、らいむ……?!」
@uuuuuhuf「Tuiitter民がクラスタごとにLIMEグループを作って疑似TLを作る、か……いや、無理があるな。拡散希望とかバカッターも過去のものとなるのか……」
@yubayubaisuka「生前退位されることで俺たちがこんなに困っていることを天皇陛下はご存知なんだろうか」
@gencha1992「天皇氏ね」
@machinoHH「天皇死なないで! 平成を永遠に生きて! ヘイセーションを迎撃して!」
@wakuiyumiLOVE「#Tuiitter死ね がトレンド入りってどういうこと? みんな大丈夫? 凍結されるよ?」
@yuta1982hello@wakuiyumiLOVE 逆に凍結が追い付かないのでは」
@omo_news「【実証】Tuiitter死ねと言うと凍結されるが、天皇死ねと言っても凍結されない(画像つき)」
@RayYom「Tuiitter終了のお知らせから飛び火して陛下の生前退位までもが非難される向きもありますが、むしろ陛下が生前退位を示されたことでヘイセーションに事前に対応できたわけで、そこはネット時代を生きた初の天皇としてかなり賢明なご判断をされたのでは」
@uu823「2000年問題もボヤにすぎなかったわけで、ヘイセーションもボヤに終わるに決まってる。Tuiitterジャパンに終了の口実を与えてしまった。やっぱり死ね」
@pandagahara「単純に、純粋に、Tuiitterがなくなると、こまるなーー。平成元年生まれの僕は思春期からずっとTuiitterを使ってた。友達もTuiitterでみつけたし、会話も全部Tuiitterだし、てかTuiitter上で生きてるようなものだし。ずっと勤めてた会社がつぶれるとか、国が亡びるとかって、こういう気持ちなのかな」
@Yuking194「なぜTuiitterだけ? FBやインステはヘイセーション関係なくサービス継続なんでしょ?」
@sad_dadaist@Yuking194 だからTuiitterだけ和暦対応だったからでしょ。そもそもその時点でおいおいって感じだけど。ま、いろいろ余裕ないから日本を切りたいんだろ」
@sounisimura「日本人の悪癖が招いた事態。為政者の交代によって変わる『元号』なんてジャーゴンをいつまでも使い続けた報い。大国・中国とて1912年の清国滅亡を最後に元号は廃止している。小国なら小国らしく大勢におもねってキリスト暦に染まるべき。まあ、もう遅いがな」
@sounisimura「あるいは東南アジアの数国が使う、仏滅紀元ならキリスト暦のように増え続けるだけだから永遠にヘイセーションは起こらなかった」
@snysny「Tuiitter社がわけわからんこと言い出すのは今に限ったことじゃない。我々は神の手の平で踊らされる哀れな民なんだよ……さ、引っ越し先考えよ……」
@alpha_iida「ディアスポラだなー」


 Tuiitter Japan終了が告知されたその日のTuiitterは、普段の5倍のツイットが流れた。それはまるで、葬式の日だけ大勢の知人が詰めかける老人のようであった。
 しかし、早くも翌日、あるアメリカの巨大企業のCEOのツイットによって、事態はさらなる展開を迎えることとなる。

@YappleNolan「hey guys! I made a new Tuiitter hor everyone in Japan! Ten million accounts are available on first-come first-serve basis so you can immigrate here with a simple procedure!(昨晩、僕が新しいツイイッターを作ったよ! 日本のみんな、ひとまず試験的に先着1000万アカウント限定だけど、簡単な手続き一つでここに移住できるよ!)」

 閃光のごとく現れたこのツイットは瞬く間に5万RTされ、英語で発されたツイットのうち日本で歴代もっともRTされたツイットとなる。移住を受け入れる1000万アカウント分の枠も、その日のうちにいっぱいとなった。
 ノーラン氏は、抱えているエンジニアをフル動員させ、一晩でTuiitter Japanの代わりとなるものを作り上げてしまったという。それは同じことをしようとしていた日本の資産家やIT企業のどこよりも早く、そして正確な仕事だった。

@earth_mo「ネ申」
@discussayano「ノアの箱舟?」
@XXstdass「ノーランの箱舟?」
@popover_san「ノーランの箱舟に、乗ーランか?」
@higouhouya「俺、つがいじゃないですが……」
@megacykota「新天地Tuiitter、むしろぬるいユーザーが抜けて快適になったのでは?」

 この、ノーラン氏によってつくられた新しいTuiitterは、Tuiittetter(ついいったったー)と名付けられた。「イッター」と呼ばれていた旧サービスと区別すべく「タッター」と略されることとなった。
移住に成功した日本の先鋭タッターユーザー達は、ノーラン氏の尽力に感謝するとともに、アメリカの巨大企業のCEOとはいえなぜ一個人が莫大な金と労働力を投じて我々の移住先を作ってくれたのかという大きな疑問を抱くこととなった。

@matometaro_bot「【日本のTuiitter民の救世主】ビル・ノーラン氏って? 
「『ビル・ノーラン氏は、アメリカ初の世界最大のIT企業ヤップル社のCEOであるとともに、マッドな日本アニメオタクとしても知られている』とな……」
@ohnuki_SATOSHI「『多くの世界的資産家たちが「富を社会に還元する責任がある」と考え社会奉仕活動や慈善目的に財産を投じる中、ノーラン氏は「社会貢献? ビビっと来ない」と一蹴。「ビビッと来る」フィギュアやアニメアイテムの収集に執念を燃やしている』……この人ガチだわ」
@animeyutori「『世界的企業のCEOの中で、アメリカ「クロニクル・オヴ・フィランソロピー」の発表する国内の慈善家トップ50のリストに名を連ねていないのはノーラン氏のみ。ただし日本アニメクリエイター連盟への寄付を計上すれば、トップ20に入る』……だそうです。と、とんでもねえ」
@yukuhitokuruhito「『今回のTuiitter Japan救済は、氏いわく「日本の文化の中核をなすコンテンツ産業を支える」という名目の社会貢献事業であるとのことだが、「日本のTuiitterを救うことが日本の文化を支えることになるのか?」という批判の声も上がっている』……確かに。」
@mairuimairu「騒動の最中ですが、ここでノーラン氏所有の痛ジェットをご覧ください」
@amaya__「痛車ならぬ痛ジェットをお持ちで……さすが世界トップレベルの資産家オタはレベルが違う……」
 新天地・タッターにおけるトレンドワードは「ノーラン」となり、それはなんと以後永遠に首位を独走することとなる。
@kayasans「ノーランって、ヤップルの社長ってこと以外知らなかったけど、調べたら尋常じゃない日本オタクなのな。オレンジの服しか着ないのは『ドラゴンボーヤへのリスペクト』とか……」
@abayan「@kayasans こっちの記事には『MARUTOの忍者の服装を真似てる』って書いてあるけど?」
@ryuuyaU@abayan ヒント:ノーラン氏は気まぐれ」
@dailynakazaki「ある時に社員の出したアイデアをボロクソに罵倒しまくったかと思うと、翌週のプレゼンでは、さも自分が考えたかのように素晴らしいアイデアとして話すのがノーランの常套」
@_machi_mochi「『気がノーランからポイ! ~ノーラン氏の気まぐれでボツにされかかったヤップル社の名品たち~』この記事見てたら俺が愛用してるポイパッドもボツになりかけてたらしい……てか、試作品のポイパはノーラン氏によって一度水槽にぶち込まれたそうな……」
@yukuhitokuruhito「ヤップルの社員は『明日の午後は雨が降るか?』に即答できなくてクビになったらしい」
@alpha_iida「海の機嫌は変わりやすい……」
@muishikinokoe「タッターも『気がノーランからポイ』されないか心配」
@BPM70000「ノーランの機嫌を損ねないようにしよう」
@hmy898「またツイ廃はごめんだからな」

 ツイ廃とは、2018年以前は「Tuiitter廃人」つまりTuiitterに没頭しすぎる人を指すネットスラングだったが、Tuiitter Japanのサービス終了の告知以降は「Tuiitter廃止」の意味ももつこととなった。またこの頃には、かつて流行したネットスラング「BAN」(もとは「禁止」の意の英語。日本ではネットサービスで違反行為等をしたアカウントが停止されることを示す)が、「Bery Angry Nolan」の意味で再流行することとなる。もちろん、veryをberyとしているのは、日本人がbとvを発音しにくいことにひっかけたジョークである。

@hahaha333「ドラゴンボーヤdisるとBANされるからな。あとMARUTO」
@yama1444「ノーノーラン、ノーライフ!」
@yunofujio「【朗報】ノーラン氏、日本のネットスラングに好意的反応
(日本のTuiittatterユーザーの間で「ノーノーラン、ノーライフ!」「BAN」等のノーラン氏にまつわるスラングが流行している、と聞き)『僕は日本人のそういうところが好きなんだ』『機転を利かせて、事態の急変にもすぐ対応する』とコメント」
@DrKamiyama「さすが船頭様。我々のスラングセンスを称えておられる」

 こうして、選ばれし日本のタッターユーザーは、新天地でのツイットを大いに楽しみつつも、「ノーラン氏の怒りを買うといつBANされるか分からない」という、うっすらとした危機感を常に纏ったまま、TLを漂うこととなる。
 それはまるで大海を漂う小舟が、常に海の様子を伺いつつ帆を進めるようだった。
「船頭様」のお気に入りのマンガの主人公「マルト」の誕生日には、普段ブルーでまとめられたタッターのUIが、その日限定でオレンジに変更された。それを「日本文化への愛のメッセージ」と受け取ったタッター民は、それにこたえるべくマルトのキャラクターのコスプレ、作品にまつわる情報、あるいは単にオレンジという理由でみかんの画像などを次々ツイットし、タイムラインは美しいオレンジ色に染まった。
 ちなみに、この日のためにわざわざ月光江戸村でロケをして本格的な忍者ショートムービーをツイットした、ノーランファンクラブを名乗る集団「乗ると」は、ノーラン氏に見染められ、なんと次のヤップル社の新製品の宣伝のイメージキャラクターに抜擢された。「アマチュアでも船頭様の目に留まればデビューできる」と考えたクリエイターの卵たちによって、以後、ノーラン氏やヤップル社にまつわる記念日には熾烈なツイット合戦が繰り広げられるようになった。そして「乗るしかない、このビッグウェーブに」という少々懐かしい言葉が束の間リバイバルしたりもした。
 ヤップル社の製品が、日本の禅にインスピレーションを得て「シンプル・小型」を志向していることを受け、ヤップル社新製品発表日には、まるで茶室のような狭い部屋の中にヤップル社製品のみを置いて一日暮らす日本人ミニマリストの動画が投稿された。コンクリート打ちっぱなしの無機質な正方形の部屋と、シルバーを基調としたシンプルなヤップル社製品がもたらすハーモニーが美しいこの動画はノーラン氏の目に留まり、なんとこの部屋の主はノーラン氏の訪問を受けたのだった。憧れの人が、はるばる海を渡って我が家を訪問してきたことは彼の至上の喜びであったろう。その建物を設計した建築家であった彼は、以後仕事が殺到し、名声を大いに高めることとなった。

 このように、ノーラン氏は過剰なほどにタッター民に目をかけていた。それは生まれたての我が子から目が離せない親の気持ちか、あるいは珍種を集めた動物園の園長の気持ちか。はたまた手塩にかけた盆栽を見つめる老人の心境か。ともあれ、赤子が生き延びるために親の機嫌を伺うように、常にノーラン氏の感情の機微を察し続けたタッター民は、やがて「ノーラン氏は『ちょっと変な日本人の習性』ネタが好き」ということを嗅ぎ取った。例えば「ドラッグストアで卵と洗剤を買うと別々の袋に入れるか聞かれる。日本人はやけに潔癖だ」とか、「東京にはちょっと尋常じゃないくらい狭い賃貸物件があるぞ。まるで豚小屋じゃないか」とか、あるいは焼きそばパンやたらこパスタなど日本人が外国の料理をどん欲に取り入れて作った新しい食べ物の新種が見つかると、「船頭様に献上」と言ってツイットしたりした。

 「ノーランが新しいSNSを作り、そこに日本人を囲って愛でている」という噂は世界を巡り、いつしか日本のタッター民は「世界が見守る、ちょっとおかしな可愛い人たち」というようなポジションを獲得した。タッター民は満足だった。もともと日本人がもつ島国根性――すなわち「自分たちは変わり者だ」という劣等感と自尊心がないまぜになった感情――や、大きいものに抱かれたいという感情が、この事態にフィットしたのだ、それはアメリカを追従し続ける日本の構図そのものだ、日本人は戦後何も変わっていない、と警鐘を鳴らす識者の声が、日本国内やヨーロッパから数多く上がった。または、ノーランは神無き日本に現れた新しい神だ、とのたまう宗教学者もいたが、いずれにせよタッター民にはそのような声は届かなかった。タッター民は、1000万アカウントのみで構成された箱庭に住み、どんどんガラパゴス化していった。そしてガラパゴスの動物であることに誇りを持った。箱庭には新しいアカウントは参入しなかった。「ゆくゆく募集する」と告げられていた新規アカウント募集の知らせも一向に無いのだ。ノーラン氏は、もとよりアカウント数を増やす気などなかったのかもしれない。

 従順に調教されていったタッター民は、ノーランの好きな日本アニメや、ヤップル社にまつわる記念日には、異様な熱量の「祭」を繰り広げた。
 日本でも、タッターに移住しそびれた者たちは、タッター民を見て「戦時中の言論統制のようで怖い」あるいは「震災の時のTuiitterを想起させる」と言い、怯えた。
 奇しくもノーラン氏にまつわるネットスラングは、ノーランから「乗らん」や箱舟などを連想した流れで、船、水にまつわるものが多かった(ノーラン氏が試作品のヤーパッドを水没させたエピソードも関係があろう)。「船頭様」、「気がノーラン」など、「荒れ狂う海の神」ようなイメージを、タッター民は意識的であれ、無意識的であれ共有していた。
 震災時の数日間は、地震や津波のこと以外は話してはいけないような雰囲気がTuiitterを支配していたことを、もちろん今のタッター民も覚えている。今のタッターのTLにはそこまでの重圧はないが、少なくとも「MARUTOがつまらない」とは言いにくい。
 しかし当人たちにもこの流れを止めることは難しかった。タッター民は「タッター映え」を意識し、「いかに日本が変か」「いかに日本人は日本のアニメを愛しているか」をアピールし続けた。タッターを通じて見える日本は、えてして日本そのものよりも面白く、愛くるしく見えた。同じものでも規模が小さく、デフォルメされると可愛く見えるのは、まさに盆栽などに代表される日本的な感性である、と、また識者がツイットした。
 タッターが創設された後も、Tuiitterに類似するSNSがタケノコのごとく作られたが、しかしタッターがダントツで盛り上がっていた。タッターに移住しそびれた者は平成を、ヘイセーションを、天皇陛下を恨み、移住できた者は平成に、ヘイセーションに、天皇陛下に感謝した。
 ヘイセーションと呼ばれる元号変更に伴う混乱も、事前に周到な対応策が準備され、政府からも「大きな混乱は起こらない」との公式発表がなされた。ヘイセーションという語自体が平成よりも先に寿命を終えた。このまま平成は無事終わるのだろうと誰もが思っていた。

 平成があと一ヶ月で終わろうとする時、それは起こった。

 国民的名作アニメを毎週放送する長寿番組で、おそらく日本でもっとも有名なアニメ監督の、日本で最も愛されるアニメが放映される日だった。
 そのアニメ監督は、ノーランがかつて巨額の財産を寄付した日本アニメクリエイター連盟の理事でもある。
 当然、タッター民の全員が観た。そして、全員がタッター上で実況をツイットした。
 そのアニメのクライマックスには、日本人なら誰もが知っている有名なセリフがあり、それはカタカナ三文字からなる誰でも覚えられる短い言葉で、しかも口なじみが良く、つい言いたくなる語呂の良さももっていた。作中では滅びの呪文として唱えられるのだが、現実世界でも腹が立った時や気に入らない相手に向けて呟くのにちょうど良い言葉だった。
 そのアニメはあまりに有名で、そしてあまりに愛されていたので、その長寿番組ではおおむね二年に一度は放映されており、タッター民は幼少期から何度も何度も観ていた。そのためその三文字の呪文は絶対に覚えているし、どのタイミングで言われるかも完璧に記憶していた。
 アニメがクライマックスに近づくにつれ、それを実況するツイット数もうなぎのぼりに増えていった。「くるぞくるぞ」と誰もが騒ぎ、そして、タイミングを完璧に把握しているものがカウントダウンまで始めた。

 10、9、8、7、6、5、4、3、2、1。

 かくしてその呪文を、タッター民全員が、同時に唱えた。

 タッターのサーバは、キャパシティを圧倒的に超える情報量を一手に受け止め、落ちた。そしてちょうどタッターに飽き始めていたノーラン氏の一存で、復旧は行われなかった。


<了>

・・・・・・・・・・・・・・・・


ありがとうございました。

■あと書きにかえて

「ツイハイ」の文体、人称、オチについて、審査員に指摘されたことなど

noveljamのお題「平成」について考えたこと:「平成生まれ」とか「ゆとり」とかすぐ言う人が嫌いだ


■他の人の感想も読むと楽しいよね

■togetterツイハイ感想まとめ

■黒田麻優子/黒田冥柯さんの「ツイハイ」レビュー

■Amazonレビュー


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所詮島そんなに急いでどこへ行くハワイも来るしミサイルも来る
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レイシブです✒『言葉で遊んでいる人』📚東大卒→ライター見習→ホーチミンで日本語講師&物書き業なう🗾日本語が好きすぎるので「距離を置いている」🏮ベトナムについてのエッセイ更新中📝他、純文学短編小説など📖自己紹介・おすすめ記事は『プロフィール』から! 📚
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