「今日は何してたの?」という問いが昔から苦手だった


昨日、不思議なことがあった。彼氏と電話していた時のことだ。

彼氏とは夜寝る前に電話をすることが多い。大体、彼氏がその日あったことを話し、私が聞く。
私は話すことがあまりない。ずっと家にいるから大して出来事も起こらないし、あっても書くことで満足してしまうから、あまり話したいという気持ちにならない。



「今日は何してたの?」という問いが昔から苦手だった。

その日も彼氏にそう聞かれ、「ライヴに行った」と答えたけど、ライヴの感想はTwitterに書いてしまったから特に話す気も無かった。でも私は、才能あふれる音楽家が集った夜だったのに客が全然いなく、本来コミュニケーションであるはずの音楽がむしろ孤独を呼び、仲良くなれるはずの人が全然仲良くなれずに孤独を深めて各々の帰路に散ったことで、身体の中に寂しさとやるせなさが詰まっているように感じていた。


そのことは彼氏に伝えたかった、けど、
「お客さんが全然いなくて」
とまで言ったら
「あーあのハコは集客下手だから。あそこで客入ってた記憶ないわ」
「怜ちゃんは出たいハコある?」
と、業界じみた話に逸れてしまった。

そういうことはよくある。でも、そんなもんだよな、会話って、と思い、いつも流してしまっていた。


ただ、その日の私は少しイライラしていて、彼氏に「もう、すぐ自分の話をする」と軽くたしなめてしまった。


そしたら「ごめんごめん、話続けて」と言ってくれるんだけど、そう言ってもらえたにもかかわらず、私はもごもごと口ごもってしまう。そうして、へそ曲がりだなあと思いつつも言うしかない。「私は私の話を聞いてほしいわけじゃない」。

私って私の話しないよね。そう、怜ちゃんは怜ちゃんの話をしないんだよ。



どうしたの、と聞かれるのが昔から嫌いだった。

大体どうもしてなかった。あるいはどうしようもなかった。
どうもしてないけどどうにかしてほしい。

結果、考えあぐねた私は、彼氏にこう頼んでいた。


「なでなでして」と。


もちろん電話だから本当になでなでできるわけじゃない。


でも彼氏は妙にビートを聞かせて「ナー? デー! ナー? デー! ナーデナーデナデナーデナーデナデナッ! デー!」してくれた。私はキャイキャイ笑った。



どうもしなくても、どうかしてても、無条件でなでなでしてくれる人が欲しいな、と思ったら、その原初はきっと母だろう。


母と私の間でよくやる、意味のない遊びがあった。向かい合って両手を握って「おーふーねーはーぎっちらこ、ぎっちらぎっちらぎっちらこ、れーいーちゃんはー船頭さん、ぎっちらぎっちらぎっちらこー!」と言いながら櫂のように両手を行き来させる。

別に勝敗もルールもない、ただ母と繋いだ両手をリズムに乗って動かすだけの他愛ない遊び未満の何かだったけど、私はすごくそれが好きだった。あらゆるタイミングで「ぎっちらこやってー!」とせがんだ。結構いい歳までやってた。20歳越えるまでやってた気もする。


今もやってくれるかなあ、と思うと少し泣けてくる。
やってくれると思う。でもそれも少し違う気もする。ちゃんと、照れたり誤魔化したりしないでやってもらえるだろうか。私達が、あの時と同じ安心感の中に溶け込めてやれるだろうか。


まだ寂しいんだなあ。嫌だなあ。もう大丈夫だと思ってたのになあ。

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