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【ベト日記12】「茶髪の方がおしゃれ」は日本だけ?

ホーチミンに来てからずっと黒髪で過ごしていたのだが、日本へ一時帰国するとなって、急に髪を染めたくなり、帰国前日に美容院へ行った。

我ながらこの心の流れは不思議なのだが、いざ「日本に帰るぞ」となって、会う予定の友人の顔を思い浮かべたりしていたら急に「髪を茶色にしなければ」と思ったのだ。

正直、外見をとりつくろうにしても前日じゃ遅すぎる。5キロ太ったし、髪は今伸ばしかけで微妙だし、「悪あがき」感が否めないのだが、しかし、いてもたってもいられなくなり日本人美容師さんがいる美容院に飛び込み、完全なる日本的な茶髪にしてもらった。


結果、めちゃめちゃしっくりきた。


たとえるなら、海外旅行から帰ってきて、日本の自宅でお味噌汁をすすり、ほーっとする、「あーやっぱ、これだよね」みたいな、感じ。

丁度美容院にあった日本の雑誌には
「茶髪のまとめ髪の後れ毛はおしゃれに見えるが、黒髪だと『疲れた主婦のひっつめ』に見えがち」
とか書かれていて、うんうんとうなづく。


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ベトナムは髪を染めている人が少ない。
ベトナム人の髪がもともと美しいから、とか、染まりにくい毛質だから、とか理由は色々あるが、一番大きな要因は単純に「そこまで発展した国じゃないから」だと思う(この言い方は好きじゃないが)。

街を行く若者を観察して
「髪を染めてる人が少ないから、私も黒髪でいいや」
と思って髪色を黒に戻したのが一年前。

しばらくは、「ベトナムの『コード』」を取り込むことが楽しくて、現地流に真っ赤な口紅をしてみたり、まつエクをバッチバチにしてみたり、地元の服屋で南国的な派手な服を買ってみたりしてみたのだが。


そして在住日本人に会うたび、
「あの人は南国にいるのに日本みたいなくすんだ色ばっか着てる、一目で日本人と分かるわー」
と内心disったり、あるいは
「うわーベトナムでもきれいな茶髪巻き髪にしててえらいなー、ベトナムだとめちゃ目立つわー」
と劣等心を感じたりと、小さな自尊心を揺らがせていたのだが。


当たり前だが、他人のコードや、国ごとのコードなんて二の次であり、端的に自分がいいものをいいと思えばいい。
それをまとった自分のテンションが上がるかどうかが大事。
無理して母国のコードに合せる必要もないし、現地のコードに合せる必要もない。

自分がしっくりくるものだけ「いいとこどり」すればいい。


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私は31年間日本に住んでいた日本人なので、基本的には、日本のコードをそのまま取り込んでいる。(つまり、日本でおしゃれとみなされているものを、私もおしゃれだと思っている)

でも時たま、「日本人て地味すぎ」とか「あまりに複雑で微細なコードにとらわれて、何がお洒落か分からなくなってる。ジャーゴン化してる」とも思う。
ベトナムに来てからは、そういう日本の「コード」の窮屈さから逃れることができた反動で、黒髪にしていたのかもしれない。
そんな反動も一年経って落ち着き、結局茶髪に戻ってきたのかもしれない。

私が日本にいた時から持っていた、髪に関しての見解は、
「黒と言うのは単純に難易度の高いカラーであり、面積多く取り入れる(つまり黒髪ロング)のは難しい。あと、よほどきれいにのびているなら、黒髪ロングはスーパープレイシャスな価値を放つが、そうじゃないなら鬼門。茶髪の方が髪が柔らかく見えるし後れ毛も目立ちにくい。ただしショートなら黒髪もアリ(面積が少ないし、髪質のアラも出にくい)」
というものであり、結局今もそう思っている。

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美容院で茶髪にして「あ~、しっくりしたー」と思っていたら、美容師さんが
「逆に今度は黒髪ロングも似合うかもね~」
とか言ってきた。反射的に
「日本人形みたいなやつですか? 日本だと評判悪いやつですか?笑」
と茶化してしまったのだが、美容師さんはしれっと
「うん、海外だし、逆に」
と言っていた。
日本だとメンヘラの髪型とされてるものであり、少女ならともかくアラサーなら鬼門……と思ったのだが、美容師さんはベトナム在住歴が長く、そういう日本的「コード」から自由なのかもしれない。

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そんなことを考えながら、日本行きの飛行機に乗るべく空港へ行ったら、あまりにいろんな人がいてわけわからなくなった。
ベトナムの街中の100倍ぐらい、いろんな髪型がある。ドレッドヘアとか、ヒジャブやトルコ帽をかぶった人もいる。
黒髪か茶髪か程度でうだうだ言ってる自分がバカらしくなるほど、金髪とか白とか赤髪の人だっている。

当然だがベトナムにはベトナムの「コード」があり、ホーチミンの街中で見る髪型はバリエーションが少なかったな、と気付いた。
(例えば「男の長髪は暑苦しい。バリッと刈り上げるに限る」とか、「女の髪は長いがいい」とか。どちらかというとベトナムの髪型に関する見解は保守的なものが多い)

短い日本滞在ののち、ベトナムに帰ってきても、驚くことに誰にも「茶髪にしましたね」と言われなかった。数十人の学生にも、同僚の先生にも、誰にも!
「あーやっぱ、こんなビビり染めみたいな茶髪じゃだれにも気づいてもらえないのか、いやでも日本人なら絶対気付いてるぞ」
と思いつつ、しかし結局、私は茶髪の方が自分のテンションがあがるので、誰にも気づいてもらえなくても、ベトナムで茶髪を続ける。


渋澤怜(@RayShibusawa


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