いぬ

なんで東大卒なのにフリーター? 〜チャットレディ、水商売、出会い系サクラ…渋澤怜アルバイト遍歴とこれまでの人生~


「渋澤怜の自己紹介」と関連する記事です。

まだの方はそちらもどうぞ!

■なんで東大卒なのにフリーターに? ~渋澤怜のおいたち~

子供の頃の私は、本好きで、また既に小説を書いていました。そして謎の自信により「大人になったら小説家になる」と思い込んでいました。

それから、もともと勉強が好きで得意でもありました。(特に国語は、年度初めに教科書を貰った瞬間に全部読んでいた。新たに習う漢字はほとんど既に知っていたので、「何で習うんだろう?」と謎だった)

そんなわけで一度も親に「勉強しろ」と言われないままスイスイ育ち、高校は国立の進学校に入学、そこの生徒がほとんど東大を受験するため「じゃあわたしも受けよう、なんか日本一でかっこいいし」という理由で東大を受験し、文科Ⅲ類に合格。

そう、よく「何で東大入ったの?」って聞かれるんですけど、それはきっと多くの人が大学受験をした理由と同じなんです。「周りがみんな受けるから」「入れそうなやつ受けた」っていう、単純な動機だったんですよ……。

大学在学中に本格的に小説を書き始めた私。渋澤怜という筆名もこの頃に使い始めました。

大学3年で就職活動が始まると、
「あれ、なんとなく、『大人になったら小説家になれるはず』と思ってたけど、なれてないぞ……まあいいや、とりあえず小説を書く時間を確保するために暇な仕事がいいな
とかいう、思いっきり後ろ向きな就活をスタート。そんな後ろ向きな気持だったので面接には落ちまくりましたが、なんとか大学4年の夏に、希望通り、暇そうな大学職員の職を得ます。

5年間、大学職員として充実した福利厚生と給料と暇で楽な業務内容の中で働きつつ、小説を書き、純文学の賞「文藝賞」の2次選考まで通過し落ちる……ということを繰り返す中で、
「私はこのままでいいんだろうか? このままここで働き続けて良いんだろうか? このまま良い小説は書けるようになるんだろうか?」
いつか仕事をやめたいけど、その『いつ』って、いつ?
と、焦り始めました。

そして、働き始めて5年目の2013年12月、職場に黙って、おうちで出来るちょっとエッチな在宅バイト・チャットレディを始める……

「えっ? なんでそこでチャットレディなん?」ということを話すために、

まずは私が「女性の性的な価値を売ってお金を稼ぐ女性に憧れがあった」という話をしたいと思います。

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■商売女への憧れ ~なぜ私はチャットレディを始めたか

もともと私は、幼少期より、リカちゃん人形より仮面ライダーに興味を持つような、男子っぽさのある女の子だったそうです。
小学生の時は少女マンガはモノローグが多すぎてキモくて読めず(「相手の気持ちを察し合うばかりでまどろっこしい、直接聞け」と思ってた)、弟のコロコロコミックを読んでいたし、中学生の時は弟と一緒にファイナルファンタジーをプレイしていました。

小中高と共学校で過ごしましたが、自分が女であることをかなり意識せずに過ごしていました。当時の私を知る人いわく、私は「性に未分化な存在」だったらしい。

と同時に、自分は、キャバ嬢や風俗嬢、アイドル、遊女など、実在するものもフィクショナルなものも含めて、「女性的な魅力を売りにしている女性」に、観念的な憧れを抱いていた。(観念的、というのは、そういう女性を別に見たり話したりしたいわけじゃないんだけど、「男に媚びているようで実は男顔負けの額を稼ぐ自立した存在」である彼女らのイメージに憧れを抱いていた、ということ。)
どうやら自分とは正反対の存在に憧れていたようです。

そして、自分の書く小説は、ほぼ全てが女性に関するテーマでした。
女として人生に特に困難があったわけでもないのに、例えば文藝賞二次審査通過作「音楽の花嫁」は、

「この世界では音楽によって戦争を行っている。我が軍はオーケストラ。熟練した技巧を身に付けた団員が紡ぎ出す天国のような音楽は、本当に人間を天国へさらっていくのだー—」 戦場以外で音楽を禁じられた世界。男が楽器を携え、女が楽器として身を供する戦場において、唯一「歌姫」として参戦を許された少女が、フィナーレでもたらす圧倒的フォルティッシモ。

こんなあらすじだし、おなじく文藝賞二次審査通過作「ファッション・メンタル・ヘルス」

舞台は精神疾患罹患率と自殺率が数十%のディストピアジャパン。 全ての男達が自分を性的対象として見ることに嫌気がさしたメンヘラ美少女ミアハは、自殺という形で世界への復讐を試みるが、ひょんなことから、ファンとの性交・妊娠・出産を請け負い少子化対策に貢献する厚労省お抱えアイドル「ファッション・メンタル・ヘルス」に加入し、どっちかというと世界を救済することに……。

こんなあらすじです。

小説を書くと、自分が思ってもみない自分のコアが出てくるものですが、なんでこうも男を殺しまくるのか笑
「どうやら自分は女であることに違和感があるようだぞ」ということも、うすうす気づいていました。

そんなわけで、大学職員を5年勤めて「このままでいいのか」と思った時に、「自分の小説のテーマを深める体験をしたい」ひいては「自分をもっと知りたい」と思って、夜の世界に飛び込んだわけです。

でも、いきなりキャバ嬢とかになるのは怖過ぎるから、初めは在宅で出来るチャットレディを選んだ。
ちなみにチャットレディになるのも十分怖すぎて、無料で閲覧できる待機嬢をみては「はあ……可愛い……」とため息をついては「自分にはなれない。無理」とあきらめてブラウザを閉じる……ということを2年間やっていました。

2年間。

で、その2年間の躊躇を破り、意を決してやってみたところ……

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■チャット嬢をやってみて、仕事辞めてみた

「時給ではなく歩合制で働くこと」
「お金を払ってくれる相手が直接見えること」
「女としての商品価値がお金という形で可視化すること」
そしてもちろん、チャットレディという現場で起こるドタバタな事件などに面白さを感じ、さっそく小説投稿サイトCRUNCH MAGAZINEにて「チャット嬢をやってみた」の投稿を開始。※現在サイト消失
「ひとつのバイトをやってみただけで、こんなに新しいことが書けるなら、他の仕事もやってみたい! 大学職員なんてやってる暇ないな」
と思い、チャットレディをはじめて3週間ほどで、退職願を提出。

(なお、その数日後に、「チャット嬢をやってみた」があまりにバズったために何者かによって職場に「おたくの職員がけしからんことしてますよ」とリークメールが入る……。人生で一番胃の痛い3日間の後に理事会にかけられましたが、タッチの差で退職届を出していたため「まあ、退職まで大人しくしてくれればいいよ」とお咎め無し。退職金も無事もらえました)。

そういえば当時は「チャットレディで食ってく気か?!」とか「職場にバレてクビになったの?」とか言われましたが、そういうわけではなかったのだ(まあどうでもいいんだけどね)

ところで……

■「女としての商品価値がお金という形で可視化されること」?


「(真面目なイメージのある)大学職員が、夜はエッチなチャット嬢に……」
「東大卒女性が、水商売を……」

とか、なんか週刊誌が好きそうなお話ですよね。

「やはり、学歴とか安定した職業とか、社会的なステータスで認められても、女としての価値を認められないと満足できないのか……」

「昼の仕事で満たされないから、夜の世界に……」

こういう物語も、好まれがちです。が、ここは慎重にいきたい。

別に私は東大卒の肩書も、大学職員の職も、なんとなくたまたま手に入れたものだったし、それを手に入れても満たされない自分に絶望もしてない。

そもそも物心ついた時から「面白い文章書けなきゃクソ」「芸術家が一番偉い、かっこいい」と思っていたから、東大卒の肩書や安定した職を手に入れても満たされないに決まっている、良い文章を書くことでしか私は満たされないとハナから知っていたわけです。

むしろ、順当に安定性を手に入れて、そつなく生きれてしまって、本当にやりたいことのために冒険できない自分にコンプレックスを感じていました。

だから、「学歴や地位で認められても満足できないから」夜の世界に乗り込んだ、という言い方は、少なくとも私には当てはまりません。

また、私は、
「女は学歴や仕事の実績等で社会的に認められても、女としての価値(美しさ、夫や子をもつこと)を認められないと満たされないものだ」
という言説を助長する態度は、絶対にとりません。
学歴や仕事の実績で社会的に認められたことのみで幸せになる女性も、もちろんいるし、いていいに決まっている。よく女性の研究者が世界的な賞をとったりすると、「かわいいか」「かわいくないか」でメディアの扱い方が二分したり、「リケジョ」みたいな言葉が流行ったりしますが、本当にどうでもいいね。

もちろん、女としての価値(美しさ、夫や子をもつこと)を認められることによってのみ幸せを得る女性がいてもいいに決まってるし、男性もそれ以外の性の人たちも、仕事や社会的地位、家庭、恋愛……どこで幸せを得るかは人次第で全然良い。
他人の幸せの数なんて他人の数だけあればいいし、他人は他人で勝手に幸せになってくれればいい、とマジで思ってます。

そのうえで、聞いてほしいのですが、私はチャットレディをやったことで
「女としての価値を認められること」をここまで欲していた自分を見つけました。

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多分ガールズバーの時の写真。


……やってみると分かるんですけど、水商売って、客がつかない子って一人もいないんですよね。どんなにブスでも、話下手でも、ハマってくれるお客が絶対につく。

それまで全然モテないし女としての自分にも無頓着だった私だって、「憧れの職業に私も、なれた! うれしい!」「女として商品価値を認められた! 嬉しい!」と喜び、リアル店舗の水商売にも進出していくことになります。


■よくある承認欲求

男の子みたいなメンタリティで、高校まで「性に未分化」と言われていた私にも、「女として認められたい」という承認欲求がちゃんと備わっていたんですね。むしろ27年間堰き止められていたその欲求が、一気にあふれ出し、大変なことになりました。

水商売の成績は割と良かったのですが、それって、単純に、朝も昼も客にメール打ちまくっていたからなんですよね。完全にハマっていました。

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銀座のキャバレー「白いバラ」に一瞬いたときの写真。


しかし、「男に承認を得ることで喜びを得る」ことにハマるとはすなわち、「男に承認を得られないと虚しくなる」ということだったんですね。

この頃、今までほとんどしなかった恋愛というものもやってみたのですが、まーあ上手くいかなかったですね。その理由は単純で、「わたし、承認が欲しいの! 誰か、愛して!」と叫んでいる人なんて誰も愛したくないですよね。私はまさにそれでした。
割と誰でも良かったように思います。その時は「この人しかいない!」と思って必死に恋してるのですが、後から考えると、「この人、自分を好きになってくれそう!」と思った人のところにコロッと行くだけでした。で、フラれていました。…というのは良い方で、大体良いようにセフレ化されてました。超・都合の良い女になりました。あ、それと、27歳の時に30人くらい寝ました。ハプバーにも行きました。すごいですね。私何かにハマると飽き尽くすまでめちゃめちゃ研究し倒すんですよね。まあその分すぐ飽きることが出来るんですが。

もちろん、男に承認欲求を求めること自体が悪いことなんじゃありません。承認欲求と言う単語自体が悪しきものとして使い倒されて食傷してしまった節はありますが、本来、誰にでも備わっている欲求です。

でも、承認欲求を満たす先を、自分でコントロールできない何かに、全面的にゆだねるのは危ない
それは、他人でも、肩書でも、所属でも、危ない。

そう気づいた私は、2015年6月、「脳からちんこ生えるまでセックス禁止」プロジェクトという、ものすごい名前の行動指針をさだめ、セックスをやめます。バイトも、水商売を完全に断ち、新聞配達にチェンジ。朝刊配達のため毎朝2時に起きてました。夜遊び出来ないし、運動になるから健康になるし、禁欲生活には適したバイトでした。ちなみにこのプロジェクトは2015年12月にちゃんとした彼氏が出来たことで終結します。


■出会い系のサクラに騙される男たち ~1通500円で架空の女の子にメールを送る~

先ほど、「承認欲求を満たす先を、自分でコントロールできない何かに全面的にゆだねるのは危ない」と書きました。
「何となく周りが受けるから」という理由で受験しゲットしたはずの東大卒という肩書きだったけど、本当は、そういう肩書を得て満足を得ようとしていた自分がいたのかもしれない。

水商売を始めて、堰を切ったように承認欲求が溢れ出してからは、毎日「さみしい、つらい、いつになったらさみしくなく生きられるんだ」と思っていたのですが、元々私の心には昔から「何か委ねようとする気持ち」があったんでしょう。

彼氏に3ヶ月で振られ、傷心の中で、心の傷をわざと抉るかのように、出会い系のサクラのバイトを始めました。
送信代が1通500円もするメールを、一日何通も架空の女の子に送る、寂しさの権化のような男の人たちを知りました。
「私はこの人たちと一緒だ」と思いました。
40歳、50歳までこの寂しさをもてまし続けたら、私も間違いなく出会い系をさまようおじさん達と一緒になってしまう
そして、そうならない方法を探りました。

■寂しさ砂漠から抜け出す方法

2016年後半は、
スペイン巡礼路を歩く旅に一人で出かけ2週間で300キロを歩いたり

12万円するアート&ブレインという絵の講座に参加したりしました。

よく遊ぶ、金遣いの荒いフリーターでしたね……。
上記二つから学んだことは計り知れず、各々何万字もかけてnoteで語ってますが、
一言で言うと「他人を気にせず、自分で自分の軸を大事にすること」の大事さに気付き始めました。
寂しさ解除までもうすぐです。

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(スペイン旅行中に犬と戯れている写真。
誰も日本語を詠めないことをいいことに読売新聞のパーカー(めちゃめちゃ性能良い)を着てる。あとリュックに洗濯物をつけて乾かしている)


そして、2016年12月、永田カビさんのマンガ「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」を読み、目から涙とウロコをボロボロこぼすことになります。


■「自分で自分を大事にすれば、他人に『私を大事にして!』と依存しないで済む」

永田カビさんのマンガに出てくるこのセリフに私は骨を殴る程の衝撃を受けました。
「なんだ! 自分で自分を大事にすればよかったのか! 東大卒とか、男とか、要らないんだ。自分で自分の寂しさを埋められるんだ!」
そして「自分を愛す」プロジェクトを始動します。(プロジェクト好きだな—)
「寂しいけど、どうしたらよいか分からない!」という人はぜひ上記リンクをクリックしてみてください。簡単すぎてふぬけちゃうと思いますが。

ちなみに2017年5月よりめでたく彼氏ができました。
「自分で自分を愛そう」と思った瞬間に他人に愛されるの、面白いね。
くわしくは「彼氏の話」noteに書いてあります。

ライフログ全部書いちゃう派の私としては「『インターネットに恋愛のことを書くべきじゃない』『ノロケはコンテンツ足りえない』という既成概念との闘い!!」と思って臨んでおります。別れてもちゃんと報告するね。

おすすめはこれです→六本木でたったワンコインに超楽しくデートする方法 ~彼氏の話8

■おまけ ~「あんまりこういう所で長く働かない方がいいよ」じゃねえよ

私の話はここで終わりです。しかし、一応、誤解なきように言っておきたいことがひとつあります。

「水商売や風俗をする女の人はみんな「寂しいから」やっているわけではない」

ということです。

私にとっては、これらの「女を売る仕事」は「自分の寂しさを抉られ、自分の寂しさを自覚できた場」であり、最終的には「脱出すべき場」ではありました。
でも全ての人にとってそうとは限らない。

私のように最終的に抜け出したほうが良い人もある程度の割合いるだろうけど、例えば、「これが私の生業だ」と腹をくくって、ポリシーをもって、裸を見せたり、酒を飲ませたりする女性だってたくさんいます。

そういう人は、承認を求めてウジウジ、ギラギラと働いていた私とちがって、きっと、キラキラ、イキイキと働いています。そういう尊敬できる女たちを、わたしもたくさん見ました。

だから、

「水商売? ハアーン、そんな仕事やって? 寂しいんでしょ? そんなのやめて早く男見つけなよ」

とか

「大変なんだね。事情があるんだね」「早く辞められるといいね」

とかいう、

早とちりなセリフを、女を売る女性に安易にぶつけてほしくないし、そんな通りすがりの人間の既製品のインスタントな言葉で変えられる程他人の人生って簡単じゃねえし安易に要約出来るもんじゃねえんだよ。

よくこういうプロフィール記事の最後に「自分の話を通じて、同じ悩みを持った人の助けになれば」とか書いてる人多いけど、こんな何千字の記事じゃ簡単に他人の人生変わんないし絶対に助かんないよね。それは生き方全部をしつこくしつこくあますとこなく伝えて、やっと伝わるか伝わらないかのものだよ。

それこそ永田カビさんが魂を削って書いた漫画が私に響いたように、私も、このプロフィールの何倍もの筆圧と重量でめちゃめちゃ魂込めた文章を、出版という形でドロップするつもりですので、この記事読んで「助かるかも~」「変わるかも~」と思った人はnoteとかTwitterをフォローしてどうか本チャンの連絡を待っててほしい。


※2021.11追記

出版という夢は変わり、現在は、noteの有料コンテンツを運営しています。

「夢を超具体的に言語化すれば叶ったも同然」をモットーに、ありたい姿や住みたい世界を超具体的に書きまくり、奉納しまくる言語神社です。定期購読マガジン(月333円)と、サークル(月333円~)があります。興味あればそちらもどうぞ。



最後までお読みいただきありがとうございました。

渋澤怜(@RayShibusawa) info@rayshibusawa.her.jp


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