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2泊3日で小説を書く合宿「noveljam」の後に考えたこと


■賞レースはハードだ、という話

Noveljamが終わってから、ずーっとぼーっとしている。

Noveljam終了翌日はあまりに疲れて10時間寝たし、起きてもTwitterいじる以外できなかった。
私が作った小説「ツイハイ」はあまりに周囲に褒められてたし、私も超イケてると思ってたから、最優秀賞発表寸前まで普通に私が呼ばれると思ってた、ので、まあ今では「自分が落ちた理由」は完全に納得してるんだけど、ゆうてダメージはしっかり受けた。

2日後(昨日)は、noveljamの他作品を読み始めてレビューを始めたんだけど、「え、これの受賞理由がよく分からん」「この作品に(巧拙ではなく)創作意識やパッションで負けたとは思えない」って、やっぱりまだ思う。

詳しくはこの記事に書いたけど、完成度や巧拙ではなく、創作意識やパッションを評価される大会でした。前者を評価されると思い込んでた私は完全に負けたのだった)


ちなみに、3/26までに「最も売れた作品に賞を与える」アワードがある。つまり、今回の審査員賞とはまた別の基準で戦うことになる。

だから、「一ヶ月後に売り上げで一位になる」ことを目指してさっさと行動すべき。

なのに、なぜ他作品のレビューを書く、つまりライバルの宣伝になっちゃう行為を始めたかと言うと、


「noveljam全体を盛り上げて一ヶ月先へのアワードまで注目を繋ぎ留めたい」
「他人に有益な情報を与える人間は、結局有益な情報をもらえて、最後に勝つ(という私の信念)」
「自分の整理として、審査員の評価軸と自分の評価軸を言語化し、自分が目指す小説を再確認したい」


この3点のためである。

しかし、うーん、やっぱ、正直半分くらいは読みたくない(審査員も褒めてないし、最終日プレゼンも面白くなかったし、あらすじも全然ヒキがない)、あるいは読んでもつまんないやつで、うーんどうしよー……ってなってる。し、そういう小説に負けてるっていうのもやっぱり悔しい。

ここからは私が書いた「ツイハイ」について。ネタバレは無いけど、読んでからの方が面白いと思うのでよかったらbccks版はこちらからチェックしてみてください。(立ち読みだけで3分の2読めます。)kindleはこちら (こっちだと立ち読みできないっぽいです、お手数ですが立ち読みは上記のbccksを参照ください)


■「ツイハイ」の文体について

「ツイハイ」の何が褒められたかと言うと、

・「ツイートが羅列される」という新しい文体
・ツイートがめちゃめちゃリアル。

つまり、Twitter部分がめちゃ褒められていた。

特に後者については、『いかにも「ツイッターでこういう人いるー」「こういう祭起こりそうー」ってことがちゃんと作り込まれている。こういう世界の作り込みがちゃんとしてないとシラケルんだけど、「ツイハイ」にはそれが無かった』というような事を、審査員の方に言ってもらえてめちゃ嬉しかった。

でね、地の文が入るんです。それに関しては審査員からは「全部ツイートのままが良かった!」と言われた。


私が地の文を入れた理由は「いやゆうてもそれが読みやすいだろ」「最後までツイート文体で行ったら皆しんどいだろ」と思ったからで、そこに編集者さんも同意してくれたからでした。

しかしフタを開けたらカズマさんに限らず審査員は「地の文いらん」と。

まるでインド人のカレー屋さんが「え?! 日本人は辛いの苦手だっていうからココナッツミルクいれたのに! むしろもっと辛いカレー欲しいの!?」って驚く気分だった。

私としても激辛カレーを作る方が楽しいです。だからこれは近日中にリベンジしますね。


■「ツイハイ」の人称について

なお、「一人称を入れて、主人公がどうにかなる話にする案はなかったの?」という指摘が審査員からありましたが、一人称に関しては私はめちゃめちゃこだわりがあるので今は入れられないです。

せっかく「Twitterの話にした=無数の一人称がワサワサ言ってるのが面白い」のに、それとは別の一人称を立てるのは勿体ないな―と思います。でもだからといってじゃあ「あの地の文の三人称は誰だよ」と言われると立つ瀬がない。そこは考察が足りなかった。やっぱり審査員方の指摘の通り「地の文無し。オールツイート文体」の方が筋が通ってたと思う。


■「ツイハイ」のオチについて

オチは、ハッキリいって笑えます。笑わせて、スカッとさせたかった。私は元々「フワッと終わる」短編は嫌いで、賞レースならなおさらちゃんとオチが無いと負けると思ってた(理由は「フワッ」は地味だからです)。だからちゃんとオトした。

オチにつながるアイディアを出してくれたのはデザイナーの澤さん。私は「noveljamだから他人のアイディアをたくさん出したい」と思って「よっしゃ!」と採用しました。(澤さんの名誉のために言うと「これをオチにしろ」と言ってきたんじゃなくて、ブレストの中で澤さんが出してくれた案の一つを私がオチ用に採用したってこと)

が、米光一成さん、海猫沢めろんさんからはオチが不評でした。「新興SNSがあのネタでオチるっていうのは、予測できちゃう」と言われました。しかし、このオチは友達にはメチャメチャ褒められた箇所でもありました。

米光一成さん、海猫沢めろんさん(最強のネットの民)と、一般読者じゃ、笑いのレベルが違う。でも、米光一成さん、海猫沢めろんさんを(も)唸らせるオチを書いた方がいいに決まってる。

みんなが理解できそうな「お約束」「納得」を狙って、「驚異」「新鮮さ」にまでリーチできなかった自分にふがいなさを感じました。
「あるあるわかる」「納得」が消費されることに憤ってたのは誰より私だったのにね。

めろんさんは、この件についてすごく具体的なアドバイスをくださいました。

・はじめに思いついたアイディアは使わないほうがいい。
・いや、使ってもいいけど、もう一段先まで考えるべき。

このアドバイスが聞けただけでも、失敗する価値あったなと前向きに思えました。めろんさん、ロジカルで具体的な語り口のみならず、エンパワーまでしてくれて、ほんとすごい人。

ちなみに笑いのツボに関しては、今日に至ってこういう考察も芽生えました。

まあ、言い訳だけどね。


■私はね、まだ戦わないといけないんですよ。

この一ヶ月あたり、私のnoteを追ってくれている人は、私の心境が本当に分かって「あーーッ」ってなってくれてるんじゃないでしょうか笑

ひとつ自信をもって言えることは、「ツイハイ」は確実に面白いです。

上記につらつら書いたことは「文学の徒」として考察が甘かったな、という反省であり、別に文学の徒でもなんでもない一般の人が読んだら「ツイハイ」は普通にめちゃめちゃ面白いし、ハナからそちらに照準して書いています。それは別に手を抜いたわけじゃなくて、「カレーにココナッツミルクを入れてます」ってだけの話です。まあ「ココナッツミルク入れたカレーとしても最高峰じゃなかったから賞をあげなかったんだよ」と審査員に言われたらそれまでだし、多分そうなんだろうけど。でも。

Twitterでも、noteでも、
「どうせ皆こーゆーのが好きなんでしょ」と
「誰も分かってくれなくてもいーよ!!」の間をウロウロしてエモを量産してたのがここ最近の私じゃないですか。

どこまでココナッツミルク入れればいいのー!? と騒いでたのが最近の私じゃないですか。

あーなんかかわいそうすぎて泣けてくる。私可哀相笑


純文学をかいた、24歳の女の子が、まさに「誰も分かってくれなくてもいーよ!!」型のバキバキの純文学をかいて、優秀賞とってました。マジ悔しい。
でもその子に、私は、こう言われてるんですよね。

https://twitter.com/linguametallic/status/96337145572656742

マジで面白いんで、本当、どうか、「ツイハイ」を、いろいろあったが可愛い我が子に、アワードをとらせてやりたいです。だから、本当は購入してほしいけど、とりあえず立ち読みしてほしいです。面白かったらで良いんで購入してください。


私が今のTwitterに、ネットに、平成のネット文化に思う所を、ガンガンに詰め込んだ小説です。


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渋澤怜によるnoveljamレポはこちらhttps://note.mu/rayshibusawa/n/n686d0e4938ac

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