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【即興実験小説】真実のボーイ、寝室の行為、淫靡、野放図、口実と構図(1時間・395字)

まだ一緒に勉強していたころ、約束したのだ。
一緒になれる日まで、互いを裏切らないと。
法や、家族や、その他の制約がなくなったら、必ず結ばれるのだと。
指きりげんまん、小指を絡めた。
でも約束は破られるためにあるとまもなく僕は知る。
社会に出て、別々の会社で働き始めた奴の小指は、女を示すために使われる。今日、これがアレなんで、お先です。

約束なんかしなければよかった。十代の頃は、約束すれば、担保すれば、たとえ言葉だけでも何かで縛り合えば、永遠が得られると思っていた。

小指なんかなければよかった。
今からでも遅くないだろうか。
昔の遊女は、男に誓いを立てた時、指を切って相手に送ったという。
小指を氷水で冷やし、完全に感覚をなくしてから、よく研いだ包丁を一気に振り落とすと、その時初めて見えた。
血しぶきではない、赤い糸を。
つまり、切ってしまったのは僕の方だったのだ。


渋澤怜(@RayShibusawa

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お題:真実のボーイズ  必須要素: 奴の小指
制限時間:1時間  文字数:395字
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