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筆を折るということ

ちょっとうちひしがれている。

通常、新人賞で落ちた作品は公開されない。また、最終候補でもない限り、落ちた作品には講評もつかない。

だから、その賞レースを傍観してた人にとっては「どんな作品が落ちたか」は分からないし、賞レースに参加して落ちた者にとっては「自分がなぜ落ちたか」は分からない。

この不透明さは多くの人を苛立たせてると思うんだけど、しかし「審査員の目が節穴だったんだ!」「出来レースだ!」と言って憂さ晴らし出来る、という余地も生んでいる。(勿論良いことではないが)。

今回のnoveljamっていう、「2泊3日の合宿で書いたものが最終日に合宿所に現れた審査員によって即時評価される」っていう審査は本当に稀で。
「落ちた作品も読める」「落ちた作品に関する講評もきける」のが大変稀有な機会だった。非常に透明性が高い。


でもだからこそ、まあ、逆に、言い訳がきかない。
というわけで落ちた自分はダメージモロ受けしてるんだと思う。


正直、筆を折る図も見えた。


審査員の先生たちが凄すぎて「あーこんなに読んでるのか」「これだけ書いて泥沼でもがいてきたのか」っていうのが、5分話しただけでもありありと分かってしまった。

今回の私が「多分この壁を越えたらクリアだなー」と思って越えた壁の先にはまだ三枚くらい壁があって、「そこを越えねえと文学ってことにはしてやんねーよ」って言われた感じ。

そしてそれだけなら「よし頑張る! あと3枚越える!」と決意すりゃいいだけの話だし、実際そうなった。私は、あの場でやる気を出したのだ。


……いや正直、「ちょっとしんどいわ……」「あと三枚もあるの……うげえ……」とも思ったけど、自分の先にある三枚の壁がどんなものか大体見えたし、「見えなかったものが見えた」っていうのは大発見なんだからそこは祝ってよかった。


が、

家に帰って、「他の受賞作品を読んで何が良いか分からなかった」ことによって、結構キてしまった。

彼らは私より先の壁を越えてたのか? わからん……

私の審美眼はショボいのか? 私はニセモノを本物と勘違いしちゃうダメ読者なのか? という疑いが芽生えてきてしまった。



私は、自分の目の前にある三枚の壁を破るのに集中すべきなんだろう。

しかし既に私より先の壁を越えたと思われる作品を読んで(noveljamに限らず、他の新人賞でも何でも)、「どの壁をどう超えたのかが分からない」ということは結構な確率で発生する。

今までは、上記に書いた、新人賞の不透明性ゆえ、この問題をうやむやに出来たし「まあそのうち分かるか」って先送りに出来たんだけど、今回はそうもいかない。

「その人にはその人の、オーダーメイドの壁があるんだよ。それを越えたから評されたわけで、そこはあんたに分かんなくても大丈夫じゃん」と言われるかもしれないけど。しかし、

講評後の懇親会で審査員がたに
「渋澤さんはまだ自分の手元だけで書いてる気がする」とか
「自分が書く必然性のあることを書いてる気がしない」とか
「こんなもんじゃないでしょ」とか言われて、

(こうやって文字で書くと結構ひどい事言われた感じがしますね)

でもその時は自分の問題としてすごく納得して、理解したんだ。

しかしじゃあ同じ条件で書かれた他の受賞作が、この言葉にあてはまらないかというと、そうも思えなくて。でもそれの違和感は審査員への怒りにはならなくて(審査員の人たちが本当に真摯だったのは私は直接話して良く分かった)、自分の審美眼への疑いになるんです。


そう思ったら筆折るんじゃないか? って。


いや、折らないけど。筆折るとか折らないとかいう文字列が出てくるだけで本当に悲しくなってしまうな。

fuzkueの本棚を見ながら、「文学って化け物だなー」と思った。
表紙見るだけで「アーッ」ってなっちゃうような、心持ってかれた経験がビビッドによみがえるような、そんな本が、ゴロゴロあって、文学って言う巨壁をなしていて、私はそれに挑もうとしているのか、その壁に爪痕残そうとしてるのか、と。
表紙見るだけで「アーッ」ってなっちゃうような、心持ってかれた経験がビビッドによみがえるような、そんな本、誰かにとってのそんな本として、私も誰かの本棚に並ばれようとしてるのか。

これは、fuzkueというブックカフェに行った時の先週の日記の抜粋だけど
この時の私は弱気になるとともに武者震いもしていて、なんか、「別に金とか器具とか何も持ってなくても文学っていう山には登れるんだよな、すげえな」って思ったんだけど、

昨日今日で「これやべーな別の方面の山のぼっちゃう可能性あるな、だって私、方向オンチだし」って気がしてきて。
「だとしたらもっと指標の分かりやすいのぼった方が良くね? 一生をかける山としてこのチョイスでいいの?」って思っちゃった。(noteとかだとpvが出て分かりやすいよね)


でもね、ここまで書いて気づいたんだけど、私、本を読めば読むほどわかるようになってるんですよ、新人賞の審査基準。4.5年前は講評読んでも全然分かんなかったけど、最近ちょっとは分かるようになってきた。コンパスがだんだんマシになってきてる。

まあ、よく考えたらnoveljamも最優秀作に関して意見が真っ二つになって、結局「最優秀作なし、優秀作二本」になったんですよね。暴論ですが「そっかー、審査員だって、山全部のことは分からないのかー」ともいえる。書いてちょっと元気出て来た。私は小説はやめても書くことは死んでもやめないと思う。


渋澤怜のnoveljam出品作品「ツイハイ」

kindle版はこちら https://www.amazon.co.jp/dp/B079VNH6ZP/ref=sr_1_1?s=digital-text&ie=UTF8&qid=1518788137&sr=1-1

bccks版はこちら https://bccks.jp/bcck/153419/info


(なんか、知らん人から「そんなんで折れる筆はもとから折れて当たり前」みたいなウザいコメント来たら嫌だな―と思っている)

(あとこんな記事書かんではよ小説書けとか読めとか言われても困る、こういうのを書かないと私は前に進めないんだからね)

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渋澤怜によるnoveljamレポはこちらhttps://note.mu/rayshibusawa/n/n686d0e4938ac

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★『なんで東大卒なのにフリーター? 〜チャットレディ、水商売、出会い系サクラ…渋澤怜アルバイト遍歴とこれまでの人生~』
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