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話をどう聴いて「しまっている」のかを意識すること

2018年11月、勤労感謝の日からはじまった3連休の時期。
東京で活動されている心理カウンセラー・鈴木雅幸さんがこの時期に北陸を訪れて、3日間で5本ものセミナーに登壇(鈴木さん曰く「怒涛の北陸セミナーツアー」)。

そのうちの1本が、金沢のカウンセリングルームでありカウンセラー養成機関でもある「カウンセラーカレッジ石川(CCI)」で、

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…と銘打たれて開催されました。

鈴木雅幸さんは、心理カウンセリングおよび講師業の分野で一線でご活躍されている、数多くの実績のある心理カウンセラー。開始時刻が来る前から、多くの受講者から発された学ぶ意欲の熱気ムンムン、会場内の温度もぐんぐん上昇!とても熱く濃密な3時間のセミナーでした。

ここでは、このセミナーを受講して感じたことを残していきます。

話を聴くのに大切なことは呆気ないほどにシンプル

前半は、カウンセリングの基本についての座学。
カウンセリングに必要なこと、相手の話を聴くのに必要なこととして挙げられたのは、とてもシンプルなことがさらっと3つだけ。「これに尽きるのです」と鈴木さん。その3つは一見「なんやそんなことかいな」と、さらっと流してしまいそうなほどに簡単なこと。

それこそ、誰でも当たり前のように思えるほど…

んが!しかし!

その3つをただ「知ること」はすぐにできても、正確さ・深さ・素早さを伴った上でできるようになることは決して簡単なことではない。

さらに、その3つのことを、相手の話を聴いているときの自分自身に問う問いかけ。それががまた3つ。

自分自身に問うこの3つの「問いかけ」も、そりゃあ最も基本となる大切なことだわなあと、知った時点でだけならとりあえず普通に感じはする。じゃあ、これからそれを自分に問うようにしていこうではないかという意識にもなってはくる。

カウンセリングの現場を音声記録で垣間知る

そう思って迎えた中盤は、鈴木さんが実際にカウンセリングを行ったときの音声記録の一部を聴かせてもらうという…ここまでやっていただいていいのかと思えるほどに非常に貴重な機会。
前提として、そのカウンセリングの背景を鈴木さんの事前説明によって把握してから、約15分の間、ICレコーダーに接続された外部スピーカーから出る音声にひたすら集中して聴き取り、感じ取りました。

ごく一部だけとは言え、現場のカウンセリングの空気に触れて、発話の抑揚、テンポ、カウンセラーの話す量や間合いなど、このような場になることもあり得る、と感じられたことが非常に有意義でした。ゆくゆくは自分もこのようにじっくりと話し手に向き合えるように…。

相手の問いかけにどう答える?を考えて検証する

後半は、それまでの流れを踏まえてケース演習へ。
鈴木さんが用意した演習問題と、場面の背景や前提をもとに「自分だったらその問いかけにどう答えるか?」を、まずは各々の受講者が個人で考えてみる。答えかける第一声をどうするか、と、それを返す根拠を自分に問うて出すのです。次に、個人での検討から、数人での検討へ。数人のグループの中で個人の答えを共有して、よりベターな答えかけを見い出していきます。

この流れを実際にやってみると、演習問題の紙面に書かれている話し手の言葉自体を正確に読み取ることで、一番言いたいことを捉えよう、掴み取ろうとしてしまう自分がいることに気がつくのでした。

カウンセリングで、いや、そんな場に限らず、聴き手として本当に大切なことはそんなことではない。そもそも、発された言葉の記憶を一言一句漏らさず正確に再現するなんてことは現代人の能力として特殊なレベルのものであって、誰でもできることではない。少なくとも自分は、人の話を聴いているときに発された言葉を一言一句漏らさず記憶して聴くなんてことはしていないはずだし、自分が普通にできることだとも思っていない。にも関わらず、つい…

言葉自体を正確に読み取ろうとしてしまう
わかっているはずなのに、なんでやってしまう?

そんな葛藤を感じつつも、演習問題に対してこのときになんとか自力でひねり出した答えは、あながち大きく外れてはなかったようでした。

あ。

自分はどう聴いて「しまっている」のか

そこから意識しはじめていくしかない。
鈴木さんは力を込めてそう言っていたっけ…

所感・まとめ

後半の演習では、以下のようなことを念頭に置いて相手の話を聴くことが現時点の自分には必要で、まだまだ足りない姿勢、できていないと感じました。また、たった少しだけの事例、実例を検討するだけでも、相手の話を聴くということの奥の深さをまざまざと思い知らされました。

言葉の端々はもとより、言葉として現れない要素(対面なら表情や抑揚、しぐさなど)までも決して見逃さずに、相手の気持ちを汲み取ること。あるいは映像化できるほどに想像すること。
汲み取った気持ちに応える言葉を多く持つこと。それは決して難しくて説明的な表現ではなく、わかりやすく、シンプルな表現であること。
聴き手となっている自分が相手へ答える言葉や、言葉以外で発されるメッセージは、話し手が発した言葉や表情などから現れた「気持ち」「感情」に直結する根拠があること。

心理の知識を積み上げていくことも大切だけども、多くの事例をできるだけ細かく検証すること、多くの聴く経験を積んでいくことこそがもっともっと大切であって、それこそが実際に自分の力になっていく。

先人の皆さまが日頃口を揃えておっしゃっている、そういうことの一端を実感することができた、今の自分に必要不可欠だったセミナーだったと、時間が経ってからもジワジワと感じられるのです。

シンプルにして濃密。奥の深い内容。
自分はまだまだ全然できてないと思い知らされる。

だけども、おもしろい。
結局は「おもしろさ」を感じられる。

終始あたたかく落ち着いた表情と話しぶりで、厳しく険しい道のエッセンスをご教授いただき、受講して心底よかったと感じるひとときでした。

おわりに

鈴木さんのセミナーへ初めて参加したのは、前年9月のこと。鈴木さんが初めて金沢へ来られて雑談に関するセミナーを受講をしたことがはじめての出会いでした。このときのセミナーで話されていたことが自分にはとても新鮮で、かつ、とてもしっくりときた感じがした…そのときの感銘は今でも鮮明に憶えていて、それ以来ずっと自分の中に活かされているように思っています。

このセミナーに参加したときは、ちょうど今の取り組みに正式に飛び込んだタイミング。今回はその取り組みに自信を失いかけたタイミング。自分にとってはどちらも、単にスキルを知るだけではない、勇気と励みまでももらうことのできた、格別の思い入れのある機会となったのでした。

交通の発達が続いて、通信手段が進化し続けて、人の行き来や交流の手段に少しずつ利便性が上がっていっても、それでもなお、学びの機会が圧倒的に多い東京などの大都市へそう簡単に足を運べない現実はある。

地方に根ざして生活しながら学ぶ自分たちにはまたとない貴重な機会。
また、このような学びに触れる機会があったらいいなあと願うのでした。

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