「自分を大事にしなさい」という言葉が何言ってるのか、やっと分かった ~永田カビ「さびしすぎてレズ風俗行きましたレポ」を褒めちぎる

一昨日は、「装置」が出来なくてやたら落ち込んでいる話を書いたけど、昨日今日はうってかわってやたら前向きな気分である。なんなんだ、まじで、寂しさはムードにすぎない。

装置というか、まあ、単純に「本」(インディーズじゃなくて、出版社からちゃんと出すやつ)なんだけどね。

どうやったら「ハイハイこれ系の売れる系のネタのこういうのね」と安易に早合点されずに真に私の言いたいことをズガンと言いつつ、かつ出版社を納得させられるくらい順当に売れ線でいけるか、ということがよくわかんなくなってた。

結論から言うと、先輩を見習えばよかった。

「さみしすぎてレズ風俗行ってきましたルポ」

タイトルの、あっぱれなヒキとは好対照に、内容は「自分のやりたいことをやってどう生きるか」という超硬派な、人間の根本にまで分け入っていく話。

試し読みURLを見てもらえばわかる通り、漫画というツールを見事に駆使した説明力が本当に素晴らしくて、「くそ! なんで私は絵が描けないんだ!」と、「漫画というメディア全般」に嫉妬するほどだった。

これとか、

このへんとかな。


あまりにも素晴らしすぎて何度も読み返してるんだけど、今日ぐっときたのは

「自分で自分を大事にすれば、他人に『私を大事にして!』と依存しないで済む」

というくだりだった。


「自分を大事にしなよ」という言葉はよく使われるが、正直私は今まで、何を言っているのかピンとこなかった。この漫画が翻訳してくれた。

「自分を大事にしよう」というのは、「自分の欲望を肯定しよう」ということだった。


説明する。

作者はずっと、自分の欲望よりも、親の承認を優先させて生きてきた。

でもある時、親の承認を得るために必死に就活を続けて「疲れている」自分を認め、「本当はマンガを描きたい」という自分の欲望に向き合う。

そして、「バイト暮らしで病気持ちの自分は一人前じゃないから、性的なことは考えちゃいけない」と思っていたけど、「本当は性的なことに興味がある」と認めた。

これが、「自分を大事にする」ってことだった。


彼女の気づきを通じて、私は、自分はわりと「自分を大事に」できてる方だと思っていたのだが実は全然できていなかったんだな、ということに気付いた。

この漫画の中に、「大学を中退し、拒&過食症に振り回されてバイトも満足に出来ない自分は「外食をする権利が無い」「ケーキを買う権利が無い」「お酒を飲む権利が無い」」とジャッジするもう一人の自分が現れる。

ちょっと違うけどさ、私も、似た現象がよくあるんですよ。

家で一人で料理する時とか、「この程度のエサでも食ってろ」って思いながらわざと貧相な食事作ったりしてる。まあ時短/ローコストは推奨されるべきことなのだが、同じ時間と手間で作るなら気分だけでも「自分のために、楽しく、おいしい食事作ろう!」と思った方がいいのに、セルフ虐待をしている。(なので私が心から料理を楽しめるのは他人と食べる時だけである)

それから「何も成し遂げてないのに高いコート着るな」とか「たった30分のためにライヴのチケットに2500円払うのはどうかと思う」とか「無職のくせにこんな広い部屋住みやがって」とか「服選びや化粧に30分以上時間かけてちゃらちゃらしてる暇あれば1文字でも多く書くか読むかしろ」とか「テレビ観るな」とか、とにかくセルフ風紀委員がことあるごとに出てきて勉学に集中しろと諭してくる。

私がデパートに行って鬱になりがちなのも、「こんなもの買うほどの価値があるかお前は? 早く家帰って自分の価値高める作業にいそしめ」と風紀委員がしゃしゃるからである。

「自分の価値を高める作業」というのは、創作の事である。

この風紀委員は、各種創作活動(小説、ブログ、ライヴ……)とそのこやしになること(本を読む、映画を観る、ライヴに行く……)を推奨し、それ以外のことしてる時は大体しゃしゃって、妨害してくるのだ。

「おいしいもの食べたい!」と思って外食しても、注文した品が届いたころには「さあさっさと食って帰るぞこんなところで油売ってる暇ないんだ」とか言ってくるから、料理を味わえずに急いで食べてしまったりする。(なので私が心から外食を楽しめるのは他人と一緒の時だけである)


ここでポイントなのは、風紀委員がいても私の不良行為は減らないということ。風紀委員が活躍することにより私の創作量が増加するならまだ良いが、全然そんなことはない。と思う。

まあ口うるさいママがいてもいたずらっ子はいたずらするの。

だったら素直にいたずらを認めちゃった方がいい。

(いたずらする子ほど良く育つと思う)


ここで、「自分を大事にしなさい」の話に戻る。

よく「好きなことをしなさい」と言われるけど、「私はモノを書くのが好き!」だから「モノを書けば好きなことできてる!」と思ってた。でも全然そうじゃなかった。「私の好きなもの」イコール「書くこと」というの、はただのかっこつけだった。

「おいしいもの食べる」も「着たい服着る」も「会いたい人と会う」も「ライヴ観る」も「広い部屋住む」も「デパートうろつく」も全部やりたいことなんだ。

でも、「書くこと」だけがカッコいいから、勝手にそれだけを「好きなこと」に採用して、あとは却下することで、私はカッコつけてたのだ。

そんな苦しいスタンスは、全然好きなことしてることにならない。勿論、自分を大事にしてることにもならない。「自分を大事にしなさい」というのは「自分の欲望を認めなさい(ダサい欲望も含む)」ってことだったんだ。


このマンガの作者は、自身の病気について調べる中でたまたま「家庭内暴力に走る少年は、母にやたらべたべたする傾向がある。性欲を抱くこともある」というくだりを見つけ「自分だ!!(家庭内暴力はしたことないけど!!)」と衝撃を受ける。

そこから、自分がずっと隠していた、「すべての人がぼんやり思い描く『母』という概念みたいなものに身体全体を預けてみたい」「年上の女性にぎゅーってされたい」などの欲望に気付き、レズ風俗に乗り込むこととなる。そしてやっと、親に認めてもらえない寂しさから少し解放され、「自分で自分を大事にできてるから、他人に「私を大事にして!」と依存しなくても良い状態」へと変わり始める。


話はそれるが、最近私は下田美咲さんのcakesの記事を読んで、「性欲で恋愛していいんだ!!」「ヤリたい男を彼氏にしたいと思っていいんだ!!」と気づかされ、目から鱗を落としまくったところだった。翻って、普段自分がいかに自分の性欲を肯定していないのかに気付き、愕然とした。

こんな、性関連の話題を書くことになんら抵抗のなさそうに見えるだろう私、が、ですよ。

彼氏を尊敬したことなんて一度もない(なぜなら「性行為の相手」という観点でしか選んでないから、という)

たった今、結婚しました(セックスだけで結婚をきめました、という記事です)

結婚したのはお互い「体目当て」だったから

「さみしい」「男の人にぎゅーっとされたい」と思っても、「そんなもの求めても無駄だ、創作によって自分の魂をさらけ出す行為を続けていれば必ず自分の本心を受け取る人が現れて好きになってくれる。だからペアーズはやめろ」とかさ、風紀委員が言ってきて、欲望自体を全然肯定してなかった。

私がよく言う「ホストの看板を見るだけで恥ずかしい」「ジャニーズの一覧表(?)見せられて『どれが一番かっこいい?』とか聞かれても絶対選べない、罪深い」とか言ってるのも、同じだ、「男の見た目に魅かれる自分をあっけらかんと肯定できない」からだったんだ。だってアイドルの女の子の一覧表(?)は堂々見れる。


なんかさあ、この風紀委員ってやつ、誰の心の中にもいるもんだと思ってたんですけど、たぶんそんなことないみたいなんですよね。最近気づいた。

私と同じく、無職でフラフラしてる友人がいるんだけど、一緒にラーメン屋行くとそいつ必ず一番高い「全部盛り」を注文するんですよ。私は風紀委員によって、「あ、一番安い普通のラーメンで。無職なので……」ってなるんだけど。

例え財布の底が尽きるのが早くとも、ラーメン屋を楽しんでるのは彼ですよね。

というかそいつにとっては「財布の底」が風紀委員なわけだ。私は微妙に貯金のある無職だから自分で律しないといけなくて、逆にのびのび無職できてないんだな。

そうそう、それを言えば、世の中の多くの人っていうのは、「会社」が風紀委員になってくれるんですよね。「仕事≒やらなきゃいけないこと」で、会社にいる時だけ風紀委員に見はられて、オフはのんべんだらりと過ごせばよいと。

私はそうはいかないんですよね。正社員だった時も「こんなヌルい仕事に本気出しちゃいかん、エナジーをセーブしさっさと帰って小説を書くのだ」って、常に風紀委員がしゃしゃってた。だから、仕事ででかい案件をやり遂げても全然達成感なかった。

バカだよね、楽しいことがあってもすぐ「こんなに楽しんでても仕方ない。早く持ち場につけ。机の前に座れ」って、お達しがくるの。楽しい時を楽しく味わい尽くして、心の中に楽しい芽を育てていくことこそが、自分への肯定につながるのに。


……さて、漫画家として既にデビューしていたものの伸び悩んでいた作者の永田さんは、レズ風俗体験後、「この、自分が自分の欲望に気づいて素直になる過程を、マンガにすればよいのでは」と気づく。

「だって、私が読みたいのは、人が恥ずかしいところをさらけ出して書いたものだから」と。

私、このコマ、待ち受けにしました。

いま、私もまったく同じ気分です。

あなたにとっての少年アヤちゃんが、谷川が、川端が、私にとってのあなたです。

私、あなたに勇気もらいました。

ウケ狙いとか、PVとか、気にしなくていい。

「どうせあんたら、この程度のが読みたいんでしょ?」とナメてかかって書いたものはニセモノだから、「どうせその程度の客」にしか届かない。

あざとくいくのは大事だけど(このマンガのタイトルは本当あっぱれ)、中央に据えるのは、本当に書きたいこと。自分が客だったら一番読みたいもの。それを、まずは自分のために、初めての読者になる自分のために、真摯に書けばいいんだ。


人は本気で作ったものにしか感動しない。

永田さんの本気はもらいました。


私も、チャットレディとガールズバーと××××の×××の体験記、絶対本にして出しますね。


【追伸!】

永田カビさんの新刊「一人交換日記」が明日(12/10)に発売になるみたいだよ! 誰より私が楽しみにしてると思うけど、みんなも買おう! ま、まずはレズ風俗読んで!

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コメント1件

僕もカッコつけだからなぁ。すごい分かるわ。カッコ悪くても自分をさらけ出して書かないとホンモノにはならない。
あと心の風紀委員会もよく分かる。いるわーそれ。
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